(未公開)SYMPTOMS

作曲:ジョン・スコット
Composed by JOHN SCOTT

(米Dragon's Domain Records / DDR763)

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1974年製作のイギリス=ベルギー=スペイン合作映画。監督は「(未公開)ドーターズ・オブ・ドラキュラ/吸血淫乱姉妹」(1975)「(TV)ゴヤの生涯」(1985)「悪霊伝説」(1986)「(未公開)アックスマン/悪夢の生贄」(1987)等のスペイン人ホセ・ラモン・ララス(1929〜2013)。出演はアンジェラ・プレザンス、ピーター・ヴォーン、ローナ・ハイルブロン、ナンシー・ネヴィンソン、ロナルド・オニール、マリー=ポール・メリュー、マイク・グレイディ、レイモンド・ハントリー。トーマス・オーウェンの原作を基にホセ・ラモン・ララスとスタンリー・ミラーが脚本を執筆。撮影はトレヴァー・レン。作家のアン・ウエスト(ハイルブロン)は、友人ヘレン・ラムジー(プレザンス)の住むイギリスの広大な邸宅に招待される。2人の共通の友人であるコーラ(メリュー)の失踪や、アンがヘレンの元カレのジョン(オニール)に惹かれていることを知ったヘレンの嫉妬により、アンの滞在は徐々に不穏なものになっていく。やがて屋根裏部屋から何者かの声が聞こえてくるが……。1974年度カンヌ国際映画祭公式コンペティション参加作品のホラー映画で、その後永年にわたってプリントが紛失していたが、2014になってなぜか突然発見されてブルーレイ化された。「大脱走」(1963)「ミクロの決死圏」(1966)「007は二度死ぬ」(1967)「(TV)刑事コロンボ/別れのワイン」(1973)「テレフォン」(1977)「ハロウィン」(1978)「パワープレイ」(1978)「ニューヨーク1997」(1981)「パラダイム」(1987)等のホラーやサスペンスの名優ドナルド・プレザンス(1919〜1995)の娘で、父親そっくりの顔をしたアンジェラ・プレザンス(1941〜)が、何かに取り憑かれたミステリアスはヒロインを好演している。監督のララスは、コミックブック作家と写真家としての収入から映画の製作費を自ら捻出したという。

音楽はイギリスの作曲家ジョン・スコット(1930〜)。「アントニーとクレオパトラ」(1972)「ファイナル・カウントダウン」(1980)「グレイストーク -類人猿の王者- ターザンの伝説」(1984)「(未公開)燃える男」(1987)といった大編成オーケストラによるパワフルでドラマティックなスコアで知られる作曲家だが、この映画は予算がほとんどなく、フルート、クラリネット、ピアノ、弦楽五重奏、ハープにソプラノを加えた10人のミュージシャンにより演奏されている。ミニマルな中でも最も効果的なサウンドを醸成しようと、ストリングスの弓を上下逆さまにして弾いたり、ソプラノに深いため息をつかせたりして、不気味なサスペンスを見事に表現している。このスコアの初リリースで、500枚限定プレス。

「Opening Titles / Remembering Cora / Voices in the Attic」は、ストリングスによる不吉なタッチのサスペンス音楽から、ピアノ、フルート、クラリネットによるリリカルな主題、更に不吉なサスペンス調へと展開。「Helen and Anne Walk / The Rowboat」は、フルートとストリングスによる繊細で不安なタッチから、サスペンス音楽へ。「Many Things Happen in These Woods / Mirror / Stormy Night / The Voices Return」は、ピアノとストリングスによるダークなサスペンス音楽。「Helen Watches Brady / Anne Meets Brady / Bicycle Ride」は、ストリングスによる不吉なサスペンス調からフルートとハープによるジェントルな主題、サスペンス音楽、リリカルなピアノの主題と展開。「Anne Follows the Voices / Anne Goes into the Attic」は、ストリングスとピアノによるドラマティックなサスペンス音楽。「Searching the Attic / Anne Is Murdered」は、幻想的なソプラノをフィーチャーしたダークなサスペンス音楽。「Footsteps in the Attic / Helen Discovers Anne's Body / More Noises from the Attic / Helen Searches the Woods」は、ソプラノをフィーチャーしたややアブストラクトなタッチのサスペンス音楽。「Helen All Alone / John Looks for Anne / Helen Kills John」「Brady Cuts the Hair off the Cadaver」も、不吉なタッチのサスペンス音楽で、後者の最後はメランコリックでリリカルなピアノの主題。「Helen Kills Brady / Cora's Return / End Card」は、ソプラノをフィーチャーしたダイナミックなサスペンス音楽から、フルート、クラリネット、ハープによるメインの主題で締めくくる。小編成の構成でありながら、重層的な音の作り方により非常にリッチな印象のある効果的な心理サスペンススコア。
(2023年2月)

John Scott

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