インビジブル HOLLOW MAN
作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH
(米Intrada / Intrada Special
Collection Volume 483)
2000年製作のアメリカ=ドイツ合作映画。監督は「ロボコップ」(1987)「トータル・リコール」(1990)「氷の微笑」(1992)「ショーガール」(1995)「スターシップ・トゥルーパーズ」(1997)「ブラックブック」(2006)「エル
ELLE」(2016)「ベネデッタ」(2021)等のポール・ヴァーホーヴェン(1938〜)。出演はエリザベス・シュー、ケヴィン・ベーコン、ジョシュ・ブローリン、キム・ディケンズ、グレッグ・グランバーグ、ジョーイ・スロトニック、メアリー・ランドル、ウィリアム・ディヴェイン、ローナ・ミトラ、パブロ・エスピノーサ、マーゴット・ローズ、ジミー・F・スカッグス、ジェフリー・ジョージ・スケイパロッタ、サラ・ボウルズ、ケリ・スコット他。ゲイリー・スコット・トンプソンとアンドリュー・W・マーロウの原案を基にアンドリュー・W・マーロウが脚本を執筆。撮影はヨスト・ヴァカーノ。
セバスチャン・ケイン博士(ベーコン)率いる国家機密プロジェクトの研究チームは、動物の透明化と復元の実験に成功する。ケインは自ら実験の被験者となり、人体の透明化も成し遂げるが、技術が不完全だったため、彼は元の姿に戻れなくなってしまう。一生自分の姿を鏡で見ることができなくなった彼の絶望は、彼の元ガールフレンドのリンダ・マッケイ博士(シュー)や、リンダと密かに愛し合っているマシュー・ケンジントン博士(ブローリン)たち研究チームの同僚に対する憎悪へと発展し、やがて彼は精神を病んだ殺人鬼へと変貌していく……。過激な題材をケレン味たっぷりに撮るポール・ヴァーホーヴェン監督としては凡庸な出来のSFサスペンス/ホラー映画。これは彼が提案した企画がことごとくボツになっていた時期に、業界でのキャリアを維持するために引き受けた作品とのことで、彼自身が後のインタビューで「作るべきではなかったと思った初めての映画」と認めている。「ロボコップ」や「スターシップ・トゥルーパーズ」は他の監督には撮れない映画だったと思うが、これはハリウッドの20人ぐらいの監督が撮れたであろう映画、であると。ただ、約9500万ドルの製作費に対して、約1億9021万ドルの全世界興行収入を稼ぎだしており、ビジネスとしては成功したと言える。
音楽は「トータル・リコール」(1990)「氷の微笑」(1992)でもポール・ヴァーホーヴェン監督と組んでいるジェリー・ゴールドスミス(1930〜2004)。このスコアは公開当時の2000年にVarese
Sarabandeレーベルより全13曲/約51分収録のサントラCD(Varese Sarabande 302 066 171
2)が出ていたが、Intradaレーベルが2022年10月にリリースしたこのCDは2枚組となっており、全45曲/約139分収録のコンプリート・スコアで、限定プレス。
CD1枚目の冒頭「The Hollow Man」は、シンセサイザーにピアノ、ストリングスを加えたミステリアスでドラマティックなタッチのメインの主題。「Lady
in the Window」「I Liked It」「Coffee Break」「I Liked It #2」「Not Yet」「Broken Window」は、抑制されたタッチのサスペンス音楽。「I'm
a Genius」は、ジェントルな主題。「Chasing Isabelle」「I Can't See Him」は、不吉でダイナミックなサスペンス音楽。「Isabelle
Comes Back」「This Is Science」は、抑制されたタッチから後半から重厚でダイナミックなサスペンスアクション音楽へ。「Linda
& Sebastian」は、ピアノとストリングスによるジェントルでリリカルな主題から、後半ややミステリアスなタッチへ。「The
Buttons (Revised)」「Why Not?」は、ミステリアスなタッチの曲。「Not Right」は、ピアノをフィーチャーしたミステリアスなタッチから、メインの主題、後半はゴールドスミスらしい重厚でダイナミックなサスペンスアクション音楽へ展開。「What
Went Wrong?」「In the Mirror」は、メインの主題のバリエーション。「He's Here」「False
Image」「Hi Boss」「Find Him (Revised)」「Bloody Floor」「Linda Takes Action」は、ゴールドスミスの個性が出た重厚でダイナミックなサスペンスアクション音楽が連続。「Dead
Dog」「Late Meeting」「No Code」は、不吉なタッチのサスペンス音楽。CD2枚目も、「Wet Attack
(Revised)」「The Elevator」と、ゴールドスミス節のダイナミックなサスペンスアクション音楽が続き、「The
Big Climb (Revised)」は、アクション音楽から後半大らかに盛り上がる。ラストの「The Hollow Man
(End Credits)」は、メインの主題のリプライズによるエンド・クレジット。この後にエクストラとして、代替テイク等14曲を収録。
センシュアルなタッチを加えた、ゴールドスミスらしいダイナミックなサスペンスアクション・スコア。オーケストレーションはアレクサンダー・カレッジ。
(2023年3月)
Jerry Goldsmith
Soundtrack Reviewに戻る
Copyright (C) 2023 Hitoshi Sakagami. All Rights Reserved.