ティル TILL

作曲・指揮:アベル・コルジェニオウスキ
Composed and Conducted by ABEL KORZENIOWSKI

演奏:NYCスタジオ管弦楽団
Performed by NYC Studio Orchestra

(米Decca/Mercury Classics / B0037162-02)

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2022年製作のアメリカ映画(日本公開は2023年12月)。監督は「クレメンシー」(2019)等のチノニー・チュクー(1985〜)。出演はダニエル・デッドワイラー、ジャリン・ホール、ジェイミー・レネル、ウーピー・ゴールドバーグ、ショーン・パトリック・トーマス、ジョン・ダグラス・トンプソン、ジェム・マーク・コリンズ、ダイアロ・トンプソン、ティリク・ジョンソン、イノック・キング、ヘイリー・ベネット、キャロル・J・マッケニス、エリザベス・ヨーマン、ショーン・マイケル・ウェバー、エリック・ホイッテン他。脚本はマイケル・ライリー、キース・ボーシャンプとチノニー・チェクー。撮影はボビー・ブコウスキー。製作に「007」シリーズのプロデューサーであるバーバラ・ブロッコリが参加している。

1955年に白人男性たちの凄惨なリンチにより殺害された14歳の黒人少年エメット・ティル(1941〜1955)の事件と2004年の再審に至る過程を、エメットの母マミー・ティル・モブリー(デッドワイラー)の視点から描いた実話に基づくドラマ。イリノイ州シカゴの実家からミシシッピ州デルタ地区の親類を訪ねていたエメット・ティル(ホール)は、食品雑貨店の店主ロイ・ブライアント(ウェバー)の妻キャロライン(ベネット)に口笛を吹いたと、ロイとその義兄J・W・ミラム(ホイッテン)から因縁をつけられた。後日2人はティルの大叔父の家から彼を無理やり連れ出し、納屋に連れ込んで暴行を加えた上、眼球をえぐり出し、拳銃で頭を撃ち抜き、回転式綿搾り機を有刺鉄線で首に縛りつけて重りにし、死体をタラハチー川に投げ捨てた。原形を留めぬほど損壊したティルの死体は、3日後に川で発見された。州当局は白人の殺人者を擁護する立場を取り、全員が白人の陪審員による判決で、被告ブライアントとミラムはティルの誘拐と殺人について無罪となった。2004年になって、アメリカ司法省はミシシッピ州の裁判における無罪判決に多くの問題点があったと認め、正式に再審の決定を下した……。製作費は約3300万ドル。全世界興行収入は約1109万ドル。「(TV)ミステリー・ゾーン」(1959〜1965)「(TV)夜空の大空港」(1966)「猿の惑星」(1968)等の脚本を手がけたロッド・サーリング(1924〜1975)が、この実話をテレビ番組のエピソードとして映像化しようとしたことがあるが、白人至上主義者からの抗議がテレビ局に殺到し、実現しなかった。

音楽は「シングルマン」(2009)「ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋」(2011)「(TV)ナイトメア 〜血塗られた秘密〜」(2014〜2016)「ノクターナル・アニマルズ」(2016)「クーリエ:最高機密の運び屋」(2020)等のアベル・コルジェニオウスキ(1972〜)。「Through the Tunnel」は、ピアノとストリングスによる静かにジェントルでドラマティックな曲。「Chicago」は、明るく躍動的な曲。「Watch」「Money, Mississippi」は、ジェントルかつドラマティックな曲。「Wolf Whistle」は、躍動的でダイナミックなストリングスによるドラマティックな曲。「They've Come for You!」「Witness」「I Know What the Verdict Is」は、ダークで重厚なタッチの曲。「A Perfect Baby」は、ピアノとチェロをフィーチャーした躍動的でドラマティックな曲。「The Tallahatchie River」「Emmett's Room」は、静かにドラマティックな曲。「Why Is This Happening?」「We Do the Best We Can」は、静かにメランコリックな曲。「Threnody」は、ティンパニの連打によるイントロから重厚でドラマティックなタッチへ。「This Is My Boy」は、チェロ・ソロとピアノをフィーチャーした重厚でドラマティックな主題から後半躍動的なタッチへ。「The Story Must Continue」「I'm Ready to Go」は、躍動的でドラマティックな曲。極めて上質で真摯なタッチのオーケストラル・スコア。オーケストレーションはアベル・コルジェニオウスキ。ヴァイオリン・ソロはリサ・ユンスー・キム、ヴィオラ・ソロはデヴィン・ムーア、チェロ・ソロはパトリック・ジー、ピアノ・ソロはアンナ・ポロンスキー。
(2023年4月)

Abel Korzeniowski

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