クイン・メリー/愛と悲しみの生涯 MARY, QUEEN OF SCOTS

作曲・指揮:ジョン・バリー
Composed and Conducted by JOHN BARRY

(スペインQuartet Records / QR504)

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1971年製作のイギリス=アメリカ合作映画(日本公開は1972年6月)。監督は「1000日のアン」(1969)「失われた地平線」(1973)「ダブ」(1974)「真夜中の向う側」(1977)「(TV)ナイト・オブ・ザ・フォックス」(1990)「(TV)鏡の中の他人」(1993)等のチャールズ・ジャロット(1927〜2011)。出演はヴァネッサ・レッドグレーヴ、グレンダ・ジャクソン、パトリック・マクグーハン、ティモシー・ダルトン、ナイジェル・ダヴェンポート、トレヴァー・ハワード、ダニエル・マッセイ、イアン・ホルム、アンドリュー・キアー、トム・フレミング、キャサリン・ケイス、ベス・ハリス、フランシス・ホワイト、ブルース・パーチェイス、ブライアン・コバーン他。脚本はジョン・ヘイル。撮影はクリストファー・チャリス。

16世紀ヨーロッパを舞台に、スコットランドの女王メアリー1世(1542〜1587)の悲劇に満ちた生涯を描く歴史劇ドラマ。1542年12月にスコットランド国王ジェームス5世の娘として生まれたメアリー(レッドグレーヴ)は、父の急死後にフランスに送られ、アンリ2世とカトリーヌ・ド・メディシスの宮廷で養育される。彼女は16歳でフランス国王フランソワ2世と結婚し妃となったが、わずか2年で夫は急死してしまう。メアリーに敵意を抱く義母カトリーヌ(ケイス)は、フランソワの死の責を彼女に押し付け、宮廷から追い出そうとしていた。そこにスコットランドから使者が駆け付け、異母兄のジェームズ・ステュアート(マクグーハン)が、メアリーの実母が亡くなったので彼女にスコットランドに戻って王位につくようにと言ってきた。13年ぶりに戻った祖国は、イングランドとの争いや宗教闘争のために荒廃しており、王位継承を巡ってメアリーと対立していたイングランドのエリザベス女王(ジャクソン)の息のかかった者が、メアリーを監視していた……。1971年度アカデミー賞の主演女優賞(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)、作曲賞、美術監督・装置賞、衣装デザイン賞、音響賞にノミネートされている。同じ題材が「ふたりの女王 メアリーとエリザベス(MARY QUEEN OF SCOTS)」(2018/監督:ジョーシー・ルーク、出演:シアーシャ・ローナン、マーゴット・ロビー、ガイ・ピアース)として映画化されている。

音楽はジョン・バリー(1933〜2011)。このスコアは公開当時の1971年に米Deccaレーベルより全14曲/約28分収録のサントラLP(Decca DL 79186)が出ており、2008年に米Intradaレーベルが同内容で3000枚限定プレスのCD(Intrada Special Collection Volume 59)を出しているが、Quartetレーベルが2022年12月にリリースしたこのCDは全53曲/約78分半収録のエクスパンデッド盤で、前半にリマスターされたDecca盤と同内容の14曲、後半に初収録となるフル・スコアを収録。3000枚限定プレス。

15曲目以降が映画で使われたスコアとなっているが、その冒頭「Vivre et Mourir」は、メアリーが1567年に愛する夫ボスウェル(ダヴェンポート)に捧げるために書いたとされる詩に、バリーがジェントルな主題を付けたもので、レッドグレーヴがフランス語で歌っている。「Queen of England by Right… / Message for the Queen」「Letter from Elizabeth」「Arrival on Beach」は、荘厳なファンファーレ調のイングランド女王の主題。「Bring Him to Trial / Mary's Prayer」「Mary and Darnley Ride on Beach」「Darnley Wakes and Finds Mary's Letter / Bury Your Dead」「The Lords Surround Hermitage / Abdicate」「Arrival at Fotheringay」は、静かにドラマティックな曲。「François' Death」は、コーラスをフィーチャーしたドラマティックな曲。「Journey to Scotland」は、バリーらしいブラスによる荘厳なファンファーレ調の主題とフルートによるジェントルな主題の組み合わせによる曲。「Dudley's Return」は、静かなタッチからヒロイックな主題へ。「“Scottish Queen!” – Arrival at Holyrood」は、フルートによるジェントルな主題からブラスによるヒロイックな主題へ。「She Must Marry Darnley and I Have Won!」「Pray for Me, Davie!」「Darnley Is Abducted」「Signing of Murder Bond」は、抑制されたサスペンス音楽。「Jealous」「Darnley Is Drugged / Mary's Theme」「I Thought You Were Dead」「Mary at Chartley」「Lord Bothwell Died Insane」は、情感豊かでリリカルな“バリー節”のメアリーの主題で、CDの前半に収録されたDecca盤のプログラムの冒頭「Mary's Theme」で完全な形で演奏される曲だが、劇中では中盤になって初めて登場する。「Hawking Sequence」「But Not Through My Realm (Film Version)」「Journey to England」は、ヒロイックなタッチの主題。「Murder of Riccio」「Death at Kirk O'Fields」は、ダークでダイナミックなサスペンス音楽。「Black Night」は、ギターをフィーチャーした静かにドラマティックでメランコリックな曲。「Escape with Bothwell」は、ダークなサスペンス調からヒロイックな主題へ。「Birth of the Prince」は、フルートをフィーチャーした静かにジェントルな曲。「Reconciliation of Stuart, Darnley and Bothwell」は、荘厳なファンファーレによる曲。「Irrefutable Proof / Now We Have Her! / And Now My Lord?」は、ダイナミックでドラマティックな曲。「Dudley Enters」「The Execution」は、メランコリックなタッチの曲。「Vivre et Mourir (Reprise)」は、冒頭のレッドグレーヴによるヴォーカル曲のリプライズ。最後にソース曲としてバグパイプの演奏による「Lament for the Children」「March to the Castle (Film Version)」、宮廷音楽風の「Antic Hay – Quick Dance」、ジェントルなフランス語のヴォーカルによる「Mary's Song」を収録。上述の通りジョン・バリーはこのスコアでアカデミー賞の作曲賞にノミネートされている。
(2023年4月)

John Barry

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