(未公開/TV)WALLENBERG: A HERO'S STORY

作曲・指揮:アーネスト・ゴールド
Composed and Conducted by ERNEST GOLD

(米Dragon's Domain Records / DDR768)

 ★TOWER.JPで購入

   ★AMAZON.MUSICで購入 


1985年製作のアメリカ=ユーゴスラヴィア合作テレビ映画(米NBCテレビで放送)。監督は「リップスティック」(1976)「ワン・オン・ワン」(1977)「シャレード'79」(1978)「スペースハンター」(1983)等のラモント・ジョンソン(1922〜2010)。出演はリチャード・チェンバレン、アリス・クリーグ、ケネス・コリー、メラニー・メイロン、ステュアート・ウィルソン、ビビ・アンデショーン、デヴィッド・ロッブ、マーク・ライランス、レイフ・アーリス、ケーヴェ・イェルム、ジミー・ネイル、オラフ・プーリー、ジョージア・スロウ、ファーディ・メイン、レナ・オリン他。サーストン・B・クラークとフレデリック・E・ワーベルの原作を基にジェラルド・グリーンが脚本を執筆。撮影はチャールズ・コレル。製作は「(TV)刑事コロンボ/殺人処方箋」(1967)「(TV)刑事コロンボ/死者の身代金」(1971)等の監督を手がけているリチャード・アーヴィング(1917〜1990)。第二次世界大戦末期のハンガリーで、10万人にもおよぶユダヤ人をナチス・ドイツの迫害から救出したスウェーデン人の外交官ラウル・グスタフ・ワレンバーグ(1912〜 1947?)の実話を描いたドラマ。

1944年7月にハンガリーのブダペストに赴いたワレンバーグ(チェンバレン)は、外交官特権によりスウェーデン名義の保護証書を発行してユダヤ人に付与し、スウェーデンの保護下に置くことで、アドルフ・アイヒマン(コリー)率いるナチスの手から彼らを救い出した。ドイツにとってワレンバーグは邪魔者であり、彼の身にはたびたび危険が迫った。1945年1月、ソ連軍がブダペストに侵攻し、ドイツ軍を追い払った。1月17日、ついに肩の荷がおりたと感じたワレンバーグは、今後のユダヤ人の保護のあり方についてソ連軍指導部と会見すべく司令部へ向かった。そして、そのまま消息を絶った。ワレンバーグに救われたユダヤ人たちを中心に国際ワレンバーグ協会が設置され捜索が続けられたが、現在に至るまで発見されていない。1986年に始まったゴルバチョフ政権のグラスノスチによって多くの機密資料が解禁され、その中にワレンバーグが1947年7月に収容所で病死したとする資料が発見された。1989年、ソ連政府はワレンバーグの遺族をモスクワに招待し、彼の遺品を遺族に返還した。1985年度エミー賞の監督賞を含む4部門を受賞し、その他5部門にノミネートされている。ワレンバーグを描いた作品としては、スウェーデン=ハンガリー合作映画「(未公開)GOD AFTON, HERR WALLENBERG(GOOD EVENING, MR. WALLENBERG)」(1990/監督・脚本:シェル・グレーデ、出演:ステラン・スカルスガルド、カタリナ・タールバッハ)等が製作されている。

音楽は「渚にて」(1959)「栄光への脱出」(1960)「ニュールンベルグ裁判」(1961)「おかしなおかしなおかしな世界」(1963)「愚か者の船」(1965)「戦争のはらわた」(1977)「さよならミス・ワイコフ」(1979)等のオーストリア出身の作曲家アーネスト・ゴールド(1921〜1999)が作曲しており、これは彼がキャリア後期に手がけたスコアの1つ。初アルバム化で、500枚限定プレス。

「Opening Prologue / Main Title / Watching Soldiers / Nikki's New Identity」は、フルートによるメランコリックなタッチのイントロからオーケストラによる荘厳でドラマティックなメインの主題へと展開し、その後、不吉なサスペンス音楽へ。「Raoul Says Goodbye to Mother / Raoul Watches the Death Train Depart / Nikki and Hannah / Hungarians Turn the Train Around」は、メインの主題からコーラスを織り込んだ不気味なサスペンス音楽、メランコリックな主題へ。「Raoul Opens the Swedish Embassy / Raoul Mocks Eichmann / Raoul and Lisl Meet for Coffee」は、メインの主題から、ドイツの国歌を織り込んだ不吉なサスペンス音楽へ。「Refuge at the Embassy / Infiltrating the Labor Camp / Hannah Finds Her Father / Raoul at Gunpoint」は、メインの主題を含む、コーラス入りのドラマティックなサスペンス音楽。「Lisl Is Pregnant / I Want Him Dead / Failed Assassination Attempt / Germans Empty Refuge House / Death March Begins / Nikki Watches Hannah / Sonja and Son」は、ジェントルなタッチから不吉なサスペンス音楽へ。「Raoul and Lisl Kiss」は、チェロ・ソロをフィーチャーしたメインの主題のバリエーション。「[The March Part A] Nikki Grabs Hannah / Father Executed / [The March Part B] Raoul Watches from Inside Car」は、メランコリックでドラマティックなタッチからコーラスを織り込んだ不吉なサスペンス音楽へ。「(The March Part C] Arrival at the Train Station / Loading the Trucks / Sonja's Son Dies」は、ダークでドラマティックな曲。「Raoul and Lisl Toast to Friendship (My Forgotten Spy) / Freedom Restored / Raoul Is Arrested / End Titles」は、メインの主題から、中盤ドラマティックに盛り上がり、不吉なサスペンス音楽を経て、メインの主題によるエンドタイトルで締めくくる。これ以降は、メインの主題による短いバンパー集「Bumper Suite」、オーストリア出身のゴールドが得意とする優雅なダンス・ミュージックのソース曲「Restaurant Source」「Restaurant Band Source」「Classical Radio Source / Coffee Shop Source」「Cocktail Party Source B (Fools Rush In Where Angels Fear to Tread)」「Cocktail Party Source C」、ヴァイオリン・ソロによるジェントルな主題からドイツ国歌へ展開するソース曲「Campfire Dance Source / Dinner Party Source」、フルート・ソロによるジェントルなタッチのソース曲「Hannah's Flute Source / Jewish Music Society Rehearsal」、メインの主題による「Main Title / End Title Suite」を収録。39人編成のオーケストラと16人編成のコーラスにシンセサイザーを加えた演奏。アーネスト・ゴールドの個性がよく表れた真摯でドラマティックなオーケストラル・スコア。1921年にオーストリアのウィーンで生まれたゴールドは、1938年のナチスによるオーストリア侵攻を体験しており、彼にとっては作曲が容易なスコアだったという。
(2023年5月)

Ernest Gold

Soundtrack Reviewに戻る


Copyright (C) 2023  Hitoshi Sakagami.  All Rights Reserved.