DOGMAN ドッグマン DOGMAN
作曲:エリック・セラ
Composed by ERIC SERRA
指揮:ピーター・イレンヴィ
Conducted by PETER ILLENVI
演奏:ブダペスト・スコアリング管弦楽団
Performed by Budapest Scoring Orchestra
(仏Because Music / BEC5613161)
2023年製作のフランス映画(日本公開は2024年3月)。監督・脚本は「The Lady
アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」(2011)「マラヴィータ」(2013)「LUCY/ルーシー」(2014)「ヴァレリアン
千の惑星の救世主」(2017)「ANNA/アナ」(2019)等のリュック・ベッソン(1959〜)。出演はケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ジョージョー・T・ギッブス、クリストファー・デナム、クレメンス・シック、ジョン・チャールズ・アギラー、グレース・パルマ、アイリス・ブライ、マリサ・ベレンソン、リンカーン・パウェル、アレクサンダー・セッティネリ、マイケル・ガーザ、ビアンカ・メルガー、C・C・デネイラ、ジョー・シェリダン、エメリック・バーナード=ジョーンズ他。撮影はコリン・ワンダースマン。製作はヴィルジニー・ベッソン=シラとスティーヴ・ラビノー。
幼い頃に暴力的な父により犬小屋に監禁され、犬との特別な絆を築いた少年のその後をサスペンスフルに描くドラマ。ニュージャージー州で、荷台に十数匹の犬を載せたトラックを運転していたダグ・マンロー(ジョーンズ)は、女装していた服が血にまみれていたことから逮捕され、警察で精神科医のイヴリン・デッカー(ギッブス)に尋問される。そして、ダグの半生がフラッシュバックで語られる――闘犬を育てていた父親のマイク・マンロー(シック)によって犬小屋に閉じ込められ、自らの脚で歩けなくなるまで虐待された少年時代。少年院で演劇の教師サルマ・ベイリー(パルマ)に恋し、彼女からシェイクスピアの作品群を紹介されたこと。多数の犬たちを操って宝石強盗に手を染めたこと。キャバレーで毎週ドラァグクイーンを演じていること……。リュック・ベッソンは、5歳の少年が両親によって檻に閉じ込められていたとの新聞記事を読み、その少年がいかにそのトラウマを克服したのかとの考えから、本作の着想を得たという。製作費は約2100万ドル。2023年度第80回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門に正式出品(リュックの監督作品が3大国際映画祭のコンペティションに入るのはこれが初めて)され、ファンハート3(Fanheart3)賞のグラフェッタ・ドーロ(Graffetta
d'Oro for Best Film)賞(ファン・カルチャーに最もインパクトを与えたカルト・ムービーに授与される)を受賞。
音楽は「アンジェラ」「マラヴィータ」「ヴァレリアン
千の惑星の救世主」以外の全てのリュック・ベッソン監督作品を手がけているエリック・セラ(1959〜)で、これは彼らの16本目のコラボレーション作品。「Arresting
Marylin」は、ダークで不吉なタッチの曲。「Not sick just tired」は、陰鬱なタッチのチェロ・ソロをフィーチャーしたダークでドラマティックなメインの主題で、このチェロによるダークな主題は「Starving
the dogs」「New peaks of hysteria」「Dogs never lie」「Do you like chili」「Angels of
the apocalypse」「They know what to do」「Something in common」と何度も登場する。「Family
lunch」「Gangbanger traps」「We had a deal」「Walking to my death」「Kids we have
company」も、ダークで不吉なタッチの曲。「Meet your new family」「Evelyn on the
crime scene」は、陰鬱でドラマティックな曲。「Mother leaving」「Drained of
emotions」は、メランコリックなタッチの曲。「In the name of God」「The bulging
scrapbook」は、静かにドラマティックな曲。「Juan request for hearing」は、不気味でアブストラクトなサスペンス音楽。「El
Verdugo」は、ダークなタッチから後半チェロをフィーチャーしたドラマティックな主題へ。「Salma and the
mirror」「Way up to Broadway」は、ギターとストリングスによるリリカルでジェントルなタッチの曲。「Romeo
and Juliet and the dogs」は、不吉なサスペンス調からチェロ、ギター、ストリングによるジェントルな主題へ。「Eagle-eyed
Ackerman」「Shortcut to derelict school」は、リズミックなサスペンス音楽。「Non, je
ne regrette rien」は、フランスのシャンソン歌手エディット・ピアフ(1915〜1963)のヴォーカルによる『水に流して』で、「No
Regrets」はその英語版(クライマックスのシーンで流れる)。「Autumn star」は、サティーンのヴォーカルによる挿入歌。
全27曲のスコア部分はほぼ切れ目のない長い1曲になっている。オーケストレーションはエリック・セラとジェフリー・アレクサンダー。第一ヴァイオリンはチョンゴール・ヴィア、チェロ・ソロはマーチャーシュ・オルヴェティ、コントラバス・ソロはティボール・ツァカイ。
(2024年2月)
Eric Serra
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