(TV)アルプスの少女ハイジ HEIDI
ジェーン・エア JANE EYRE
作曲・指揮:ジョン・ウィリアムス
Composed and Conducted by JOHN WILLIAMS
(スペインQuartet Records / QR539)
「マーティ」(1955)「楡の木蔭の欲望」(1958)「ニューヨーク泥棒結社」(1967)「さすらいの旅路」(1969)「(未公開)スコットランドは死なず/戦場をかけぬけた男たち」(1971)「気球の8人」(1981)「(TV)ジョージ・C・スコット/パットン将軍最後の日々」(1985)等のデルバート・マン(1920〜2007)が監督した2作品にジョン・ウィリアムス(1932〜)が作曲したスコアをカップリングにしたCD。2枚組となっており、1枚目に「(TV)アルプスの少女ハイジ」、2枚目に「ジェーン・エア」のスコアを収録。2500枚限定プレス。ジョン・ウィリアムスはこれら両方のスコアでエミー賞を受賞している。
「(TV)アルプスの少女ハイジ(HEIDI)」は、1968年製作のアメリカ=西ドイツ合作のテレビ映画。出演はジェニファー・エドワーズ、マイケル・レッドグレーヴ、マクシミリアン・シェル、ジーン・シモンズ、ウォルター・スレザック、ペーター・ヴァン・アイク、ズレイカ・ロブソン、ジョン・モールダー=ブラウン、カール・ライフェン、エリザベス・ニューマン、ミリアム・スポエリ、ジョン・クロウリー他。スイスの作家ヨハンナ・シュピリ(1827〜1901)の児童文学作品を基にアール・ハムナー・Jrが脚本を執筆。撮影はクラウス・フォン・ラウテンフェルト。
アルムの山にひとりで住むおじいさん(レッドグレーヴ)に引き取られることになった少女ハイジ(エドワーズ)は、その純粋で天真爛漫な性格により、偏屈で知られるおじいさんの心をなごませ、すぐに彼と打ち解けるが……。このテレビ映画が1968年11月17日にアメリカのNBCで放映された際、その前の枠でニューヨーク・ジェッツ対オークランド・レイダースのフットボール・ゲームが生中継されており、本来は試合が延長されたらそのまま中継を続ける予定だったものが、局側のミスで7時から「アルプスの少女ハイジ」の放送が始まってしまい、その後にオークランドが逆転勝利したため、フットボールファンからの抗議が局に殺到したという。ハイジを演じたジェニファー・エドワーズ(1957〜)はブレイク・エドワーズ監督の娘で、エドワーズが監督した「(未公開)S.O.B.」(1981)や「(未公開)ピンク・パンサーの息子」(1993)等にも出演しているが、本作の撮影当時10歳だったにもかかわらず、55歳になった2012年に受けたインタビューで「いまだにアメリカのフットボールファンから私にヘイトメールが来る」と語っていた。ヨハンナ・シュピリの原作の映像化では、日本のズイヨー映像が制作し1974年にフジテレビ系列で放送されたアニメ版の「アルプスの少女ハイジ」(総監督:高橋茂人、高畑勲)が有名。
ジョン・ウィリアムスのスコアは、公開当時の1968年に米Capitolレーベルから全14曲/約38分半収録のサントラLP(Capitol
Records SKAO
2995)が出ており、これには音楽に加えてジェニファー・エドワーズとマイケル・レッドグレーヴのセリフが収録されていた。その後、1995年にドイツのLabel
Xから全14曲/約42分収録のCD(Label X LXE
707)、2013年にスペインのQuartetレーベルから全28曲/約78分収録の1500限定プレスのCD(Quartet Records
SCE062)が出ていたが、同じQuartetレーベルが2023年12月にリリースしたこのCDは全30曲/約75分収録で、新たに発見された4トラック・マスターを使用しており、前半16曲はオリジナルスコア(音楽のみ)、後半14曲はサントラLPと同じセリフ入りのプログラムとなっている。
「Overture (Theme from 'Heidi')」は、ホルンによる栄光に満ちたファンファーレから明るく雄大なメインの主題へと展開する序曲で、“アルプスの少女ハイジ”のイメージそのもの。このメインの主題は「Arrival
in Dörfli」「To the Alm」「The Bedroom」「Montage」「Separation」等でも登場する。「Goat's
Milk」「Dinner Table」は、コミカルで快活なタッチの曲。「At the Church」「Library
Talk」は、ジェントルなタッチの曲。「Meditation Rock」は、静かにドラマティックな曲。「Stealing
Rolls」は、抑制されたサスペンス音楽。「Return to Dörfli」は、ヒロイックで快活なイントロからジェントルかつダイナミックな主題へ。「Waiting
with Grandfather」は、やや不吉なタッチの曲。「The Farewell」は、ジェントルで快活かつドラマティックな曲。「Klara
Walks」は、やや不吉なタッチから静かにドラマティックな主題へと展開し、後半ドラマティックに盛り上がる。これ以降はサントラLPと同様の内容だが、「A
Place of My Own (Heidi's Theme)」は、カーリ・チェイスのヴォーカルによる主題歌。
「ジェーン・エア(JANE EYRE)」は、1970年製作のイギリス=アメリカ合作映画(日本では1971年3月に劇場公開されているが、アメリカではテレビ映画として放映された)。出演はジョージ・C・スコット、スザンナ・ヨーク、イアン・バネン、ジャック・ホーキンス、ニリー・ドーン・ポーター、レイチェル・ケンプソン、ケネス・グリフィス、ピーター・コプリー、クライヴ・モートン、ファニー・ロウ、スーザン・ロウ、アンハラド・リーズ、カール・バーナード、ナン・マンロー、ジーン・マーシュ他。シャーロット・ブロンテ(1816〜1855)の1847年作の原作『ジェーン・エア』を基にジャック・プルマンが脚本を執筆。撮影はポール・ビーソン。
幼くして両親を亡くしたジェーン・エア(ヨーク)は、引き取られた伯母の家で疎まれ、寄宿学校ローウッド学院に預けられる。そこで心を通わせられる人々と出会った彼女は、同校で生徒として6年間、教師として2年間を過ごした後、自立を決意する。ソーンフィールド邸で家庭教師として雇われたジェーンは、当主エドワード・ロチェスター(スコット)との身分を超えた恋愛を経験し、結婚を申し込まれる。しかし結婚当日になって彼には既に妻が存在することを知ったジェーンは、ひとり黙ってソーンフィールドを去るが……。同じ原作が「ジェーン・エア」(1943/監督:ロバート・スティーヴンソン、出演:オーソン・ウェルズ、ジョーン・フォンテイン)、「ジェイン・エア」(1996/監督:フランコ・ゼフィレッリ、出演:ウィリアム・ハート、シャルロット・ゲンスブール)、「ジェーン・エア」(2011/監督:キャリー・ジョージ・フクナガ、出演:ミア・ワシコウスカ、ミヒャエル・ファスベンダー)等、何度も映画化されている。
ジョン・ウィリアムスのスコアは、公開当時の1971年に米Capitolレーベルから全11曲/約37分半収録のサントラLP(Capitol
Records SW 749)が出ており、1988年にイギリスのSilva Screenレーベルから同内容のCD(Silva Screen FILMCD
031)、2012年に米La-La Landレーベルからも同内容のCD(La-La Land Records LLLCD
1214)が出ていたが、Quartetレーベルが2023年12月にリリースしたこのCDは追加音楽4曲を含む全15曲/約44分収録で、ステレオのアルバム・マスターからの新規ハイレゾリューション・トランスファーを利用。
「The Love Theme from 'Jane Eyre'」は、ホルンによるイントロからピアノとオーケストラによるリリカルかつドラマティックなラヴ・テーマへと展開。悲哀感に満ちた名曲で、この主題は「Overture
(Main Title)」「Meeting」「Across the Moors」でも登場する。「Lowood」は、静かにドラマティックな曲。「To
Thornfield」は、快活なタッチからスリリングでダイナミックな主題へ。「Festivity at Thornfield」は、優雅な舞踏音楽。「Grace
Poole and Mason's Arrival」は、不吉なタッチのサスペンス音楽。「Thwarted Wedding」も、不吉なタッチから後半ダイナミックに盛り上がる。「Restoration」は、ドラマティックなタッチの曲。「Reunion
(End Title)」は、フルートによるメランコリックでリリカルな主題から後半ピアノによるラヴ・テーマへと展開するエンドタイトル。この後で、追加音楽として優雅な舞踏音楽「More
Festivity」と、「To Thornfield (Alternate)」「Restoration
(Alternate)」「The Love Theme from 'Jane Eyre' (Alternate)」の代替テイクを収録。
(2024年3月)
John Williams
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