ソルジャーブルー SOLDIER BLUE
作曲:ロイ・バッド
Composed by ROY BUDD
(ドイツCaldera Records / C6053)
1970年製作のアメリカ映画(日本公開は1971年2月)。監督は「野のユリ」(1963)「砦の29人」(1966)「誇り高き戦場」(1967)「まごころを君に」(1968)「サンタマリア特命隊」(1972)「エンブリヨ」(1976)等のラルフ・ネルソン(1916〜1987)。出演はキャンディス・バーゲン、ピーター・ストラウス、ドナルド・プレザンス、ジョン・アンダーソン、ホルヘ・リヴェロ、ダナ・エルカー、ボブ・キャラウェイ、マーティン・ウェスト、ジェームズ・ハンプトン、モート・ミルズ、ホルヘ・ルセック、オーロラ・クラヴェル、マルコ・アントニオ・アルザーテ、バーバラ・デ・ハブ、ラルフ・ネルソン他。セオドア・V・オルセンの原作を基にジョン・ゲイが脚本を執筆。撮影はロバート・B・ハウザー。製作総指揮はジョセフ・E・レヴィン。
西部開拓史上の汚点とも言うべき“サンドクリークの大虐殺”(1864年11月29日にアメリカ軍が無抵抗のシャイアン族とアラパホー族インディアンに対して行った無差別虐殺。150人以上が殺され、その大半が女性と子供だったという)をグラフィックな暴力描写により描いた異色ウエスタン。1864年、アメリカ中西部のコロラド。旅行中にシャイアン族によって捕らえられ、その後2年間、一族の酋長“まだらの狼”(リヴェロ)の慈愛を受けて暮らしていた白人女性クレスタ・リー(バーゲン)は、一族に別れを告げ婚約者であるマクネアー中尉(キャラウェイ)の待つリユニオン砦へと出発した。しかし、彼女を護送する騎兵隊がたまたま金塊を運んでいたため、待ち伏せしていたシャイアン族に襲撃されてしまう。生き残ったのはクレスタとホーナス・ガント(ストラウス)という若い兵士だけだった。彼は父をインディアンに殺されたことで、復讐に燃えていた。数日間旅するうち、インディアンをめぐって2人の意見はことごとく対立するが、クレスタの激しい気性の中に自然な優しさを見出したホーナスは、いつしか彼女を愛するようになる。ようやく砦にたどり着いたクレスタは、アイヴァーソン大佐(アンダーソン)率いる一隊がシャイアンとの協定を破り、集落を襲撃しようとしていることを知る……。
最初にテスト上映された135分のプリントでは、クライマックスの大虐殺シーンで、インディアン女性の乳房が切り落とされて投げ捨てられたり、子どもたちの手足が切断され(実際に手足のない障がい者を起用して撮影された)、眼球を撃ち抜かれ、首が斬り落とされるといったスプラッター映画のような残虐な暴力シーンが展開し、これを見た観客が暴動を起こしかけたので、これらのショットは大幅にカットされて公開された。この大虐殺シーンは、ヴェトナム戦争時の1968年3月に、アメリカ軍兵士が非武装のヴェトナム人住民を虐殺したソンミ村虐殺事件のアレゴリーとも考えられているという。
音楽は「小さな冒険者」(1971)でもラルフ・ネルソン監督と組んでいるロイ・バッド(1947〜1993)。当時22歳だったバッドは、ジェリー・ゴールドスミス、エルマー・バーンステイン、ラロ・シフリン、ヘンリー・マンシーニの音楽を集めたテープを“自作のデモ”と称して監督に送り、この作曲の仕事を得たという。この作品は、1971年にバフィー・セイント・マリーのヴォーカルによる主題歌がシングル盤として各国のVanguardレーベルから出ていたほか、バッドのスコアが1970年にイギリスのPYEレーベルが出したコンピレーションLP(PYE
NSPL 18348)に5曲収録されており、その後イギリスのCinephileレーベルが7曲収録のコンピレーションCD(Cinephile CIN CD
022)を出している(バッド作曲の「マーベリックの黄金」「ツェッペリン」も収録)が、これらはアルバム用に再録音されたものだった。今回ドイツのCalderaレーベルが2024年3月にリリースしたこのCDは、新たに音源が発見されたオリジナルスコアの初アルバム化で、全21曲/約59分を収録。
「Start of Journey」は、明るく快活でヒロイックなマーチ調の曲。「Indians
Attack Wagon」は、ダイナミックでパーカッシヴなアクション音楽。「Valley of the 600」は、ハーモニカ、ギターをフィーチャーしたジェントルな曲。「There's
the Road to the Fort」は、明るくジェントルなタッチの曲。「Hey Miss Lee」は、明るく快活な曲。「Kiowa
Fight Pt. 1」「Kiowa Fight Pt. 2」「Honus Rides Into Army Camp」「Running Fox Sweeps
Down」は、ダイナミックなサスペンスアクション音楽。「Kiowa Fight Pt. 3」は、サスペンス調からジェントルでリリカルな主題へ。「Honus
Sets Light to Wagon」は、抑制されたサスペンス調からダイナミックなアクション音楽へ。「From Honus
Falling Off Horse」は、静かにドラマティックなタッチから抑制されたサスペンス音楽へ。「Cresta Tends
Wound」は、ジェントルでリリカルな曲。「Cannons Open Fire」は、重厚なサスペンス音楽。「Spotted
Wolf Rides Out」は、抑制されたサスペンス音楽。「Massacre」は、虐殺シーンでの軽快なマーチ。
今回発見された音源はモノラル・テープだったが、一部ステレオ音源が含まれており、躍動的なサスペンス音楽「Cresta Enters Army
Camp」「Cresta Rides Into Indian Camp」と、ジェントルでリリカルな「My True Love
(Sourwood Mountain)」が収録されている。
最後にボーナスとして、バフィー・セイント・マリーのヴォーカルによるリリカルな主題歌のデモ「Soldier
Blue – Piano Demo」と、1987年にBBCラジオが放送した約14分のロイ・バッドへのインタビュー音声「Interview
with Roy Budd」を収録。
(2024年6月)
Roy
Budd
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