レア・サウンドトラックス Volume 8(2) LES B.O. INTROUVABLES - VOLUME 8 / CD2

(未公開)L'ADDITION
美しさと哀しみと TRISTESSE ET BEAUTÉ

作曲・指揮:ジャン=クロード・プティ
Composed and Conducted by JEAN-CLAUDE PETIT

(仏Music Box Records / MBR-B8)

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フランスのMusic Boxレーベルが、あまり知られていないマイナーなフランス映画音楽をシリーズで紹介しているサウンドトラック集の第8弾(300枚限定プレス)で、1982年から1994年の間に作曲されたスコアを集めたコンピレーション。CD3枚組となっており、ここではその2枚目に収録された「愛と宿命の泉」(1986)「シラノ・ド・ベルジュラック」(1990)「プロヴァンスの恋」(1995)「ボーマルシェ/フィガロの誕生」(1996)「(TV)レ・ミゼラブル」(2000)等のジャン=クロード・プティ(1943〜)作曲の2作品のスコアを紹介。いずれもプティがキャリアの初期に手がけたスコアで、過去にサントラLPが出ており、同じ内容をリマスターしたものとなっている。

「(未公開)L'ADDITION」は、1984年製作のフランス映画(英語題名は「THE CAGED HEART」)。監督はドゥニ・アマール(1946〜)。出演はリシャール・ベリ、リシャール・ボーランジェ、ヴィクトリア・アブリル、ファリド・ショペル、ジャック・スレイ、ファブリス・エベルアール、ダニエル・サルキー、フランシス・アルノー、シャルリー・ネルソン、ジャック・ノロ、ヴァンサン・ランドン、ジョルジュ・ブラネス、ジュリアン・ブコウスキ、ジェラール・カイヨー、イヴァーヌ・ダオーディ他。脚本はドゥニ・アマール、ジャン=ピエール・バスティとジャン・クルトラン。撮影はロベール・フレッス。万引きの疑いをかけられた見知らぬ若い女性パティ(アブリル)を擁護したことで、有罪となって刑務所に収監された舞台俳優のブリューノ・ヴァンクラール(ベリ)が、別の囚人の脱獄計画に巻き込まれて刑期を2年に延長された上、サディスティックなソシオパスの監守ロルカ(ボーランジェ)から執拗に攻撃されるが……。

ジャン=クロード・プティのスコアは、公開当時の1984年にフランスのCarrereレーベルから全13曲/約31分収録のサントラLP(Carrere 66.116)が出ていたが、これは同内容の初CD化。「L'addition (Générique)」は、エレキギター、シンセサイザーをフィーチャーしたストイックでドラマティックかつスリリングなタッチのメインタイトル。「Premier parloir」「Nouvelle prison」は、ピアノをフィーチャーしたメランコリックでドラマティックなタッチの曲。「L'évasion」「Minet」「Lorca」は、サスペンスフルでストイックなタッチの曲。「Transfert」は、パーカッシヴなサスペンス音楽。「Troisième parloir」は、ジェントルなタッチの曲。「La permission」は、抑制されたサスペンス調からピアノをフィーチャーしたドラマティックでストイックなタッチへ。「L'isolement」も、ドラマティックなタッチの曲。「L'attente」「Vers la liberté」は、エレキギターをフィーチャーしたストイックでスリリングなタッチの曲。「L'addition (Générique fin)」は、メインの主題にリプライズによるエンドタイトル。クラシカルなタッチとロックを組み合わせたドラマティックでストイックなサスペンス調が秀逸なスコア。

「美しさと哀しみと(TRISTESSE ET BEAUTÉ)」は、1985年製作のフランス映画(英語題名は「SADNESS AND BEAUTY」/日本公開は1987年4月)。監督は本作がデビューとなるジョイ・フルーリー。出演はシャーロット・ランプリング、ミリアム・ルーセル、アンジェイ・ズラウスキー、ベアトリス・アジュナン、ジャン=クロード・アドゥラン、ジャン=ポル・デュボワ、イザベル・サドヤン他。『伊豆の踊子』『雪国』『千羽鶴』『古都』等で知られる川端康成(1899〜1972)の原作『美しさと哀しみと』を基にジョイ・フルーリーとピエール・グリエが脚本を執筆。撮影はベルナール・リュティック。小説家のユーゴ(ズラウスキー)は、20年前に別れた彫刻家のレア・ウエノ(ランプリング)と再会する。ユーゴは、かつてレアとの不倫の愛を題材にした小説を発表し、それが出世作となって成功を収めていた。レアと同性愛の関係にある弟子プルダンス(ルーセル)は、レアが過去に彼女を裏切ったユーゴを今でも愛していると知り、嫉妬とレアへの愛と献身からユーゴに復讐しようと決意する……。同じ原作が1965年に「美しさと哀しみと」(監督:篠田正浩、出演:山村聡、加賀まりこ、八千草薫、音楽:武満徹、湯浅譲二)として映画化されている。

ジャン=クロード・プティのスコアは、公開当時の1985年にフランスのCarrereレーベルから全12曲/約34分収録のサントラLP(Carrere 66.248)が出ていたが、これは同内容の初CD化。「Tristesse et beauté」は、フィリップ・マテによる気だるいテナー・サックスのソロにピアノを加えた静かにドラマティックなタッチのメインタイトル。「Sivabelle」は、コーラスを加えた静かなイントロから、トランペットとティンパニのフレーズ、サックス、鐘の音をフィーチャーしたドラマティックなタッチへ。「La rencontre」「La chaise longue」「Le destin」は、気だるいサックスのソロをフィーチャーしたメインの主題のバリエーション。「Prudence et Hugo」は、ピアノ、クラリネットをフィーチャーしたドラマティックなタッチの曲。「Le sacrifice」は、サスペンスフルなタッチ。「Prudence et Léa」は、フルートによるメインの主題。「La dispute」は、ストリングスによるメインの主題からドラマティックなタッチへ。「Les galets」は、鐘の音をフィーチャーした曲。「L'accident」は、ドラマティックな主題から後半サスペンスフルなタッチへ。「La vengeance (Générique fin)」は、重厚なサスペンス音楽から後半サックスのソロによるメインの主題へ展開するエンドタイトル。アブストラクトな実験音楽と、ドラマティックな要素を組み合わせたスコア。


尚、この3枚組CDの収録作品は以下の通り:

DISC 1
・宮廷円舞曲 DAMES GALANTES(作曲:レイモン・アレッサンドリーニ)
・(未公開)PRIEZ POUR NOUS(作曲:レイモン・アレッサンドリーニ)


DISC 2
・(未公開)L'ADDITION(作曲:ジャン=クロード・プティ)
・美しさと哀しみと TRISTESSE ET BEAUTÉ(作曲:ジャン=クロード・プティ)

DISC 3
・(未公開)L'AMOUR PROPRE NE LE RESTE JAMAIS TRÈS LONGTEMPS(作曲:ジャン=クロード・ヴァニエール)
・(未公開)SALUT... J'ARRIVE(作曲:クリスチャン・ペガン)


(2024年8月)

Jean-Claude Petit

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