(未公開/TV)THE GENERAL ELECTRIC THEATER:ジェリー・ゴールドスミス音楽集 JERRY GOLDSMITH AT THE GENERAL ELECTRIC THEATER
作曲:ジェリー・ゴールドスミス
Composed by JERRY GOLDSMITH
指揮:リー・フィリップス
Conducted by LEIGH PHILLIPS
演奏:プラハ市フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the City of Prague Philharmonic Orchestra
(米Intrada / INT
7179)
「(未公開/TV)THE GENERAL ELECTRIC THEATER」は、レヴュー・スタジオズが製作し、CBSで1953〜1962年に放送されたアメリカのテレビ・シリーズ(30分×302話、10シーズン)。トーマス・エジソンが設立したアメリカの航空エンジンメーカー、ゼネラル・エレクトリック(General
Electric Company)の1社提供により製作されたアンソロジー・シリーズ(1話完結のドラマ)。「カンサス騎兵隊」(1940)「嵐の青春」(1942)「殺人者たち」(1964)等に出演した俳優で、1981〜1989年の期間アメリカ合衆国第40代大統領を務めたロナルド・レーガン(1911〜2004)がシリーズのホストを担当。
このCDは、ジェリー・ゴールドスミス(1930〜2004)が、キャリアの初期にこのシリーズのいくつかのエピソードに提供したスコアを集めたコンピレーションだが、楽譜が存在しないスコアはリー・フィリップスが耳で聴いてリコンストラクトし、自らプラハ市フィルを指揮して新録音したもの。Kickstarterによるクラウドファンディングにより実現したプロジェクトで、当初はデジタル版でのみリリースされていたが、IntradaレーベルがCD化したもの。
「HITLER'S SECRET」は、1959/10/4放送のシーズン8の第3エピソード。監督は「モスキート爆撃隊」(1969)「地球最後の男
オメガマン」(1971)等を手がけ「(TV)炎の砦マサダ」(1981)でジェリー・ゴールドスミスと組んでいるボリス・セイガル(1923〜1981)。出演はロバート・ロッジア、レイモンド・マッセイ、エヴェレット・スローン、ホイット・ビッセル、ウォルター・ボールドウィン、ウィリアム・E・グリーン、リチャード・ジョイ、トム・パルマー。脚本は「サイコ」(1960)等のジョセフ・ステファーノ。1934年、アドルフ・ヒトラー(ロッジア)がドイツ総統に就任するに当たり、病で余命いくばくもない首相パウル・フォン・ヒンデンブルク(マッセイ)の合意を得ようとしたが、実は彼が強く反対していると知って、彼の死を待ち、息子であるオスカー・フォン・ヒンデンブルク(スローン)に、彼の父が死の床でヒトラーを承認したとの虚偽の証言をさせようとする……。
これはジェリー・ゴールドスミスが初めてボリス・セイガル監督と組んだスコアで、「The
Beginning / The Plan / The Visit」は、ミリタリスティックでパーカッシヴな主題から、ダイナミックなタッチ、ダークな主題へと展開。「Sick
Man / Papa's Orders / The Truth」は、抑制されたサスペンス音楽。「The True Son /
Secrets / False Witness」「The Arrest / The Lie」「End Credits」も、ミリタリスティックかつダイナミックな曲で、ゴールドスミスの個性がよく出ている。
「THE LAST DANCE」は、1959/11/22放送のシーズン8の第10エピソード。監督は「原子力潜水艦浮上せず」(1978)「(TV)殺しのリハーサル」(1982)「(TV)消えた花嫁」(1986)「アパッチ」(1990)等のデヴィッド・グリーン(1921〜2003)。出演はキャロル・リンレイ、クリント・キンブロー、マルコム・アッターベリー、メアリー・アスター他。脚本はメイヨ・サイモン。高校生のフィリス(リンレイ)は、子どもの頃から好きなジーン(キンブロー)と結婚したいと考えていたが、彼の両親であるジョー(アッターベリー)とベア(アスター)は当初結婚に反対していた。やがて両親も納得して若い2人を支援するようになるが、ティーンエイジャーの2人はあまりにもジョーとベアに頼りすぎるようになる……。
ジェリー・ゴールドスミスはデヴィッド・グリーン監督と4本で組んでいるが、これが最初のコラボレーション作品。「Newlyweds」は、ピアノ、ストリングス、オーボエによる静かにドラマティックなタッチの曲。「Problems
/ Burnt Shirt」「New Dress / Phone Call / For Better or Worse」「Good Mother / End
Credits」は、ジェントルでドラマティックなタッチ。オーボエはズデネク・リス、ハープはハナ・ムルロヴァ=ヨウゾヴァの演奏。
「SARAH'S LAUGHTER」は、1960/1/3放送のシーズン8の第16エピソード。監督はデヴィッド・グリーン。出演はセルマ・リッター、ジェームズ・グレゴリー、ジャッキー・クーガン、ライト・キング、マリオン・ロス。脚本はタッド・モーゼル。子供のいない中年の夫婦ドリス・グリーン(リッター)とサンディ・グリーン(グレゴリー)は、ここ数年心が離ればなれになってしまっていた。ドリスの誕生日にサンディが泥酔して帰宅したことで、2人は口論になるが、互いに思いのたけをぶちまけたことで、わだかまりがなくなっていく……。
ジェリー・ゴールドスミスのスコアは、「Main
Title」がハーモニカとストリングスによる静かにドラマティックなメインタイトル。「Baby Book / Caught in
ihe Act」は、ハーモニカによるジェントルな主題から躍動的なタッチへ。「The Getaway / Birthday
Present / Waiting」は、ハーモニカによる静かにドラマティックな主題から快活なタッチへ。「The
Decision / New Child / End Credits」は、チェロによるメランコリックな主題から、ハーモニカを加えたジェントルなタッチのエンドクレジットへと展開。ハーモニカはウィル・ウィルデ、ヴィオラはマーティン・アダモヴィッチ、チェロはマレク・エルズニッチの演奏。このエピソードにはフレッド・スタイナーが別のスコアを作曲していたが、理由は不明なもののゴールドスミスのスコアにリプレースされている。
「THE COMMITTEEMAN」は、1960/1/17放送のシーズン8の第18エピソード。監督は舞台俳優出身で「(TV)ROOTS/ルーツ2」(1979)等の監督を手がけているロイド・リチャーズ(1919〜2006)。出演はリー・J・コッブ、ティミー・エヴェレット、シルヴィア・シドニー、チャールズ・ラ・トーレ、ジョージ・マーゴ、ヴィトー・スコッティ、ナオミ・スティーヴンス。フィラデルフィアで洋服の仕立て屋を営むイタリア系アメリカ人ドミニク・ローマ(コッブ)は、しばらく仕事がなく、地元の委員会メンバーになって権力と収入を得ることを画策していたが、息子のバディ(エヴェレット)が高校を中退して市民保全部隊(若年労働者の職業教育訓練を行う失業対策プログラム)に入ると聞いて、落胆するのだった……。脚本を手がけたジョセフ・ステファーノはフィラデルフィア出身で、父が仕立て屋で自身も高校を中退しており、彼の自叙伝的なエピソードとなっている。
ジェリー・ゴールドスミスのスコアは、「Main
Title」がマンドリン、アコーディオンとストリングスによるジェントルなメインタイトル。「The Prediction /
The Victor / The Dark Room」は、アコーディオンをフィーチャーした明るく快活なタッチ。「The
Ring」「The Boy」は、マンドリンとアコーディオンによるジェントルな曲。「The Poster / The
Election」は、快活でサスペンスフルなタッチ。「The Big Man」「End Credits」は、マンドリンとアコーディオンによる躍動的なタッチの曲。マンドリンはパヴェル・ブルダ、アコーディオンはパヴェル・ドレサー、ギターはヤロスラフ・フリードルの演奏。
「THE LEGEND THAT WALKS LIKE A MAN」は、1961/2/12放送のシーズン9の第20エピソード。監督は「(TV)シマロン」(1967)「(TV)ウィンチェスター銃'73」(1967)等のハーシェル・ドーハティ(1910〜1993)。出演はアーネスト・ボーグナイン、ザ・ザ・ガボール、ウィリアム・シャラート、ラルフ・クラントン、カリン・クプシネット、ジミー・ライドン、サル・ポンティ、ジェイソン・ロバーズ・Sr、ラルフ・サンフォード。原案・脚本はバド・シュルバーグ。ハリウッドの売れない監督マティ・モラン(ボーグナイン)は、旧友で助監督のレッド・マイヤーズ(シャラート)から第二班監督の仕事を紹介されるが、マティが現場で優れた仕事をしたため、メイン監督を務めたヴィック・フラナー(クラントン)は疎ましく感じ、彼に失敗させようと自分の前妻で気難しい主演女優のサリ・サニーン(ガボール)の演出を任せるが……。
ジェリー・ゴールドスミスのスコアは、「Main
Title / Neglected Genius」が明るく陽気でパーカッシヴなメインタイトル。「Here You Are /
The Convincer / Unduly Generous」は、ジェントルで快活なタッチから陽気なマーチ、コミカルな主題へ。「Image
of Desire」「That's a Wrap / The Legend & The Ma」は、ジェントルなタッチの曲。「End
Credits」は、陽気で快活なマーチによるエンドクレジット。ピアノの演奏はヤロミール・クレパッチ。
「MY DARK DAYS」は2部構成になっており、パート1は1962/3/18放送のシーズン10の第25エピソード、パート2は1962/3/25放送の第26エピソード。監督は「肉弾鬼中隊」(1956)「非情の青春」(1959)等のチャールズ・F・ハース(1913〜2011)。出演はロナルド・レーガン、ジーン・クレイン、ゲイル・ボニー、ロバート・エムハート、マイケル・フォックス、アリス・フロスト、ランス・フラー、フランク・ガーストル、スーザン・ゴードン、ヴァージニア・グレッグ、パトリシア・ヒューストン、パトリック・マクヴィー、カール・ベントン・リード。マリオン・ミラーによる自叙伝を基にジョン・シェリダンが脚本を執筆。撮影はデイル・デヴァーマン。これはロナルド・レーガンが長年暖めてきた企画だったが、このエピソードをきっかけに彼は本シリーズのホストを降りることになり、シリーズ自体も打ち切りとなった。マリオン・ミラー(クレイン)が、FBIの要請により共産主義者を告発するためのスパイとして活動することになった経緯を法廷で証言するシーンからドラマは始まる。夫ポール(レーガン)と法廷から帰宅しようとしたマリオンは、共産党員に妨害され、帰宅すると娘のベッツィー(ゴードン)が学校からの帰りに拉致されたと知る。共産党員と友人たちの双方から疎まれるようになったマリオンは、仕事も失い、苦悩の日々を過ごすようになる……。
ジェリー・ゴールドスミスのスコアは、「Intro
/ Prelude」がダークなサスペンス調のイントロダクションと前奏曲。「Flashback / Early
Days」「Join Us」「Recess」「Bumper / The Visitor」「Why / Breaking Point / The Door」は、抑制されたサスペンス音楽。「The
Jumper」「Aftermath / Ashamed」は、ドラマティックなサスペンス音楽。「Exit Flashback /
Let's Go Home」「Reconciliation」は、ジェントルなタッチ。「Bullies / Something
Unpleasant / The Window」は、ビジーでダイナミックなタッチからダークなサスペンス音楽へ。「End
Credits」も、ダークなタッチのエンドクレジット。ホルンはメレディス・ムーア、ピアノはルーシー・ヨハノヴァの演奏。
「THE BAR MITZVAH OF MAJOR ORLOVSKY」は、1962/4/15放送のシーズン10の第28エピソード。監督は「(未公開/TV)DO
NOT FOLD, SPINDLE, OR MUTILATE」(1971)でもゴールドスミスと組んでいるテッド・ポスト(1918〜2013)。出演はアーネスト・ボーグナイン、クロリス・リーチマン、セオドア・バイケル、チャールズ・ハーバート、アーヴィング・バーンズ、モリス・コーエン、ジェイコブ・ファイフェル、スコッティ・モロー。モートン・ウィッシェングラッドの原案を基にシモン・ウィンセルバーグが脚本を執筆。元ロシア空軍の戦闘機パイロット、デヴィッド・アブラモヴィッチ・オルロフスキー少佐(ボーグナイン)は、職業紹介所を訪れ、そこで働く未亡人のミリアム・ラスキン(リーチマン)に話しかけるが、実は彼は仕事ではなく配偶者を探しており、その場で彼女に求婚する。ミリアムはプロポーズをお断りするが、後日自宅での夕食に招待する。オルロフスキーが花束を持ってミリアム宅を訪れると、彼女の父でラビのヘイルヴィー(バイケル)と息子のジョシュア(ハーバート)もいた。若い頃にユダヤ教への信仰を拒絶したオルロフスキーに、ラビは改心するように説得するが……。
ジェリー・ゴールドスミスのスコアは、「Main
Title」がジェントルなタッチのメインタイトル。「The Listener / Date / Forgive Me /
Bumper」は、静かにドラマティックかつジェントルな曲。「Teach Me / Lessons」は、チェロをフィーチャーしたメランコリックなタッチの曲。「Goodbye
/ The Request / End Credits」は、静かにドラマティックなタッチから躍動的なエンドタイトルへ。ゴールドスミスが後に作曲した「(TV)衝撃の告発!
QBセブン」(1974)や「(TV)炎の砦マサダ」(1981)に通ずるジューイッシュ・イディオムによるスコア。ヴィオラはマーティン・アダモヴィッチ、チェロはマレク・エルズニッチの演奏。
最後に収録された「AUTUMN LOVE」は、ジェリー・ゴールドスミスが1950年代後半にCBSの音楽ライブラリー用に作曲したものだが、この時代にこのタイトルのテレビ、ラジオ番組は存在しないので、特定の作品のために書かれたものではないと考えられる。
全7曲の短い楽曲から構成されており、「Part 1」「Part 2」「Part 3」「Part 4」「Part 7」は、ジェントルで美しい曲。「Part
5」は、明るく快活なタッチの曲。「Part 6」は、ドラマティックなタッチの曲。ハープはマリアナ・ヨウゾヴァの演奏。
(2024年10月)
Jerry Goldsmith
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