悪を呼ぶ少年 THE OTHER
作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH
演奏:ハリウッド・スタジオ交響楽団
Performed by the Hollywood Studio Symphony
(米Varese Sarabande / VCL 0824
1224)
1972年製作のアメリカ映画(日本公開は1973年5月)。製作・監督は「ジャングル地帯」(1962)「アラバマ物語」(1962)「レッド・ムーン」(1968)「おもいでの夏」(1971)「(未公開)マン・イン・ザ・ムーン/あこがれの人」(1991)等のロバート・マリガン(1925〜2008)。出演はユタ・ヘイゲン、ダイアナ・マルドア、クリス・ユドヴァーノキー、マーティン・ユドヴァーノキー、ノーマ・コノリー、ヴィクター・フレンチ、ロレッタ・レヴァーシー、ルー・フリッゼル、ポーティア・ネルソン、ジェニー・サリヴァン、ジョン・リッター、ジャック・コリンズ、エド・ベイキー、クラレンス・クロウ、ボブ・メルヴィン他。「史上最大の作戦」(1962)「枢機卿」(1963)「危険な道」(1965)「栄光の野郎ども」(1965)等に出演した俳優で、後に小説家に転身して「(TV)悪霊の棲む村」(1977)「悲愁」(1979)等の原作を手がけたトーマス・トライオン(1926〜1991)のベストセラー小説『もう1人の子』を基にトライオン自身が脚本を執筆。撮影はロバート・L・サーティース。
1935年、コネチカット州ペコット・ランディング村のペリー家では、夫を不慮の事故で亡くしたアレクサンドラ(マルドア)がショックで半病人のようになり、ベッドに伏す日が多くなった。彼女の母エイダ(ヘイゲン)は、12歳になる一卵性双生児の孫たち、ナイルズとホランド(クリスとマーティンのユドヴァーノキー兄弟)に、昔彼女が祖母から教わった“遊び”を伝えた。それは、木でも花でも人でも、1つの対象をじっと見つめて精神統一すると、一時的にその対象物になれるというテレバシー風の遊びだった。ある日ナイルズは、納屋の地下貯蔵庫でうずくまっていたホランドを見つけ、ポケットから鷹が彫りこまれた黄金の指輪を取り出した。そのとき従兄ラッセル(クロウ)が現われ、ナイルズたちが入ることの禁じられている地下室にいたことをジョージ伯父(フリッゼル)に言いつけると脅した。地下室の重いドアが頭の上に落ちてきてナイルズたちの父が死亡して以来、そこは入ってはならない場所になっていた。数日後、納屋で遊んでいたラッセルは、干し草めがけて2階から飛び降り、草の中にあったさすまた(刺股)に胸を貫かれて死んだ。この事件を契機に、ペリー家は死と恐怖の影に覆われ始めるのだった……。1972年度(第5回)シッチェス・カタロニア国際映画祭(ファンタジー、SF、ホラー、アニメーション等のジャンルに特化した映画祭)の最優秀監督賞を受賞している。
音楽はロバート・マリガン監督と「ジャングル地帯」(1962)等でも組んでいるジェリー・ゴールドスミス(1930〜2004)。このスコアは、1997年に米Varese
Sarabandeレーベルからゴールドスミス作曲の「悪魔のワルツ(The Mephisto
Waltz)」(1971)とカップリングになったサントラCD(Varese Sarabande
VSD-5851)が出ており、これには「悪を呼ぶ少年」の約22分の組曲が収録されていたが、同じVareseレーベルが2024年9月にリリースしたこの「The
Deluxe Edition」CDには、新たにレストアされた全19曲/約45分のコンプリートスコアを収録。限定プレス。
「Main
Title (“The Other”)」は、口笛(1972年にゴールドスミスと結婚した妻キャロルが吹いている)、フルート、ストリングスによるジェントルでリリカルなメインタイトル。「Summer
Fun」は、牧歌的でジェントルな主題から後半快活なタッチへ。「The Apple Cellar」は、不吉なサスペンス調から口笛によるリリカルな主題へ。「The
Well」は、ピアノ、ストリングス、フルート、ハーモニカによるメランコリックで美しい主題から後半メインの主題へ。「The
Flight」は、静かにドラマティックなタッチから、後半フルートとストリングスによるメインの主題に不吉なピアノが重なる。「The
Finger and Free Admission」は、静かにジェントルな主題から後半不吉なタッチへ。「The Game」は、抑制されたサスペンス音楽。「The
Ice Truck」は、メインの主題を織り込んだ快活でジェントルなタッチの曲。「Alexandra」は、ストリングス、フルート、ピアノによるジェントルでリリカルなアレクサンドラの主題。「The
Pond」は、フルートとピアノによるメインの主題から後半やや不吉なタッチへ。「Mother Knows」「The
Cemetery」は、ダークで不吉なサスペンス音楽から後半ダイナミックなタッチへ。「The Portrait」「The
Casket」は、メランコリックなタッチの曲。「No More Games and a Visit with Mother」は、ピアノとストリングスによるメランコリックなタッチから不吉なサスペンス調へ。「Angel
of Fire」は、ダークで不気味なサスペンス音楽。「End Title (“The Other”)」は、ダークなタッチから口笛によるリリカルな主題へと展開するエンドタイトル。最後にボーナストラックとして、オリエンタルなタッチのソース曲「Oriental
Source (Chan-Yu)」と、メインタイトルの代替テイク「Main Title (“The Other”)
(Alternate)」を収録。
オーケストレーションはアーサー・モートン。ハーモニカはトミー・モーガンの演奏。ポストプロダクションの過程でゴールドスミスのスコアの半分以上が削除されて映画で使用されなかったが、彼はその理由としてプロデューサーから「音楽が怖すぎるから」と言われたという。
(2024年12月)
Jerry Goldsmith
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