(未公開)タタール人の砂漠 IL DESERTO DEI TARTARI
作曲・指揮:エンニオ・モリコーネ
Composed and Conducted by ENNIO MORRICONE
(スペインQuartet Records / QR563)
1976年製作のイタリア=フランス=西ドイツ合作映画(日本で劇場未公開でビデオ発売済)。監督は「激しい季節」(1959)「家族日誌」(1962)「国境は燃えている」(1965)「高校教師」(1972)等のヴァレリオ・ズルリーニ(1926〜1982)で、本作は彼の遺作。出演はジャック・ペラン、ヴィットリオ・ガスマン、ジュリアーノ・ジェンマ、ヘルムート・グリーム、フィリップ・ノワレ、フランシスコ・ラバル、フェルナンド・レイ、ローラン・テルジェフ、ジャン=ルイ・トランティニャン、マックス・フォン・シドー、シャバン・ゴルチン・ホナズ、ジュゼッペ・パンビエリ、ブライアン・ロストロン、カムラン・ノザド、ナンフレッド・フレイバーガー他。『山のバルナボ』(1933)『偉大なる幻影』(1960)『ある愛』(1963)等の著作があるイタリアの作家ディーノ・ブッツァーティ=トラヴェルソ(1906〜1972)の原作『タタール人の砂漠(Il
deserto dei Tartari)』(1940/集英社、岩波文庫等より翻訳版が出版済)を基にアンドレ・G・ブルヌランとジャン=ルイ・ベルトゥチェリが脚本を執筆。撮影はルチアーノ・トヴォリ。
若き将校ジョヴァンニ・ドローゴ少尉(ペラン)は、町から遠く離れた辺境の砦で国境警備を命じられる。目の前に広がる砂漠からは、いつか敵が来襲すると言われているが、その兆候は微塵もなく、「備え」である彼らは無為に砂漠を見続ける日々が続く。結婚もできず、何一つ起こらない為に出世も望めず、娯楽は何一つない。ただ指令に従って砦を形式的に警備し、人生を摩耗させていく……。ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の作品賞・監督賞・助演男優賞(ジュリアーノ・ジェンマ)、ナストロ・ダルジェント最優秀作品監督賞を受賞。2013年に修復されたフィルムが第66回カンヌ国際映画祭のカンヌ・クラシックス部門で上映された。
ヴァレリオ・ズルリーニ監督作品のほとんどはマリオ・ナシンベーネ(1913〜2002)がスコアを作曲しているが、この遺作のスコアはエンニオ・モリコーネ(1928〜2020)が担当。このスコアは公開当時の1977年にイタリアGeneral
Musicレーベルから全14曲/約48分収録のサントラLP(General Music GML 10005)が出ており、その後1988年にイタリアScreen
Traxレーベルから全15曲/約49分収録のCD(Screen Trax CD ST
309)、2011年にイタリアGDMレーベルから全21曲/約60分収録のCD(GDM CD Club
7103)が出ていたが、Quartetレーベルが2024年10月にリリースしたこのCDは、2011年のGDM盤と同内容で、ステレオ・アルバム・マスターから新たにレストア、リマスターされている。500枚限定プレス。
「Il deserto come estasi」は、静かに荘厳で美しく、深遠なタッチのメインの主題。この主題は「Il
deserto come minaccia」「Il deserto come poesia della fine」「Il deserto come poesia
della fine #2」でも登場する。「Proposta」は、モリコーネの個性が強く出たドラマティックでストイックな第二主題で、この主題は「La
casa e la giovinezza」「Le stagionI, gli anni…」「Le stagioni, gli anni… #2」でも繰り返される。「Minaccia
continua」「Il cavallo bianco dei Tartari」は、ダークで不吉なタッチの曲。「Un
cavaliere all'orizZonte」「Una Fortezza su una frontiera morta」「Caccia al
Cinghiale」は、軍隊ラッパ調のフランティックなトランペットを織り込んだ不吉なタッチの曲。「Stillicidio」は、抑制されたサスペンス音楽。「La
cena degli ufficiali」「La cena degli ufficiali #2」「La cena degli ufficiali #3」は、メランコリックなタッチのワルツ。「Marcia
nella tormenta」は、不吉なタッチから後半メインの主題のバリエーションへ。「La vestizione e
l'addio」は、第二主題からメインの主題へ展開。「Marcia nella tormenta #2」は、スネアドラムによるマーチ調から不吉なサスペンス音楽へ。「Le
stagionI, gli anni… (Finale)」は、ピアノをフィーチャーした第二主題によるフィナーレ。
(2025年2月)
Ennio Morricone
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