(未公開/TV)HISTOIRES EXTRAORDINAIRES
(未公開/TV)LES
COUSINS DE LA CONSTANCE
(未公開/TV)LÀ-HAUT, LES QUATRE SAISONS
作曲・指揮:ジョルジュ・ドルリュー
Composed and Conducted by GEORGES DELERUE
(仏Music Box Records / MBR-240)
2025年で生誕100周年を迎えるフランスの作曲家ジョルジュ・ドルリュー(1925〜1992)が作曲したテレビシリーズ3作品のスコアを集めたコンピレーションCD。Music
Boxレーベルがリリースしているフランスのテレビドラマ・スコアのシリーズ「Les Grandes Musiques du Petit
Ècran/Great Television Soundtracks」の第10弾。いずれのスコアも初リリースで、500枚限定プレス。
「(未公開/TV)HISTOIRES EXTRAORDINAIRES」は、1981年製作のフランスのテレビシリーズ。「死刑台のエレベーター」(1957)「太陽がいっぱい」(1960)「鬼火」(1963)「チェイサー」(1978)「華麗なる相続人」(1979)「スフィンクス」(1980)等に出演したフランスの俳優モーリス・ロネ(1927〜1983)が、自ら崇拝するアメリカの恐怖小説作家エドガー・アラン・ポー(1809〜1849)の小説6作品を映像化したテレビシリーズを製作し、そのうちの「アッシャー家の崩壊」と「盗まれた手紙」の2エピソードのスコアをジョルジュ・ドルリューが担当したもの。
「アッシャー家の崩壊 (La chute de la maison
Usher/The Fall of the House of Usher)」は、シリーズの第6話で1981/4/12放映。監督はアレクサンドル・アストリュック(1923〜2016)。出演はファニー・アルダン、マチュー・カリエール、ピエール・クレマンティ、ジャック・ダクミーヌ、フェルナン・ギオ、ジャン・ルペール、ジョルジュ・リュカ、ミシェル・テュゴ=ドリ、フランス・アネルフォ、ジョエル・ディグー、ラファエル・マイコウスキー。脚本はピエール・ペルグリ。
旧友ロデリック・アッシャー(カリエール)の要請を受けて荒涼としたアッシャー家の屋敷にたどり着いたアラン(クレマンティ)は、原因不明の疾患によりやつれきったロデリックと再会して驚く。彼によると、最愛の妹マデリーン(アルダン)も長い重病のために死に瀕しているという。アランはアッシャー家に滞在し、書物を読んだりロデリックの弾くギターを聴いたりして時を過ごすが、やがてある晩、ロデリックはマデリーンがついに息を引き取ったと告げ、2人はその亡骸を棺に納め地下室に安置する……。ポーの代表的な短編小説(1839年作)で、過去に何度も映像化されており、特にロジャー・コーマン製作・監督、リチャード・マシスン脚本、ヴィンセント・プライス主演の「アッシャー家の惨劇(HOUSE
OF USHER)」(1960)が有名。
ジョルジュ・ドルリューのスコアは、「Valse de Madeline」がピアノとストリングスによるメランコリックでドラマティックなワルツの主題。「Souvenirs
d'enfance」は、オーボエによるジェントルなタッチの曲。「La chevauchée d'Allan」は、ミステリアスなタッチ。「La
guitare de Roderick」は、ロデリックが弾くメランコリックなギターの主題。「Mort de
Madeline」「 L'âme de la maison Usher」は、オーボエによるメランコリックな主題。「Madeline
et Allan」は、ピアノをフィーチャーしたメランコリックなタッチの曲。「L'amour empoisonné de Rod
et Madeline」は、メインのワルツの主題のリプライズによる情感豊かでドラマティックな曲。
「盗まれた手紙(La lettre volée/The Purloined Letter)」は、シリーズの第5話で1981/4/4放映。監督はリュイ・ゲーラ(1931〜)。出演はピエール・ヴァネック、ミシェル・ピロルジェ、アンリーク・ヴィアナ、リュイ・マンデ、マリア・デュ・セウ・ゲーラ、アゴスティノ・アルヴ、アミルカール・ボティカ、ジョニー・ダヴィド、ホセ・ゴメス、ペドロ・ピネイロ。脚本はリュイ・ゲーラ、ジェラール・ジングとヴィヴィアーヌ・ジング。
ポーの原作(1845年作)は、「モルグ街の殺人」「マリー・ロジェの謎」に続き、探偵C・オーギュスト・デュパンが登場するシリーズの3作目。デュパン(ヴァネック)の屋敷に、彼の助言を求めてパリ市警の警視総監が訪ねてくる。それは宮殿において起きた出来事で、さる高貴な貴婦人が私的な手紙を読んでいるところに大臣が部屋に入ってきてその手紙に気づき、巧妙な手口で盗み取っていったという。大臣はこの女性の弱みを握ったことで宮廷内で強大な権力を得るようになり、困り果てた女性は警察に内々の捜索を依頼したのだった……。原作は「隠したいものをあえて隠さないことによって相手の盲点をつく」という「盲点原理」を最初に創案した作品とされる。
ジョルジュ・ドルリューのスコアは、「Le
voyage en train」が明るく快活なタッチの曲。「L'enquête de Dupin」は、不吉なサスペンス音楽。「La
maison du ministre」は、チェロをフィーチャーしたサスペンス調からハープシコードによるミステリアスな主題へ。「Dupin
échafaude son plan」も、ミステリアスなタッチの曲。「La petite vengeance de
Dupin」は、ミステリアスなタッチから後半明るく快活な主題へ。
「(未公開/TV)LES COUSINS DE LA CONSTANCE」は、1970年製作のフランスのテレビシリーズ(全6話)。監督はロベール・マゾイエ(1929〜1999)。出演はジャン・ル・ムエル、ジャン=マルク・エピヌー、クロード・ブロッセ、リュシアン・バルジョン、ドミニク・マカヴォイ、アンドレ・テンシー、カトリーヌ・ドゥ・セイン、エリーナ・ラブールデット、ジャン=ピエール・ケリアン、ジルベール・リヴェット他。脚本はポール・ギマール。
フランス、ブルターニュ地方の港町コンカルノーを舞台に、漁師として働くいとこ同士のイヴ(ブロッセ)とジャン(ル・ムエル)が、自分たちで修繕した中古のトロール船“ラ・コンスタンス”に乗って仕事で海に出かける中、淋しさを感じながら彼らを待つイヴの妻マリー=ジョゼ(ドゥ・セイン)と、ジャンのフィアンセであるアン(マカヴォイ)たちを描くドラマ。
ジョルジュ・ドルリューのスコアは全編にブルターニュ地方を起源とするアコーディオンをフィーチャーしており、「Générique
début」は、ジェントルでノスタルジックなタッチのメインタイトル。「Le retour」「L'automne」は、フルートを加えたメランコリックなタッチの曲。「Le
bateau」「Épluchage」は、ジェントルなタッチ。「La noce」は、陽気なダンスミュージック。「Générique
fin」は、メインの主題のリプライズによるエンドタイトル。
「(未公開/TV)LÀ-HAUT, LES QUATRE SAISONS」は、1973年製作のフランスのテレビシリーズ(全4話)。監督・脚本はギイ・ルセールティシュール(1927〜2013)。出演はフレデリク・ドゥ・パスカル、カトリーヌ・アルディティ、アントワーヌ・シャサン、リザ・ブラコニエ、ベルナール・レイ、ピエール・アルディティ、レーヌ・バルテーヴ、レオンス・コルン、スザンヌ・クールタル、フロランス・ジョルゲッティ、リュシアン・ル・マルシャン、ポール・リージェ、アレクサンドル・リニョー、アンドレ・ヴァルティエ他。撮影はロジェ・デュクロ。
ドイツ人の元プロテスタント牧師だったピエール・シェーファー(ドゥ・パスカル)は、信仰を失い、アルプスの山村ケイラスにやって来た。彼は、亡くなった親友の息子マルク(シャサン)の面倒を見ていたが、マルクの姉であるニコール(アルディティ)は、カトリック教徒の教師だった。ピエールとニコールは、対立する死生観や宗教観をぶつけあいながら、少しずつ互いに惹かれ合うようになる……。監督のルセールティシュールは、子供の頃に暮らしたケイラスでの記憶をベースに、その地方をロケハン中に出会ったプロテスタントの牧師とカトリックの女性からインスピレーションを受けてストーリーを組み立てたという。
ジョルジュ・ドルリューのスコアは、「L'été
(Générique début)」「L'étoile de Noël」がフルートをフィーチャーしたジェントルでリリカルな曲。「Pierre
et Nicole」「Les questions de Marc」は、フルートをフィーチャーしたメランコリックなタッチ。「Fantaisie
de Pierre」は、ストリングスによる明るく快活な曲。「Conseils de Pierre」は、抑制されたサスペンス調の曲。「Rêve
de Nicole / Feu de camp」は、ミュージックボックス風のリリカルなタッチからハーモニカによるジェントルな主題へ。「Mort
de Marie-Louise」は、メランコリックなタッチの曲。「Le printemps (Générique fin)」は、フルートをフィーチャーしたメインの主題のリプライズによるエンドタイトル。
(2025年7月)
Georges Delerue
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