海辺のホテルにて HOTEL DES AMERIQUES
(未公開)UN MAUVAIS
FILS
(未公開)夜を殺した女 LE LIEU DU CRIME
作曲:フィリップ・サルド
Composed by PHILIPPE SARDE
指揮:ピーター・ナイト(「海辺のホテルにて」「(未公開)UN
MAUVAIS FILS」)、ビル・バイヤーズ(「(未公開)夜を殺した女」)
Conducted by PETER KNIGHT (HOTEL DES AMERIQUES, UN MAUVAIS FILS), BILL BYERS (LE
LIEU DU CRIME)
演奏:ロンドン交響楽団(「海辺のホテルにて」)、パリ管弦楽団(「(未公開)夜を殺した女」)
Performed by the London Symphony Orchestra (HOTEL DES AMERIQUES), L'Orchestre
de Paris (LE LIEU DU CRIME)
(仏Music Box Records / MBR-252)
フィリップ・サルド(1948〜)が1980年代に手がけたアンドレ・テシネ監督とクロード・ソーテ監督によるフランス映画3作品のスコアを集めたコンピレーションで、全編がリマスターされている。500枚限定プレス。
「海辺のホテルにて(HOTEL DES AMERIQUES)」は、1981年製作のフランス映画(日本公開は1984年6月)。監督は「バロッコ」(1977)「ブロンテ姉妹」(1979)「ランデヴー」(1985)「深夜カフェのピエール」(1991)「私の好きな季節」(1992)「野性の葦」(1993)「夜の子供たち」(1996)「溺れゆく女」(1998)「かげろう」(2003)「(未公開)見えない太陽」(2019)等のアンドレ・テシネ(1943〜)。出演はカトリーヌ・ドヌーヴ、パトリック・ドヴェール、エチエンヌ・シコ、サビーヌ・オードパン、ドミニク・ラヴァナン、ジョジアーヌ・バラスコ、フランソワ・ペロー、ジャン=ルイ・ヴィトラク、フレデリック・リュショー、ミシェル・バン・ドゥ・ロメニー、パスカル・ベルヌション、カトリーヌ・キャルレ、ジェラール・ドルリ、ジャック・ディシャン、ローズマリー・リヌーシー他。脚本はジル・トーランとアンドレ・テシネ。撮影はブルーノ・ニュイッテン。
パリから列車で10時間あまり、リゾート地として知られる海辺の町ビアリッツは、オフ・シーズンとなると、人気が途絶えて静まりかえる。パリからやって来たエレーヌ(ドヌーヴ)は、この町の病院で看護師をしていた。夜動を終えてアパートに車を走らせていたエレーヌは、人影が横切るのに気づかずに轢いてしまう。車を止めて急いで近づくと、1人の男が倒れていた。幸い大きな怪我はなく、2人は近くの深夜レストランに落ちついた。男はジル・ティッスラン(ドヴェール)といい、母親がこの町で小さなホテルを経営していた。彼はエレーヌの美しさに目をみはり、「この町には6人の美人がいるが、あなたで7人目だ」と言う。しかし、エレーヌには、建築家だった最愛の恋人を海の事故で失うという苦い過去があり、ジルと親しくなることをためらうのだった……。
フィリップ・サルドにとってアンドレ・テシネ監督との3本目のコラボレーション作品となるこのスコアは、1988年に仏Milanレーベルが「(未公開)LES
INNOCENTS」の公開に合わせて出したテシネ監督とサルドのコラボレーション作品を集めたコンピレーションCD(Milan Records CD CH
343)に3曲、2004年に仏Universalレーベルが出した同様のコンピレーションCD「Le Cinéma D'André
Téchiné」(Universal France 982 461-9)に約7分の組曲が収録されていたが、Music
Boxレーベルが2025年6月にリリースしたこのCDには、全24曲/約27分のコンプリート・スコアを収録。
「Gilles
Tisserand, Hôtel de la Gare」は、オーケストラによる繊細で美しくドラマティックな曲で、サルドの個性が強く出た曲。「Hôtel
des Amériques (Générique)」は、ピアノとストリングスによるメランコリックなタッチのメインタイトル。「Retour
au casino」「Arrivée à la Salamandre」「Ne me laisse pas !」「Nuit d'orage」「Le
rivage」「Hélène cherche Gilles」「Quai de gare」も、繊細かつドラマティックで深遠なタッチの曲。「Sérénité」「Biarritz」「Visite
reportée」「La Salamandre」「La maquette」「Retour de Paris」も、繊細で美しい。「Le
canapé」「Une semaine à Paris」「Le doute」「Le lendemain」「Hôtel des Amériques」は、ピアノをフィーチャーしたメランコリックなタッチの曲。「L'aéroport」は、ピアノとストリングスによる躍動的でスリリングなタッチの曲。「Crise
de Gilles」は、ダークでサスペンスフルなタッチ。「Départ de la Salamandre」は、メインの主題のバリエーション。「Hôtel
des Amériques (Suite originale)」は、主要な主題がメドレーで展開する約7分の組曲。サルドらしい繊細なニュアンスの美しいスコア。ロンドン交響楽団とガブリエリ弦楽四重奏団(the
Gabrielli Quartet)による演奏。オーケストレーションと指揮はピーター・ナイト。ピアノはハワード・シェリー。
「(未公開)UN MAUVAIS FILS」は、1980年製作のフランス映画。監督は「すぎ去りし日の…」(1970)「夕なぎ」(1972)「ありふれた愛のストーリー」(1978)「ギャルソン!」(1983)「僕と一緒に幾日か」(1988)「愛を弾く女」(1992)「とまどい」(1995)等のクロード・ソーテ(1924〜2000)。出演はパトリック・ドヴェール、ブリジット・フォッセー、ジャック・デュフィロ、イヴ・ロベール、クレール・モーリエ、アンドレ・ジュリアン、ダヴィド・ポントレモリ、ラウーフ・バン・ヤギラーヌ、アントワーヌ・ブーセイエ、エチエンヌ・シコ、ピエール・マゲロン、ジャン=クロード・ブーイヨー、サンドラ・モンテーギュ、フランク=オリヴィエ・ボネ、ドミニク・ザルディ他。ダニエル・ビアシーニの原案を基に、クロード・ソーテ、ダニエル・ビアシーニとジャン=ポール・トロクが脚本を執筆。撮影はジャン・ボフェティ。麻薬取引で逮捕されてアメリカの刑務所に収監されていたブリューノ・カルガーニ(ドヴェール)が釈放されて、フランスの父ルネ(ロベール)の元に戻って来る。警察の助けにより、生活をやり直そうとするブリューノだったが、ルネとは諍いが絶えなかった……。
フィリップ・サルドのスコアは、1984年に仏Milanレーベルが出したクロード・ソーテ監督とサルドのコラボレーション作品を集めたコンピレーションLP「Romy,
Montand, Piccoli, Patrick, Sautet, Sarde, Et Les Autres...」(Milan A
222)、1988年にMilanレーベルが出した同様のコンピレーションCD「Des Choses De La Vie à Quelques Jours Avec
Moi」(Milan CD CH 318)、および、2002年に仏Universalレーベルが出した同様のコンピレーションCD「Le Cinéma De
Claude Sautet」(Universal France 013 061-2)に、いずれも1曲のみ収録されていたが、このMusic
BoxのCDには全5曲/約10分を収録。
「Marche nocturne」「Un mauvais fils (Générique
début)」「Réconciliation」は、ロンドン交響楽団の首席トランペット奏者モーリス・マーフィの演奏によるメランコリックかつストイックなタッチの主題。「Convalescence
de René」は、サスペンスフルなタッチのストリングスにトランペット・ソロを加えた曲。「Direction la mer」は、アーチー・シェップのテナー・サックス、ジョン・シュアマンのバリトン・サックス、マーフィのトランペットによるメランコリックでドラマティックなタッチの曲。オーケストレーションと指揮はピーター・ナイト。
「(未公開)夜を殺した女(LE LIEU DU CRIME)」は、1986年製作のフランス映画(日本では劇場未公開でビデオ発売済/英語題名は「THE
SCENE OF CRIME」)。監督はアンドレ・テシネ。出演はカトリーヌ・ドヌーヴ、ダニエル・ダリュー、ヴァデック・スタンチャック、ニコラ・ジロディ、ジャン=クロード・アドラン、ジャン・ブースケ、ミシェル・グリモー、フィリップ・ランドゥールシ、クレール・ネブー、ジャック・ノロ、ヴィクトル・ラヌー、クリスティーヌ・パオリーニ他。脚本はアンドレ・テシネ、パスカル・ボニツェールとオリヴィエ・アサヤス。撮影はパスカル・マルティ。母のために花を摘みに森にやってきた13歳の少年トマ(ジロディ)は、刑務所から脱獄した囚人マルタン(スタンチャック)に捕まり、列車のチケットを買うための金を持ってこいと脅される。トマは親戚の人々から少しずつ金を集めて回る。彼の母リリ・ラヴネル(ドヌーヴ)は、夫だったモーリス(ラヌー)と最近離婚したばかりの自由奔放な女性で、ダンス・バーを経営していた。金を持って森に戻ったトマは、マルタンの仲間に襲われ首を絞められるが、マルタンがその仲間を殺してしまう……。
フィリップ・サルドのスコアは、1988年に仏Milanレーベルが出したテシネ監督とサルドのコラボレーション作品を集めたコンピレーションCD(Milan
Records CD CH 343)に約8分の組曲、2004年に仏Universalレーベルが出した同様のコンピレーションCD「Le Cinéma
D'André Téchiné」(Universal France 982 461-9)に1曲が収録されていたが、このMusic
BoxのCDには、全10曲/約12分半を収録。
「Le Lieu du crime (Générique)」は、ストリングス・セクションの室内楽風の演奏による躍動的でジェントルなタッチのメインタイトル。これ以降、同じ主題による同様の演奏のバリエーション「Thomas
et son grand-père」「Comme un mauvais rêve」「Pourquoi vous faites tout ça pour
moi」「Alice rejoint Martin」「Martin épargne Lili / Thomas et Alice」「Thomas
s'enfuit du pensionnat / Lili et Martin」「Allez-vous en !」「Épilogue」「Générique de
fin」が展開。演奏はパリ管弦楽団。オーケストレーションと指揮はビル・バイヤーズ。
(2025年10月)
Philippe Sarde
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