シャーロック・ホームズを演じた役者たち

Actors Who Played Sherlock Holmes


私は自分でホームズを主人公にした自主映画を製作・監督したこともあるホームズ・ファンである。シャーロック・ホームズは、架空の人物としてはこれまでに最も多くの映画が作られ、最も多くの俳優が演じたキャラクターだと言われている。古くはウィリアム・ジレット(1899年に舞台で初めてホームズを演じた)や、ジョン・バリモア(1922年のサイレント映画でホームズを演じた)、アーサー・ウォントナー(1930年にイギリスで最初のトーキー映画として作られた「眠れる枢機卿 The Sleeping Cardinal」でホームズを演じた)、レジナルド・オゥエン、クライヴ・ブルック、レイモンド・マッセィといった俳優がホームズ役者として有名だった。私も過去に作られたホームズ映画やTVシリーズをかなり見ているので、ホームズを演じた俳優たちについてまとめて紹介してみようと思う。

 


バシル・ラスボーン Basil RATHBONE

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欧米で最も有名なホームズ役者というと、何といってもバシル・ラスボーンなのだが、日本では彼の出演したホームズ映画は劇場公開されていないので、ラスボーンの名前は、エロール・フリン主演の「ロビン・フッドの冒険」等の悪役俳優としてしか知られていない。その風貌はシドニー・パジェットがストランド誌に描いた挿し絵から抜け出てきたような、まさしくホームズのイメージそのものであり(かつてグレアム・グリーンはラスボーンのことを「あの浅黒い、ナイフの刃のような顔と噛みつく口」と形容した)、Energeticで神経質気味な振る舞いやてきぱきとした口調等、これ以上完璧なホームズはないといったはまりようだった。ドクター・ワトソン役のナイジェル・ブルースも有名であり、この人はワトソンを必要以上に間抜けに演じたため、「ワトソン=のろまでドジ」という一般の(誤った)認識はこの人のせいで出来上がっていると言われている(ドイルの原作ではワトソンはここまでドジではない)。アメリカに住んでいた時に、ラスボーン=ブルース主演のホームズ映画が繰り返しTV放映されていたのをよく覚えている。

ラスボーンは、20世紀フォックスの大プロデューサーだったダリル・F・ザナックの抜擢により1939年製作の「バスカヴィル家の犬」に出演して以来、フォックスとユニヴァーサルが製作した以下の14本の映画でホームズを演じているが、残念ながらこの中でアーサー・コナン・ドイルの原作を基にしていたのは最初の2本だけで、残りはFBIやナチスドイツのスパイが出てきたりする全く独自の内容だった(一部ドイルの原作を参照しているものもある)。ただ、どの映画もラスボーンとブルースの名演が部分的なストーリーの弱さを充分に補完しており、エンターテインメントとしては第一級の作品となっていた。俳優としてのラスボーンは、このシリーズ以降他の役を演じるために何とかしてホームズのイメージを拭おうとしたが、結局失敗に終わり、B級ホラー映画ばかりに出演する不遇な晩年を過ごした。

<ラスボーン=ブルース主演ホームズ映画> (全て日本未公開)

バスカヴィル家の犬 The Hound of the Baskervilles (1939)

監督:シドニー・ランフィールド、共演:リチャード・グリーン、ウェンディ・バリー、ライオネル・アトウィル、ジョン・キャラディーン他。有名なドイルの原作を忠実に映画化した作品。この第一作ではヘンリー・バスカヴィル役のグリーンの方がラスボーンよりキャストのビリングが上になっている。

シャーロック・ホームズの冒険 The Adventures of Sherlock Holmes (1939)

監督:アルフレッド・ワーカー、共演:アイダ・ルピノ、アラン・マーシャル、テリー・キルバーン、ジョージ・ズッコ他。王冠の宝石を盗もうとする宿敵モリーアティ教授(ズッコ)の計画を阻止するホームズ。ドイルの原作をいくつか組み合わせたストーリーで、このフォックス製作の2作目までがヴィクトリア時代を背景にしたホームズ映画だった。

ホームズと恐怖の声 Sherlock Holmes and the Voice of Terror (1942)

監督:ジョン・ローリンズ、共演:イヴリン・アンカーズ、レジナルド・デニー、トーマス・ゴメツ、ヘンリー・ダニエル他。この作品以降はユニヴァーサルの製作となり、第二次大戦中という時代背景を反映した極めてプロパガンダ色の強い作風となる。この「恐怖の声」はナチスドイツのスパイ、フォン・ボルクとホームズとの対決を描いており、ドイル原作の「最後の挨拶」を一部下敷きにしている。

ホームズと秘密兵器 Sherlock Holmes and the Secret Weapon (1942)

監督:ロイ・ウィリアム・ニール、共演:ライオネル・アトウィル、カーレン・ヴァーン、ウィリアム・ポスト,Jr.他。またもナチスドイツの策略を阻止するホームズ。暗号が「踊る人形」になっているところのみドイルの原作を参照している。

ワシントンのホームズ Sherlock Holmes in Washington (1943)

監督:ロイ・ウィリアム・ニール、共演:マージョリー・ロード、ヘンリー・ダニエル、ジョージ・ズッコ他。ドイツのスパイが狙う情報を記録したマイクロフィルムを追ってアメリカの首都へと渡るホームズとワトソン。最もプロパガンダ色の強い作品(ラスボーン主演のホームズ映画は全てイギリスではなくアメリカ映画であることに注意)。

ホームズ絶対の危機 Sherlock Holmes Faces Death (1943)

監督:ロイ・ウィリアム・ニール、共演:ヒラリー・ブルック、ミルバーン・ストーン、アーサー・マーゲットソン他。格子模様のフロアの上で人間を駒にしてチェス・ゲームを再現し、謎を解くクライマックスが秀逸。

ホームズと蜘蛛女 The Spider Woman (1944)

監督:ロイ・ウィリアム・ニール、共演:ゲイル・ソンダーガード、デニス・ホーエイ、メアリー・ゴードン他。被害者に保険金をかけ、毒蜘蛛を使って自殺に追い込むという手口で連続殺人を犯す悪女と対決するホームズ。

緋色の爪 The Scarlet Claw (1944)

監督:ロイ・ウィリアム・ニール、共演:ジェラルド・ハマー、アーサー・ホール、マイルス・マンダー他。カナダの村を舞台に殺人事件を追うホームズ。シリーズ中のベスト作と評価されている。

死の真珠 The Pearl of Death (1944)

監督:ロイ・ウィリアム・ニール、共演:イヴリン・アンカース、マイルス・マンダー、ロンド・ハットン他。ボルジア家の黒真珠を盗んだ犯人が真珠をナポレオン像に隠したことから引き起こされる殺人事件。"クリーパー"と呼ばれる殺人鬼(ハットン)と対決するホームズ。

恐怖の館 The House of Fear (1945)

監督:ロイ・ウィリアム・ニール、共演:デニス・ホーエイ、オーブリー・マザー、ポール・キャヴァナー他。オレンジの種の入った封筒を受け取った者が次々と殺されていく謎を追うホームズ。ドイルの原作「5つのオレンジの種」を部分的に参照。

緑のドレスの女 The Woman in Green (1945)

監督:ロイ・ウィリアム・ニール、共演:ヒラリー・ブルック、ヘンリー・ダニエル、ポール・キャヴァナー他。右手の親指が切り落とされた死体の謎を追って、またしてもモリアーティの陰謀を阻止するホームズ。

アルジェへの追跡 Pursuit To Algiers (1945)

監督:ロイ・ウィリアム・ニール、共演:マージョリー・リオーダン、ロザリンド・イヴァン、マーティン・コスレック他。客船を舞台にラヴェニア王国の皇太子暗殺を阻止するホームズ。

恐怖の夜 Terror by Night (1946)

監督:ロイ・ウィリアム・ニール、共演:アラン・モーブレィ、デニス・ホーエイ、レニー・ゴッドフリー他。ロンドンからエジンバラへと向かう列車の中で「ローデシアの星」と呼ばれるダイヤを盗もうとするモラン大佐と対決するホームズ。

殺しの装い Dressed to Kill (1946)

監督:ロイ・ウィリアム・ニール、共演:パトリシア・モリソン、エドモンド・ブレオン、カール・ハーボード他。刑務所で製造されたオルゴールの奏でる曲には、英国銀行から盗まれた紙幣版の隠し場所の手がかりが織込まれていた。シリーズ最後の作品。

 


ピーター・クッシング Peter CUSHING

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TNCushing.jpg (5422 バイト)ピーター・クッシングは、フランケンシュタイン男爵役や吸血鬼ハンターのヴァン・ヘルシング教授役等のホラー映画で国際的に有名なイギリスの名優だが、実は本国イギリスではホームズ役者として最もよく知られている。彼が初めてホームズを演じたのは、ハマー・フィルムが1959年に製作した「(未公開)バスカヴィル家の犬 The Hound of the Baskervilles」で、この時の監督は「フランケンシュタインの逆襲」や「吸血鬼ドラキュラ」等で知られる名手テレンス・フィッシャーだった。ドクター・ワトソン役にはベテランのアンドレ・モレル、ヘンリー・バスカヴィル役にはクリストファー・リーが扮した。ミステリというより恐怖色の強い作品で、クッシングによるシャープでダイナミックなホームズの演技は非常に高く評価されたが、映画自体は興行的に成功しなかったため、ハマー・フィルムはこの作品以降ホームズ映画を製作していない。

その後、クッシングはウィリアム・スターリングが1968年に製作したイギリスBBC放送のTVシリーズ「アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ Sir Arthur Conan Doyle's Sherlock Holmes」でもホームズを演じている。これは以下の全16話から成る各50分枠の番組で、「バスカヴィル家の犬」の前後編も含むが、実際にダートムーアでロケが行われたのはこの時が初めてらしい。ナイジェル・ストックがドクター・ワトソンを、ウィリアム・ルーカスがレストレード警部を演じた。当初はジョージ・サンダース、オーソン・ウエルズ、ピーター・ユスティノフといった名優をゲストスターとしてキャストする計画だったが、予算上の問題でこれは実現しなかったという。後に(ジェレミー・ブレットがホームズ役だった)英グラナダ・テレビのシリーズで、ドクター・ワトソンを演じたエドワード・ハードウィックが、このシリーズの「ギリシア語通訳」にゲスト出演していることが興味深い。このシリーズは、(クッシングが主役だったせいか)やはりホラー色と暴力描写を強調した作風だったが、クッシングの名演により、その時点でこれを超えるTVのホームズ作品はないと考えられていた(残念ながら日本では放映されていない)。

<以下、2009年4月追記>

BBC製作の全16話のうち、以下の6話のみがイギリスでBBCよりDVD化されており、2004年にリリースされたDVD3枚組のボックスセット「The Sherlock Holmes Collection」にはこれら全てが収録されている。これらの各話については以下に簡単な解説を追記しておく。

「緋色の研究」 A Study in Scarlet
「ボスコム谷の謎」 The Boscombe Valley Mystery
「バスカヴィル家の犬(前・後編)」 The Hound of the Baskervilles
「四つの署名」 The Sign of Four
「青いガーネット」 The Blue Carbuncle

 

<「アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ」 BBC TV >

「第二のしみ」 The Second Stain

監督:ヘンリー・サフラン、脚本(Dramatization):ジェニファー・ステュアート、共演:ダニエル・マッセイ(トレロニー・ホープ)、セシル・パーカー(ベリンジャー卿)、ペネロープ・ホーナー(ヒルダ)、シェリー・ルンギ(エミリー)、ウィリアム・ルーカス(レストレード警部)他、放映日:1968/9/9

「踊る人形」 The Dancing Men

監督:クレジットなし(おそらくウィリアム・スターリング)、脚本:マイケル&モリー・ハードウィック、共演:マックスウェル・リード(ヒルトン・キュービット)、ジュディ・モートン(エルシー)、ブレンダ・ブルース(ソーンダース)、グレース・アーノルド(ハドソン夫人)他、放映日:1968/9/16

「緋色の研究」 A Study in Scarlet

監督:ヘンリー・サフラン、脚本:ヒュー・レオナード、撮影:チャールズ・パーノール/共演:ジョー・メリア(ジョーイ・デイリー)、ジョージ・A・クーパー(グレグソン警部)、ウィリアム・ルーカス(レストレード警部)、エディーナ・ローネィ(アリス・チャーペンティアー)、ラリー・クロス(ジェファーソン・ホープ)、クレイグ・ハンター(イノック・ドレッバー)、ドロシー・エドワーズ(チャーペンティアー夫人)、ラリー・ダン(アーサー・チャーペンティアー)、エドワード・ビショップ(ジョセフ・スタンガーソン)、マイケル・シーガル(ランス巡査)、ヘンリー・ケイ(警視)、グレース・アーノルド(ハドソン夫人)、トニー・マクラーレン(ウィギンズ)、マイケル・ゴールディー(マーチャー巡査)、ジョー・グラッドウィン(ホテルのポーター)、フレディー・アール(御者)/放映日:1968/9/23
<解説>
演出や脚本に際立ったものはないが、ミステリドラマとしてはうまくまとまっている。クッシングによるホームズの神経質そうな細かい仕草やエキセントリックな話し方等の演技が絶妙。ストックのワトソンも地味ながらいい味を出している。ジェファーソン・ホープ役のラリー・クロスも名演。当時のBBC製作の他テレビドラマと同様、ビデオ撮りの室内シーンとフィルム撮りの屋外シーンの組み合わせが、全てのエピソードを通して違和感がある。

「バスカヴィル家の犬(前後編)」 The Hound of the Baskervilles

監督:グレアム・エヴァンス、脚本:ヒュー・レオナード、撮影:ジョン・ベイカー/共演:ゲイリー・レイモンド(サー・ヘンリー・バスカヴィル)、ガブリエラ・リキュディ(ベリル・ステイプルトン)、フィリップ・ボンド(ステイプルトン)、ジェラルド・フラッド(サー・ヒューゴ・バスカヴィル)、バラード・バークリー(サー・チャールズ・バスカヴィル)、デヴィッド・リーランド(モーティマー医師)、ペネロープ・リー(ローラ・ライオンズ)、クリストファー・バージェス(バリモア)、ジューン・ワトソン(バリモア夫人)、デヴィッド・トレヴェナ(ホテルの支配人)、ボブ・ハリス(御者)、アラン・メドウズ(召使)、スーザン・レフトン(少女)、トニー・ロアー(囚人)、エドワード・ヒギンズ(宿屋の主人)/放映日:1968/9/30(前編)、1968/10/7(後編)
<解説>
原作の面白さがよく再現されている。冒頭でモーティマー医師が忘れたステッキを基にホームズとワトソンが推理するシーンはほぼ原作通り。ダートムーアでのロケ撮影がオーセンティック。ストーリーの大半にホームズが登場しないのがこのエピソードの弱点だが、その分ワトソン役のストックが頑張っている。ラストの終わり方が唐突なのが難点。

「ボスコム谷の謎」 The Boscombe Valley Mystery

監督:ヴィクターズ・リテリス、脚本:ブルース・ステュワート/共演:ジョン・テイト(ターナー)、ニック・テイト(ジェームズ・マッカーシー)、ジャック・ウールガー(モラン)、マイケル・ゴッドフリー(ラナー警部)、ヘザー・キッド(アリス)、ピーター・マッデン(ビル・マッカーシー)、ヴィクター・ブルックス(カウパー)、キャロライン・エリス(ペイシェンス)、ゲルタン・クラウバー(太った男)、ヴァーノン・ジョイナー(マトロック)、サリー・サンダース(ベラ)/放映日:1968/10/14
<解説>
演出、脚本ともに平凡なエピソード。ラストの犯人による回想がイラストによる紙芝居のような描写で、いかにも低予算な作り。「(TV)スペース1999」のレギュラーだったオーストラリア人のニック・テイトが容疑者を神妙に演じている。頑固な老人役のジョン・テイト(ニックの実父)は熱演している。

「ギリシア語通訳」 The Greek Interpreter

監督:デヴィッド・セール、脚本:ジョン・グールド、共演:ピーター・ウッドソープ(ウィルソン・ケンプ)、ナイジェル・テリー(ハロルド・ラティマー)、ロナルド・アダム(マイクロフト・ホームズ)、エドワード・ハードウィック(ダヴェンポート)、ジョージ・A・クーパー(グレグソン警部)他、放映日:1968/10/21

「海軍条約」 The Naval Treaty

監督:アントニー・キアリー、脚本:ジョン・グールド、共演:デニス・プライス(ホールドハースト卿)、コリン・レッドグレーヴ(パーシー・フェルプス)、ピーター・ボウルズ(ジョセフ・ハリソン)、ロジャー・マックスウェル(大使)他、放映日:1968/10/28

「ソア橋事件」 Thor Bridge

監督:アントニー・キアリー、脚本:ハリー・ムーア、共演:ジュリエット・ミルズ(グレース・ダンバー)、イサ・ミランダ(ドロレス)、グラント・テイラー(ニール・ギブソン)、ヘンリー・オスカー(ベイツ)他、放映日:1968/11/4

「マスグレイヴ家の儀式」 The Musgrave Ritual

監督:ヴィクター・リテリス、脚本:アレクサンダー・バロン、共演:ジョージア・ブラウン(レイチェル)、ブライアン・ジャクソン(ジョン・ブラントン)、ノーマン・ウールランド(レジナルド・マスグレイヴ)他、放映日:1968/11/11

「ブラック・ピーター」 Black Peter

監督:アントニー・キアリー、脚本:リチャード・ハリス、共演:ジェームズ・ケニー(ホプキンス警部)、イローナ・ロジャース(レイチェル)、ジョン・テイト(ピーター)、イローナ・フェレンス(ケイリー夫人)他、放映日:1968/11/18

「ウィステリア荘」 Wisteria Lodge

監督:ロジャー・ジェンキンズ、脚本:アレクサンダー・バロン、共演:デレック・フランシス(ジョン・スコット・エックルス)、カルロス・ピエール(ガルシア)、ウォルター・ゴテル(ヘンダーソン)、リチャード・ピアソン(ベインズ警部)他、放映日:1968/11/25

「ショスコム・オールド・プレイス」 Shoscombe Old Place

監督:ビル・ベイン、脚本:ドナルド・トッシュ、共演:ナイジェル・グリーン(ロバート・ノーバートン)、エドワード・ウッドワード(メイソン)、イヴォンヌ・ボール(ジョシー・ブートル)他、放映日:1968/12/2

「一人ぼっちの自転車乗り」 The Solitary Cyclist

監督:ヴィクター・リテリス、脚本:スタンレー・ミラー、共演:キャロル・ポッター(ヴァイオレット・スミス)、チャールズ・ティングウェル(カーラザーズ)、デヴィッド・バトラー(ウッドレイ)、ジリアン・ベイリー(ルーシー)他、放映日:1968/12/9

「四つの署名」 The Sign of Four

監督:ウィリアム・スターリング、脚本:マイケル&モリー・ハードウィック、撮影:エディー・ベスト/共演:アン・ベル(メアリー・モースタン)、ポール・デインマン(サディアス・ショルト/バーソロミュー・ショルト)、ジョン・ストラットン(アセルニー・ジョーンズ警部)、エイルサ・グレアム(フォレスター夫人)、ハワード・グーアニー(ジョナサン・スモール)、グレース・アーノルド(ハドソン夫人)、アーメッド・カーリル(ラル・ラオ)、シドニー・コナベア(マクマード)、トニー・マクラレン(ウィギンズ)、アナベラ・ジョンストン(モーデカイ・スミス夫人)、デヴィッド・S・ボリヴァー(モーデカイ・スミス)、アン・ウェイ(バーンストーン夫人)、ゼナ・ケラー(トンガ)、サラ・クリー(アリス)、ジョン・ダンバー(ジョン・ショルト)他/放映日:1968/12/16
<解説>
ワトソンの出番が比較的多く、ストックが嬉しそうに演じている。限られた予算のため、全体にプロダクションが貧相で、クライマックスのテームズ川での追跡シーンも迫力がない。サディアス・ショルト役のポール・デインマンのエキセントリックな演技がちょっと異様。ラストでホームズがワトソンに自分の心情を語る部分が良い。

「青いガーネット」 The Blue Carbuncle

監督:ビル・ベイン、脚本:スタンレー・ミラー、撮影:エディー・ベスト/共演:マッジ・ライアン(モーカー夫人)、ジェームズ・ベック(ジェームズ・ライダー)、リチャード・バトラー(ハロルド・ベイカー)、マイケル・ロビンス(ブレッキンリッジ)、フランク・ミドルマス(ピーターソン)、アーネスト・ハール(ウィンディゲイト)、ニール・フィツパトリック(ホーナー)、クライド・ポリット(巡査)、グレース・アーノルド(ハドソン夫人)、エドナ・ドーア(オークスショット夫人)、ダイアナ・チャペル(キャサリン・キューサック)/放映日:1968/12/23
<解説>
全体によく出来たエピソード。モーカー夫人役のマッジ・ライアンの高慢極まりない演技が見事。ホームズが鴨業者に賭けを持ちかけて必要な情報を得るシーンや、ラストで犯人のライダーを厳しく叱り付けるシーン、ワトソンに帽子を渡して持ち主を推理させるシーン、ホームズがヴァイオリンを弾くシーン、ワトソンがホームズにクリスマスプレゼント(パイプ煙草)をあげるシーン等、クッシングとストックの演技に見所が多い。

また、クッシングは晩年に「(未公開)死の仮面 The Masks of Death」という1984年製作のTV映画でも再度ホームズを演じており、やはり見事な演技を見せていた。この作品は、ハマー・フィルムのベテラン、ロイ・ワード・ベイカーが監督しており、名優ジョン・ミルズ(ワトソン役)、アン・バクスター(アイリーン・アドラー役)、レイ・ミランドアントン・ディフリングゴードン・ジャクソンといったベテランが脇を固める豪華キャストだった。脚本はノーマン・J・クリスプ、音楽はマルコム・ウィリアムソンが担当。この「死の仮面」を製作したイギリスのタイバーン・プロダクションは、クッシングのホームズ、ジョン・ミルズのワトソンによる「The Abbot's Cry」という作品も計画していた(監督は同じくロイ・ワード・ベイカーで、共演予定者はレオ・マッカーンパトリック・マクグーハン他)が、これは残念ながら実現しなかった。

更にクッシングは、魔術師フーディニを描いた「(未公開)偉大なるフーディニ The Great Houdini」という1976年製作のアメリカのTV映画でホームズの原作者、アーサー・コナン・ドイルを演じている。監督・脚本はメルヴィル・シェイヴルソン、共演はポール・マイケル・グレイザー(フーディニ)、ルース・ゴードンエイドリアン・バーボービル・ビクスビーウィルフレッド・ハイド=ホワイトモーリーン・オサリヴァンクライヴ・レヴィル他。クッシングはドイルの風貌と似ても似つかないが、この作品中では重要な役柄として登場するらしい。

ピーター・クッシングがホームズを演じた映画については、2001年にイギリスのThe Scarecrow Pressから出版された「An Actor, and a Rare One: Peter Cushing as Sherlock Homes」(Tony Earnshaw著)に詳しい。
クッシングは私が個人的に一番好きなホームズ役者である。

 


クリストファー・リー Christopher LEE

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クッシングと並ぶハマー・フィルムのスターで、ドラキュラ役者として有名なクリストファー・リーも、ホームズの役を何度か演じている。最初に演じたのは、テレンス・フィッシャー監督による1962年製作のドイツ・イタリア・イギリス・フランス合作映画「(未公開)ホームズと死の首輪 Sherlock Holmes und das Halsband des Todes」で、ここではソーリー・ウォルターズがワトソンを演じた。リーの演技はなかなか見事だったが、映画自体は平凡な出来だった(「恐怖の谷」を基にした脚本ということになっているが、全然違う話)。

その後、リーは1990、1991年に欧州で製作された2本のTV映画「新シャーロック・ホームズ/ホームズとプリマドンナ Sherlock Holmes and the Leading Lady」(監督:ピーター・サスディ)と「新シャーロック・ホームズ/ヴィクトリア瀑布の冒険 Sherlock Holmes and the Incident at Victoria Falls」(監督:ビル・コーコラン)でも初老のホームズを堂々と演じている(この2本はNHKでTV放映され、大木民夫氏がリーの声を吹替えた)。ワトソン役はTVシリーズ「おしゃれ(秘)探偵」で知られるパトリック・マクニーで、ジョス・アックランド、クロード・エイキンズ等のベテランがゲスト出演していた。

また、リーは、ビリー・ワイルダー監督の「シャーロック・ホームズの冒険」で、シャーロックの兄のマイクロフト・ホームズも演じており、彼はシャーロックとマイクロフトのホームズ兄弟とヘンリー・バスカヴィルの3人を演じた唯一の俳優らしい。ついでに言うと、リーは、007シリーズの原作者として有名なイアン・フレミングの親戚であり、フレミングは「ドクター・ノオ」の悪役ノオ博士を創作する際にリーをモデルにしたという(映画ではジョセフ・ワイズマンが演じた)。リーは007シリーズの「黄金銃を持つ男」で殺し屋スカラマンガを演じてる。

ラスボーン、クッシング、リーはいずれもホラー映画にも多数出演している役者で、しかも悪役が多く、ホームズ役者はとかくダークサイドに縁があるようである。私が製作した「Sherlock Holmes in L.A.」という映画でホームズを演じてくれたジョン・ボイル氏も、別のプロジェクトでドラキュラ伯爵を演じたりしていた。

 


ロバート・スティーブンス Robert STEPHENS

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ビリー・ワイルダーが監督した「シャーロック・ホームズの冒険 The Private Life of Sherlock Holmes(1970)」は、ドイルの原作の映画化ではなく、ワイルダーとI・A・L・ダイヤモンドによる全くオリジナルのストーリーであるが、いかにもワイルダー=ダイヤモンドらしいロマンティックで洒落た脚本だった(この脚本のマイケル&モリー・ハードウィック夫妻によるノヴェライズが「シャーロック・ホームズの優雅な生活」として創元推理文庫から出ている)。ベーカー街の見事なオープンセットや、美しい色彩の映像、ミクロス・ローザのドラマティックな音楽等全ての面において一流の作品である(因みに最初の方のバレエのシーンで作曲家のローザが指揮者として出演している)。

ここでホームズを演じたロバート・スティーブンスは、名探偵にしてはあまり鋭さを感じさせない随分とおっとりした雰囲気で、コリン・ブレイクリーが演じたドクター・ワトソンは更にコミカルなタッチだった。上述の通りクリストファー・リーがマイクロフトを演じているが、このスティーブンスのシャーロックと比べると、いかにも"Smarter Brother"という感じだった(原作ではマイクロフトはシャーロックより更に頭が良いことになっている)。ロバート・スティーブンスはイギリスの舞台俳優で、この映画の後はしばらくパっとしなかったが晩年になってシェークスピアの「リア王」の舞台で再評価されてオリヴィエ賞を受賞し、ケネス・ブラナー監督・主演の「ヘンリー五世」や、スピルバーグ監督の「太陽の帝国」等にも出演していた。1994年にはナイトの称号を授与されたが、1995年11月に64才で惜しくもこの世を去った。

ワイルダー=ダイヤモンドの脚本は、冒頭のベイカー街221Bでのホームズ=ワトソンの掛合い等、随所に愉快なタッチが見られる。

事件の調査の為にホームズたちが忍び込んだ空き家に1通の手紙が郵送されてくる。見ると、手紙はホームズ宛で、彼の兄マイクロフトからである。

ホームズ「(手紙を読む)親愛なるシャーロック。ワトソン君と共に直ちにクラブに来られたし。私の計算によれば君がこの手紙を受け取るのは午前11時40分だ。兄のマイクロフトより。(ワトソンに)今、何時だい?」
ワトソン「(時計を見て)11時43分だ」
ホームズ「君の時計は狂っている。直しておきたまえ」
ワトソン(何のためらいもなく時計を直す)

 


ニコル・ウィリアムソン Nicol WILLIAMSON

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シャーロッキアンのニコラス・メイヤーが自身の小説を基に脚本を書き、ハーバート・ロスが監督した「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦 The Seven-per-cent Solution(1976)」ではニコル・ウィリアムソンがホームズを演じた。彼はジョン・ブアマン監督の「エクスカリバー」で魔法使いのマーリンを演じているほか、TVの「刑事コロンボ」に犯人役で登場したこともある。ここではコカイン中毒に苦しむホームズをノイローゼ気味に演じており、ラストでは列車の上でのスウォードファイト・シーンもあるが、なぜかラスボーンやクッシングのような鋭さが感じられないホームズだった。

共演はロバート・デュバル(彼のドクター・ワトソンは非常に立派)、ローレンス・オリヴィエ(モリアーティ)、アラン・アーキン(フロイト博士)、ヴァネッサ・レッドグレーヴ他。音楽はジョン・アディスン

 


ロジャー・ムーア Roger MOORE

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ムーアは、イギリスが生んだ2大ヒーローであるジェームズ・ボンドとホームズの両方を演じたことがある唯一の俳優である。彼がホームズに扮したのは、「(未公開)ロジャー・ムーア/シャーロック・ホームズ・イン・ニューヨーク Sherlock Holmes in New York(1976)」というTV映画で、監督はベテランのボリス・セイガルだった。ホームズとワトソンがニューヨークに渡り、アイリーン・アドラーの危機を救うとともに、世界中の金塊を盗もうとするモリアーティの企てを阻止するというストーリーで、共演もパトリック・マクニー(ワトソン)、ジョン・ヒューストン(モリアーティ)、シャーロット・ランプリング(アイリーン・アドラー)と非常に豪華。

ムーアは最初この映画に乗り気ではなかったらしいが、脚本を読んで、それまでに出演したTVシリーズの「セイント」や2本のボンド映画よりセリフが多いことが気に入って引き受けたという。実に楽しそうに演じているし、ヒューストン扮するモリアーティと対峙する場面でも、全く引けを取らない風格を感じさせるのは大したものである(彼はショーン・コネリーより先にナイトの称号を授与されている)。音楽はリチャード・ロドニー・ベネット

 


クリストファー・プラマー Christopher PLUMMER

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イギリス人以外でホームズを見事に演じた役者はクリストファー・プラマーで、彼はカナダ人である。「サウンド・オブ・ミュージック」のフォン・トラップ大佐役で有名になった二枚目俳優だが、なんと彼はラスボーンのホームズ映画でワトソンを演じたナイジェル・ブルースの従兄弟であり、以前よりホームズを演じることを望んでいたという。最初にこの役を演じたのは、TV映画として1977年に製作された「(未公開)シルヴァー・ブレイズ Silver Blaze」で、監督はジョン・デイビーズ、脚本はジュリアン・ボンド、共演はソーリー・ウォルターズ(ワトソン)だった。

その後プラマーは、1979年製作の「(未公開)黒馬車の影 Murder by Decree」という映画でも再度ホームズを演じているが、これはドイルの原作とは全く無関係な、ホームズが切り裂きジャックと対決する話で、監督(ボブ・クラーク)の力量不足のために平凡な仕上がりとなっていた。共演はジェームズ・メイソン(ワトソン)、ドナルド・サザーランド、ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド、スーザン・クラーク、デヴィッド・ヘミングス、フランク・フィンレイ、ジョン・ギールガッド、アンソニー・クエイルと非常に豪華。

 


イアン・リチャードソン Ian RICHARDSON

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リチャードソンはロイヤル・シェークスピア劇団のベテラン俳優で、彼が出演したホームズ映画は、1983年にイギリスのメイプルトン・フィルムズにより13話のTVシリーズとして企画されたが、結果として「四つの署名」(監督:デズモンド・デイヴィス)と「バスカヴィル家の犬」(監督:ダグラス・ヒコックス)の2話しか製作されなかった。ワトソン役は1作目ではデヴィッド・ヒーリー、2作目ではドナルド・チャーチルが演じた。

リチャードソンは完璧なイギリス紳士といった風貌の名優で、この高貴な雰囲気にエキセントリックでエネルギッシュなタッチを加味した見事なホームズを演じていた。映画自体も原作のムードを忠実に再現しており、残りの11本が製作されなかったのは非常に残念である。

 


ジェレミー・ブレット Jeremy BRETT

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イギリスのグラナダ・テレビのプロデューサー、マイケル・コックスは「ホームズの事件簿をドイルの原作に忠実に映像化する」との野望を持っており、これを実現した1980年製作のTVシリーズは、現在までに映像化されたホームズ作品の中でも最も本格的なものと考えられている(日本ではNHK他で放映)。コックスはラスボーンのホームズに憧れる一方で、ナイジェル・ブルースのコミカルなワトソンには反発を覚え、更に原作を全く無視したユニヴァーサルのシリーズを非常に残念に感じていた。そこでラスボーンに匹敵するほどシドニー・パジェットの挿し絵にそっくりな役者を見つけ、原作に忠実なワトソンを配役することを考え、ジェレミー・ブレットをホームズ役、デヴィッド・バークをワトソン役に抜擢した。

ジェレミー・ブレットは、オードリー・ヘップバーン主演の「マイ・フェア・レディ」等にも出演しているイギリスのベテラン俳優だが、このTVシリーズの主役に抜擢されて以来10年間にわたる撮影期間中、最愛の妻の病死や、彼自身の健康上の問題等に苦しみながらも、非常にオーセンティックなホームズを見事に演じ続けた。シリーズの後半、若干太り気味になったのは心臓病の治療のためにジギタリス等の薬を服用していたためだという(それを知って見ると痛々しい)。ブレットは1995年9月に心臓発作でこの世を去った。

<「シャーロック・ホームズの冒険」 Granada TV >

(メイン・キャスト、主要なゲスト・スター、及びNHK放映時の声の吹替)

ジェレミー・ブレット(シャーロック・ホームズ) 露口 茂
デヴィッド・バーク(ドクター・ワトソン) 長門裕之 (第1〜13話)
エドワード・ハードウィック(ドクター・ワトソン) 福田豊士 (第14話〜)

1話「ボヘミアの醜聞」 A Scandal in Bohemia

ゲイル・ハニカット(アイリーン・アドラー、NHKはなぜかエレーナと訳している) 三林京子
ウォルフ・カーラー(ボヘミア国王) 内藤武敏

6話「まだらの紐」 The Speckled Band

ジェレミー・ケンプ(グリムスビー・ロイロット医師) 小松方正

8話「ぶなの木屋敷の怪」 The Copper Beeches

ナターシャ・リチャードソン(バイオレット・ハンター) 榊原るみ
ジョス・アックランド(ジョフロ・ルーキャッスル) 田中明夫

9話「ギリシャ語通訳」 The Greek Interpreter

チャールズ・グレイ(マイクロフト・ホームズ)松村達雄 + 24話、38話、40話(吹替えは久米 明)

11話「入院患者」 The Resident Patient

ニコラス・クレイ(パーシー・トレベリアン医師) 国広富之

12話「赤髪連盟」 The Red-Headed League、及び
13話「最後の事件」 The Final Problem

エリック・ポーター(モリアーティ教授) 南原宏治

14話「空き家の怪事件」 The Empty House

パトリック・アレン(セバスチャン・モラン大佐) 坂口芳貞

17話「第二の血痕」 The Second Stain

スチュアート・ウィルソン(トレローニ・ホープ) 有川 博
ハリー・アンドリュース(ベリンジャー卿) 鈴木瑞穂

22話「銀星号事件」 Silver Blaze

ピーター・バークワース(ロス大佐) 田中明夫

23話「ウィステリア荘」 Wisteria Lodge

フレディ・ジョーンズ(ベインズ警部) 名古屋 章
キカ・マーカム(ミス・バーネット) 二宮さよ子

25話「四人の署名」 The Sign of Four

ジョン・ソウ(スモール) 川合伸旺(ソウはTVのモース警視役で有名)
ロナルド・レイシー(サディアス・ショルト) 樋浦 勉

27話「レディー・フランシスの失跡」 The Disappearance of Lady Frances Carfax

マイケル・ジェイストン(ラフトン伯爵) 久富惟晴

29話「ボスコム渓谷の惨劇」 The Boscombe Valley Mystery

ピーター・ヴォーン(ミスター・ターナー) 金井 大

33話「犯人は二人」 The Master Blackmailer

ロバート・ハーディ(チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン) 田中明夫

36話「三破風館」 The Three Gables

クローディーヌ・オージェ(イザドラ・クライン) 田島令子

38話「金縁の鼻眼鏡」 The Golden Pince-Nez

フランク・フィンレイ(コーラム教授) 宮部昭夫

 


ラジオドラマ/オーディオドラマのホームズ

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ラジオドラマでも多くの俳優がホームズを演じているが、やはりバシル・ラスボーンが有名であり、彼によるドイル原作の朗読を収録したLPやカセットテープもリリースされていた。

イギリス演劇界の重鎮、サー・ジョン・ギールガッドがホームズ、サー・ラルフ・リチャードソンがワトソンを演じたラジオドラマもあり、さすがに名演である。しかもモリアーティをオーソン・ウェルズが演じており、「最後の事件」でのベイカー街221Bでのホームズとモリアーティの対面シーンは、ギールガッドとウェルズの掛合いがすごい緊張感(これもカセットテープが出ていた)。

日本でも、ベテランの声優によるオーディオドラマがカセットでリリースされており、黒沢 良(ゲイリー・クーパーやケイリー・グラントの吹替で有名)がホームズ、羽佐間道夫(ディーン・マーティンやロイ・シャイダーの吹替)がワトソンという、なかなか見事なキャスティングのバージョンもあった。共演者も、千葉耕市(クリストファー・リー等ホラー系吹替の第一人者)がモリアーティ、石田太郎(「新・刑事コロンボ」のピーター・フォークの吹替)がボヘミア国王、鈴木弘子(ジャクリーン・ビセットやキャンディス・バーゲンの吹替)がアイリーン・アドラー、家弓家正(フランク・シナトラ等の吹替)がマイクロフト・ホームズといった豪華なキャストだった。

(2000年1月)
(2002年6月/2009年4月「Peter Cushing」部分追記)

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