ミシェル・ヴァイヨン

Michel Vaillant


■ストーリー:

ル・マン24時間レース。
夜明けのサーキットを切り裂く二つの閃光。赤の“リーダー”13番と青の“ヴァイヨン”10番が熾烈なデッドヒートを繰り広げている。
見事なコーナーワークを切り抜けた10番のミシェル・ヴァイヨンが、突如先行する敵チーム“リーダー”の車体後部に激突した。徹夜明けの観客にどよめきが走る。高まるサーキットの興奮を尻目に、狂気を帯びた接触を繰り返す赤と青の二台のマシン。ボディから剥き出しになった配管からは高温のオイルが噴き出している。最高潮に達する観客たちの熱狂のさなかで、青が赤めがけて突っ込む。コントロールを失ってふわりと舞い上がったヴァイヨンのマシンは、中空で一回転し、そのままコースサイドに墜落。爆発の大音響とともに炎が燃え立ち、ル・マンの夜明けを焦がす・・・。ミシェル・ヴァイヨンは死んだ。

  

激しい動悸に襲われ、女は目を覚ます。“夢”とは思えぬ生々しい死の手触り。ミシェルが死ぬ・・・しかし懸念とは裏腹に、そのころミシェルは世界を走り抜けていた。

カナダ、冬、ノーザン・ディグリー・ラリー。氷結した湖上を疾走するミシェル・ヴァイヨンのラリー・カー。塩分を含む湖水はマシンの熱気に氷解し、湖面を切り裂く亀裂がミシェルたちを飲み込もうとしている。親友スティーヴのマシンとともに、宿敵であるリーダー・チーム、クレイマーのマシンを左右からブロック、スピンして立ち往生する彼を抜き去り、難なく優勝を飾るミシェル。憎悪に燃えるクレイマー。

アイスランド・ラリー。ミシェルの弟分、ヴァイヨン・チームのデヴィッドがハンドルを握る。めでたくチームの出場が決まったル・マン24時間レースで走ることを最も熱望していた男だ。しかしその夢は醜く歪められる。エンジンが突如変調しはじめ、減速するデヴィッドのマシン。その横を追い去るクレイマーのマシンを見たとき、車が細工されていたことに気づく。マシンは橋脚に激突し、崖を転げ落ちる。横転した車から何とか這い出したものの、追いついたミシェルたちの前で車が爆発、デヴィッドは消えた。

ル・マン24時間レースのレセプション・パーティ。あるニュースに会場がにわかに沸き立つ。“ヴァイヨン”の宿敵“リーダー”が、監督が死んで以来5年ぶりにル・マン出場を決めたのである。積年の恨みを晴らすため、父の仇である憎きヴァイヨン一族への復讐を誓い、娘のルース率いる“リーダー”が再びサーキットに戻ってきたのだ。

そして時同じく、もう一人、女がル・マンを目指していた。夫の死を見届けられなかった亡きデヴィッドの妻ジュリーがヴァイヨン家の扉を叩く。

走るために生まれたきた男。勝つために生まれてきた女。それぞれの心はすでに、遥かなる戦場に誘われていた・・・。

 


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