イースト/ウエスト 遥かなる祖国 EST - OUEST
作曲:パトリック・ドイル Composed by PATRICK DOYLE 指揮:ジェームズ・シャーマン 演奏:ブルガリア交響楽団、ブルガリア混声合唱団 |
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ピアノ: エマニュエル・アクス
Piano by EMANUEL AX
(仏Sony Classical/SK 64429)
1999年製作のフランス=ブルガリア=ロシア=スペイン合作映画。監督は「インドシナ」「フランスの女」等のレジス・ヴァルニエ。出演はサンドリヌ・ボネール、オレグ・メンシコフ、カトリーヌ・ドヌーヴ、セルゲイ・ボドロフ,Jr.、ルーベン・チュピエロ、エルワン・ベイノー他。脚本はヴァルニエと、セルゲイ・ボドロフ、ルイ・ガルデル(「フォート・サガン」の原作者)、ルスタム・イブラギムベコフが担当。
1946年の旧ソビエト連邦を舞台に、フランスで暮らしていたロシア移民のアレクセイ(メンシコフ)が、スターリンの呼びかけに応え、フランス人の妻マリー(ボネール)と息子を連れて祖国に帰還したことから彼らに降りかかる悲劇を描く。マリーはスパイ容疑をかけられて当局から拷問を受け、家族はキエフの労働キャンプに送り込まれる。祖国フランスへの帰還を望むマリーは、西側への脱出を夢見る隣人のロシア人サーチャ(ボロドフ,Jr.)に強く共感を覚える。主演のサンドリヌ・ボネールはジャック・リヴェット監督やクロード・シャブロル監督作品に出演しているフランスの女優で、オレグ・メンシコフはニキータ・ミカリコフ監督作品の主演俳優である。ヴァルニエ監督の前作「インドシナ」に出演したカトリーヌ・ドヌーヴが、この映画でキエフを訪れるフランス人女優の役を演じているが、これは彼女のために監督が特別に用意した役らしい。
音楽を担当したパトリック・ドイルはケネス・ブラナー監督とのコラボレーション(「ヘンリー五世」「愛と死の間で」「から騒ぎ」「フランケンシュタイン」「ハムレット」、ラジオドラマの「ハムレット」「リア王」等)が有名で、どのスコアも素晴らしいが、ブラナー以外にもブライアン・デ・パルマ(「カリートの道」)、マイク・ニューウェル(「フェイク」)、アン・リー(「いつか晴れた日に」)といった監督と組んでおり、更に「(未公開)冒険の島/海賊メリックをやっつけろ!」「白馬の伝説」「ニードフル・シングス」「大いなる野望」「セクシャル・ウーマン」「リトル・プリンセス 小公女」「くちづけはタンゴの後で」等、マイナーな作品も含めて様々なジャンルの映画を担当しているベテランである。
この映画のレジス・ヴァルニエ監督とは「インドシナ」「フランスの女」で組んでおり、どちらも非常に優れたスコアだったが、この「イースト/ウエスト 遥かなる祖国」にも非常に力強いリッチなシンフォニック・スコアを提供している。
スラブ音楽のフレーバーを加えた荘厳でドラマティックなオーケストラル・スコアで、ドイルらしいダイナミックな表現が随所に見られる傑作。東側からの脱出を描く部分の緊迫した音楽も効果的。エマニュエル・アクスのピアノが「The River」「The Race」「The Cliffs」「The Black Sea」の4曲に登場するが、いずれもオーケストラとの組合わせによる短いピアノ協奏曲になっており、特に「The Black Sea」でのダイナミックで壮大な響きが素晴らしい。ラストの「The Land」はメインテーマのリプライズで、アナトリィ・フォカノフの独唱に合唱団とオーケストラが加わった極めて感動的なフィナーレとなっている。
ケネス・ブラナーの一連の作品でCommerciallyにメジャーになったドイルだが、ヴァルニエ監督とのArtisticなコラボレーションは今後の彼のキャリアにおいても重要な要素となるだろう。
('99年11月)
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