警部 FLIC OU VOYOU

(未公開)ジャン・ポール・ベルモンドの道化師/ドロボー・ピエロ LE GUIGNOLO

作曲:フィリップ・サルド
Composed by PHILIPPE SARDE

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指揮:ハリー・ラビノウィッツ(警部)、ピーター・ナイト(道化師)
Conducted by HARRY RABNOWITZ(FLIC OU VOYOU)、PETER KNIGHT(LE GUIGNOLO)

演奏:ガブリエリ弦楽四重奏団(警部)、ロンドン交響楽団(道化師)
Performed by the Gabrielli Quartet(FLIC OU VOYOU)、the London Symphony Orchestra(LE GUIGNOLO)

(仏EmArcy / 159 899-2)


フィリップ・サルドが、ジャン=ポール・ベルモンド主演/ジョルジュ・ロートネル監督による2作品に書いた傑作フィルムスコアのカップリングで、過去にLPでリリースされていたサントラ盤の待望のCD化である。

「警部」は1978年製作のフランス映画(日本公開は1980年)で、共演はマリー・ラフォレ、ジョルジュ・ジェレ、ジャン=フランソワ・バルメ、クロード・ブロッセ、トニー・ケンドール、ミシェル・ボーヌ、カトリーヌ・ラシェン、ジュリエット・ミルズ、ヴェナンチーノ・ヴェナンチーニ、シャルル・ジェラール、ミシェル・ガラブリュ他。ミシェル・グリゾアの原作「L'Inspecteur de la Mer」を基にジャン・エルマンとミシェル・オーディアールが脚本を執筆。撮影はアンリ・ドカエ。

原題名の "Flic ou voyou" は「刑事か泥棒か」という意味だが、ベルモンド扮するスタン・ボロウィッツはこの二面性を持つ男で、フィリップ・サルドの音楽もこのキャラクターの二面性を、バロック調のクラシカルな要素とクールなジャズの要素の組合わせにより見事に表現している。冒頭の「Flic ou voyou」や中盤の「Tout nu」「Pour Chet」、ラストの「Stan」は正にこのバロック+ジャズの融合によるシャープなスコアで、サルドのセンスの良さが光るゴキゲンな音楽。トランペット、ギター、ベース等のソロをフィーチャーしたジェントルなタッチのジャズ「Tendresse trompette」「Tendresse basse et guitare」や、より複雑でアブストラクトなジャズ「Le premier meurtre」「Filature」「Variation suspense」等も良い。演奏もバロック調の部分はガブリエリ弦楽四重奏団、ジャズの部分はチェット・ベイカー(トランペット)、ヒューバート・ロウズ(フルート)、ロン・カーター(ベース)、ラリー・コリエル(ギター)、ビリー・コブハム(ドラムス)、モーリス・ヴァンデール(チェンバロ)、ユベール・ロスタン(クラリネット)と超一流。とにかく抜群にカッコいい。

「(未公開)ジャン=ポール・ベルモンドの道化師/ドロボー・ピエロ」(1980年製作)は、監督のロートネル/脚本のオーディアール/主演のベルモンドが前作「警部」の続編として企画したもの(但し同じキャラクターではない)で、イタリアのヴェニスを舞台にしたアクション・コメディ。共演はマリー・ラフォレ(前作と同様ベルモンドの娘の役)、ジョルジュ・ジェレ、カーラ・ロマネリ、ピエール・ヴェルニエ、パオロ・ボナチェッリ、ミシェル・ボーヌ、トニー・ケンドール、アンリ・ギーベ、ミシェル・ガラブリュ他。

サルドの音楽は、ロンドン・シンフォニーによる繊細でドラマティックなオーケストラサウンドに、トゥーツ・シールマンスの物悲しいタッチのハーモニカがかぶさるメインテーマ「Guignolo romantique」が実に美しい。この曲や、同じテーマのバリエーションである「Mystere sur le grand canal」「Venise」等を聴くと、とてもコメディに付けた音楽とは思えない。サルドのベストのパターンを行く上質なスコア。「Guignolo vaudeville」「Calecon et haut-de-forme」「Pour Jean-Paul」では、オッフェンバックの軽快な「パリの生活」を引用して、ベルモンド扮する「道化師」の陽気なタッチを表現している。

フィリップ・サルドとジョルジュ・ロートネル監督は、上記2作品の他に「ラ・メゾン/惨劇の館」(1988)「ソフィー・マルソー/恋にくちづけ」(1984)「チェイサー」(1978)「愛人関係」(1973)等でも組んでいるが、音楽的にはこのCDに収録された2作品が抜群に良いと思う。
(2000年12月)

Philippe Sarde

フレンチ・シネマ・ミュージック・コレクション パート1(リリース情報)

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