ウォーターシップダウンのうさぎたち WATERSHIP DOWN (1978)

(未公開/TV)ウォーターシップダウンのうさぎたち WATERSHIP DOWN (2000)


ウォーターシップダウンのうさぎたち WATERSHIP DOWN

作曲:アンジェラ・モーレイ
Composed by ANGELA MORLEY

作曲(タイトル音楽・プロローグ):マルコム・ウィリアムソン
Title Music and Prologue Composed by MALCOLM WILLIAMSON

作曲(主題歌):マイク・バット
Song "Bright Eyes" Composed by MIKE BATT

指揮:マーカス・ドッズ
Conducted by MARCUS DODS

(米PEG / PEG022 A 28896) 1998

1978年製作のイギリス製アニメーション映画(日本公開は1980年7月)。リチャード・アダムズの原作小説を基にマーティン・ローゼンが製作・監督・脚本を手がけた。声の出演はジョン・ハート、リチャード・ブライアーズ、マイケル・グラハム・コックス、ジョン・ベネット、ラルフ・リチャードソン、サイモン・キャデル、テレンス・リグビイ、ロイ・キニア、リチャード・オキャラハン、デンホルム・エリオット、ゼロ・モステル、ハリー・アンドリュース、ハンナ・ゴードン、ナイジェル・ホーソーン、ジョス・アックランド、マイケル・ホーダーン他。

養兎場から逃げ出した野うさぎの家族が、安住の地"ウォーターシップダウン"を求めて旅立ち、数々の危機を乗り越えて行く・・。原作者のアダムスの第二次大戦中の経験をベースにしたシリアスなアニメーション映画で、うさぎの声もハート、リチャードソン、キニア、エリオット、アンドリュース、ホーソーン、アックランド、ホーダーンといったイギリス演劇界のベテラン俳優たちが演じている。

音楽は当初マルコム・ウィリアムソンが起用され、プロローグとメインテーマを作曲したが、別のプロジェクトのために彼は降板せざるを得なくなり、スコアの指揮を担当していたマーカス・ドッズが、以前に「Captain Nemo and the Underwater City」という映画で組んだことのある作曲家のアンジェラ・モーレイを急遽呼び寄せた。モーレイは時間を節約するためにローレンス・アシュモアを雇ってウィリアムソンの作曲したプロローグをオーケストレートさせ、同時にメインタイトルを自らオーケストレートすると共に、その他の劇伴音楽の全てを作曲した。

冒頭のウィリアムソンによる「Prologue」は、サー・マイケル・ホーダンによるナレーションに併せて様々な表情を見せるカラフルなオーケストラ音楽で、そのまま切れ目なくパストラルで優雅な「Main Title」へと続く。この曲以降はモーレイによるスコアだが、「Crossing the River and Onward」の後半や「Climbing the Down」「Hazel's Plan」等に登場するウィリアム・ウォルトン風の格調高く勇壮なマーチと、「Kehaar's Theme」「The End Title」でのケハー(ゼロ・モステルが声を演じるカモメのキャラクター)のテーマが全体のハイライトであり、特に後者のサックスをフィーチャーしたコミカルかつ優雅で美しいワルツが素晴らしい。メランコリックなタッチの「Violet's Gone」や、ダークでダイナミックな「Fiver's Vision」「Through the Woods」「The Escape from Efraf」「Final Struggle and Triumph」等のアンダースコアも秀逸。アニメーション映画に書かれたフィルムスコアとしては最も上質で高度な作品の1つだろう。

尚、主題歌の「Bright Eyes」マイク・バットが作曲しており、アート・ガーファンクルが歌っている。

アンジェラ・モーレイは 元はウォルター・ストットという男性で、手がけた作品もデビュー作の「(未公開)Will Any Gentleman?」(1953)「ネモ船長と海底都市」(1969)「鏡の国の戦争」(1970)「 八点鐘が鳴るとき」(1971)等はストット名でクレジットされている。その後性転換手術を受けてアンジェラ・モーレイとなり、アラン・J・ラーナー & フレデリック・ロウによるミュージカル「星の王子さま」(1974)や、シャーマン兄弟によるミュージカル「シンデレラ」(1976)の編曲と劇伴音楽を手がけ、この2作品ではアカデミー賞の編曲賞にノミネートされた(特に「シンデレラ」での華麗なワルツが素晴らしい)。その後、TVシリーズの「ダラス」(1978)「ダイナスティー」(1981)等の音楽を担当している。

マルコム・ウィリアムソンはオーストラリア出身の作曲家で、「吸血鬼ドラキュラの花嫁(The Brides of Dracula)」(1960)「(未公開)Crescendo」(1970)「(未公開)The Horror of Frankenstein」(1970)といったハマー・フィルムのホラー映画や、クリストファー・リー、ピーター・クッシング主演のサスペンス「(未公開)Nothing But the Night 」(1972)、クッシングがシャーロック・ホームズを演じた「(未公開/TV)The Masks of Death」(1984)等の音楽を手がけている。
(2001年2月)

Angela Morley

Malcolm Williamson

Mike Batt

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(未公開/TV)ウォーターシップダウンのうさぎたち WATERSHIP DOWN

作曲・指揮:マイク・バット
Composed and Conducted by MIKE BATT

演奏:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the Royal Philharmonic Orchestra

(英Polydor / 549225ー2) 2000

安住の地"ウォーターシップダウン"を求めて旅するうさぎたちを描いたリチャード・アダムスの原作をベースに、2000年に製作されたカナダ=イギリス合作のTVシリーズ。製作総指揮には1978年の劇場映画版の監督であるマーティン・ローゼンも参加している。監督はトロイ・サリヴァン、声の出演はイアン・ショー、アンドリュー・ファルヴェイ、スティーブン・マンガン、スー・エリオット・ニコルス、エリオット・ヘンダーソン=ボイル、フィル・ジュピタス、スティーブン・フライ、リック・メイオール、ジョン・ハート、リチャード・ブライアーズ他。

ここで音楽を担当しているイギリス人のマイク・バットは1978年の劇場映画版の主題歌「Bright Eyes」も作曲しているが、このCDのライナーノーツでの彼のコメントによると、もともと映画版のアンダースコアを担当したかったのに起用されず、3曲の歌を提供しただけだったらしい(しかもこの3曲中で実際に映画で使用されたのは「Bright Eyes」のみ)。その後20年を経て、このTVシリーズによるリメイクで彼は遂にアンダースコアを担当することになり、上記3曲の歌の内の1つ「Losing Your Way in the Rain」も、アート・ガーファンクルのヴォーカルにより劇中で使用されることになった。

ここでのロイヤル・フィルの演奏によるオーケストラルスコアは独立した交響組曲としても成立するように作曲されているが、このアルバムではバット自身の作曲による「Bright Eyes」「Thank You, Stars」「Losing Your Way in the Rain」「The View from a Hill」「Winter Song」といった歌が間に挿入される形で構成されている(但し、これらの挿入歌はどれも似たような印象である)。この内、「The View from a Hill」はバット自身が歌っているが、年齢(1950年生れ)の割には若々しい爽やかな歌声に驚かされる。

オーケストラルスコアでは冒頭の「Watership Down: The Beginning (Overture)」が格調高いマーチ風の序曲で、そのストイックなタッチが素晴らしい。「On Watership Down」は牧歌的で優雅な音楽だが、この曲はバットが1976年に映画版用に作曲したもので、その際には使用されず今回やっと日の目を見たらしく、彼自身非常に思い入れのある曲だという。「Military Theme and Development」は曲名通りミリタリスティックで勇壮な音楽、「Chase Adventure from Watership Down」はダイナミックなアクションスコア、「Winter on Watership Down」は舞踏音楽風の躍動的な音楽、「A Kind of Dream」は幻想的なコーラス曲と、全体に非常にソリッドな正統派ドラマティック・アンダースコアを展開している。

このサントラCDは全体で約68分(全15曲、内挿入歌が6曲)も収録されており、特にオーケストラによるアンダースコア部分は非常に聴き応えがある。現在までのマイク・バットのフィルムスコア中ではベストの1つだろう。
(2001年2月)

Mike Batt

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