リオ・ロボ RIO LOBO
作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH
(ベルギーPrometheus / PCR 511)
「暗黒街の顔役」(1932)「ヒズ・ガール・フライデー」(1940)「ヨーク軍曹」(1941)「三つ数えろ」(1946)「赤い河」(1948)「果てしなき蒼空」(1952)「紳士は金髪がお好き」(1953)「ピラミッド」(1955)「ハタリ!」(1961)等の名匠ハワード・ホークスが1970年に製作・監督を手がけた西部劇で、彼の遺作。出演はジョン・ウェイン、ホルヘ・リヴェロ、クリストファー・ミッチャム、ジェニファー・オニール、ジャック・イーラム、ヴィクター・フレンチ、スザンナ・ドサマンテス、シェリー・ランシング、デヴィッド・ハドルストン、マイク・ヘンリー、ビル・ウィリアムス、ジム・デイヴィス、ディーン・スミス、ロバート・ドナー、ジョージ・プリンプトン他。バートン・ウォールの原作を基にリー・ブラケットとウォールが脚本を執筆。撮影はウィリアム・クローシア。
ホークス監督=ジョン・ウェイン主演による傑作西部劇「リオ・ブラボー」(1959)「エル・ドラド」(1966)と基本的に同じ状況設定による作品で、これら2作とこの「リオ・ロボ」は明確な続編やシリーズ物という位置づけではないが、一般的には“三部作”と考えられている。主要な登場人物の設定も主役のウェインと昔からの知り合いの友人役(「リオ・ブラボー」でのディーン・マーティン、「エル・ドラド」でのロバート・ミッチャム、「リオ・ロボ」でのホルヘ・リヴェロ)、彼らを慕う若者役(同じく順にリッキー・ネルソン、ジェームズ・カーン、クリストファー・ミッチャム)、陽気な老人役(ウォルター・ブレナン、アーサー・ハニカット、ジャック・イーラム)、勝ち気な若い女性役(アンジー・ディッキンソン、ミシェル・ケリー/シャーレーン・ホルト、ジェニファー・オニール)という共通のパターンになっており、これら定番のキャラクターたちが劇中で絶妙の掛け合いを繰り広げ、実に楽しい。この「リオ・ロボ」は、南北戦争末期に北軍のコード・マクナリー大佐(ウェイン)の護衛する金塊輸送列車を南軍のコルドナ大尉(リヴェロ)とタスカローラ軍曹(ミッチャム)が襲撃するシーンから始まり、戦後再会して仲良くなった3人が、列車襲撃事件での北軍内部の裏切者を一緒に探すというストーリー。カラフルなキャラクター描写、豪快なユーモア、激しいアクション描写と、ベテランのホークス監督による職人芸を堪能できる傑作である(個人的にはロバート・ミッチャムが好きなので、三部作中の2作目「エル・ドラド」が特にお気に入りである)。
ところで、この映画の中で顔に傷をつけられる薄幸な女性アメリータ役を演じているシェリー・ランシング(セミヌードまで披露している)は、この映画ともう1作品しか女優としてのキャリアはなく、その後映画製作側の仕事に転職し、コロンビアの製作担当副社長、20世紀フォックスの社長を歴任し、自らスタンリー・ジャフィーと共同で独立系の映画会社を設立した後、最後にはパラマウントの会長にまで昇りつめたキャリアウーマンで、エイドリアン・ライン監督の「危険な情事」「幸福の条件」、リドリー・スコット監督の「ブラック・レイン」、ジョナサン・キャプラン監督の「告発の行方」等のヒット作をプロデュースしている。
「リオ・ブラボー」の音楽はディミトリ・ティオムキン、「エル・ドラド」はネルソン・リドルで、いずれも古典的な西部劇音楽だったが、この「リオ・ロボ」はジェリー・ゴールドスミスが担当している。冒頭、暗闇の中でギターを爪弾く手のクローズアップによりメインテーマが演奏されるオープニングタイトルは、この手の豪快な西部劇にしては異色だが、ゴールドスミスの乾いたタッチのメロディが実にかっこ良く、非常に印象的なメインタイトルとなっている。この「Main Title」で演奏される主題は、「Captured」や「A Good Teacher / Quiet Town / Cantina」の中盤でも登場する。「A Good Teacher」では、明るく豪快で、よりトラディッショナルなアメリカンウエスタン調の第二主題が登場するが、「Scar / Hang on a Minute / Finale」の最後のフィナーレでもこの主題により全体が締めくくられる。「Plans / The Raid」の後半のダイナミックなアクション音楽や、「The Trade / Retribution / End Title」でのゴールドスミスらしいサスペンスフルなスコアも良い。
このアルバムはベルギーのPrometheusレーベルがこのスコアのサントラ音源を初めてCD化したもので、3000枚限定プレスのLimited
Editionとなっている。UCLAのミュージックライブラリーに保管されていたテープがモノラルだったため、全10曲中の5曲はモノラル録音だが、ゴールドスミス本人が個人的に保管していたテープによるステレオ録音の曲も5曲収録されている。ゴールドスミスのウエスタン音楽中でも重要な作品の1つだろう。
(2001年7月)
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