ミリィ/少年は空を飛んだ   THE BOY WHO COULD FLY

作曲・指揮:ブルース・ブロートン
Composed and Conducted by BRUCE BROUGHTON

(米Percepto Records / Percept 007)

★TOWER.JPで購入(Intrada盤) 


「スター・ファイター」(1984)「わんぱくデニス」(1993)「ミスター・クレイジー」(1996)等のニック・キャッスルが監督・脚本を担当したファンタジー(1985年製作)。出演はルーシー・ディーキンズ、ジェイ・アンダーウッド、ボニー・ベデリア、フレッド・サヴェージ、コリーン・デューハースト、フレッド・グウィン、ルイーズ・フレッチャー他。撮影はスティーヴン・ポスターとアダム・ホレンダー。SFXはリチャード・エドランドが担当。ある田舎町に引っ越してきた14歳の少女ミリィ(ディーキンズ)は、隣家に住む少年エリック(アンダーウッド)と知り合うが、彼は5歳の時に飛行機事故で両親を亡くして以来自閉症になっていた。ミリィは自分の優しさでエリックの心を開こうとするが・・・。

監督のニック・キャッスルは前作「スター・ファイター」で組んだクレイグ・セイファンに音楽を依頼したかったらしいが、スタジオ側の意向でブルース・ブロートンが担当することになった。「シルバラード」「ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎」でフル・オーケストラによる豪快なサウンドを聞かせたブロートンは、その直後に手がけたこの「ミリィ/少年は空を飛んだ」では、主人公の少年エリックのキャラクターを描写したフルート、ギター、ピアノ等によるシンプルな主題をベースにスコア全体を組み立てている。このエリックのテーマは、冒頭の「Main Title / Meeting Eric」で登場するが、オートハープ、フルート、ストリングスによる非常にジェントルで心のこもった音楽。続く「Military Mission / New Neighbors」は少しおどけたミリタリー調の音楽。「Milly's Science Project」はエリックの主題のバリエーション。「Heads Up」では同じ主題がオーケストラによる短い盛り上がりを見せる。「Family」は全く別の主題だが、エリックが亡き両親たちの映ったホームビデオを見るシーンの極めて感動的な音楽。「The Hospital / Flying」は、ミリィが夢の中でエリックと一緒に空を飛ぶシーンの音楽で、不吉なタッチの前半からエリックの主題のドラマティックな盛り上がりによる飛行シーンへと続く。「Eric Agitated / Louis Defeated」「New Starts」はミリタリー調のアクション音楽。「Milly & Eric Flee / Into the Air」はスコア全体の白眉で、サスペンス調の音楽ではじまり、中盤からエリックの主題による飛行シーンの音楽へと展開していく。この主題は、ブロートンが後に手がけるアニメーション映画「ビアンカの大冒険/ゴールデン・イーグルを救え!」(1990)のメインテーマにも通ずる傑作である。同じ主題を劇中で何度も静かに繰り返し、その主題がクライマックスではフル・オーケストラにより高らかに演奏されることでカタルシスをもたらすという手法が非常に効果的で、飛翔感を出すために全体的に軽めオーケストレーションとなっている。CDの最後には、ボーナストラックとしてメインテーマ「The Boy Who Could Fly」の未使用バージョンが収録されている。

尚、このスコアは過去に米Varese Sarabandeレーベルよりシンフォニア・オブ・ロンドンの演奏によるスコア盤LPとCDがリリースされていたが、今回リリースされた限定盤CDは未発表曲を追加した全17曲のサントラ盤となっている。

ブルース・ブロートンが手がけたその他の作品には、「(TV)帰って来た名探偵フランク・キャノン」(1980)「(TV)キルジョイ」(1981)「(TV)パラレル・デス/殺しの真相」(1982)「(TV)引き裂かれた祖国/ブルー&グレイ」(1983)「スペース・パイレーツ」(1984)「シルバラード」(1985)「ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎」(1985)「(TV)サンクスギビング・プロミス」(1986)「くたばれ!ハリウッド」(1986)「ビッグ・ショット」(1987)「ハリーとヘンダソン一家」(1987)「ハート泥棒」(1987)「ドラキュリアン」(1987)「スクエアダンス」(1987)「レスキュー」(1988)「ムーンウォーカー」(1988)「マフィア/最後の祈り」(1988)「プレシディオの男たち」(1988)「ジャックナイフ」(1989)「ビアンカの大冒険/ゴールデン・イーグルを救え!」(1990)「本日はお日柄も良く/ベッツィの結婚」(1990)「(TV)新・老人と海」(1990)「カナディアン・エクスプレス」(1990)「クリスマスに万歳!」(1991)「カウチポテト・アドベンチャ」(1992)「バラ色の選択」(1993)「ハネムーンは命がけ」(1993)「トゥームストーン」(1993)「ジャイアント・ベビー」(1993)「奇跡の旅」(1993)「ホーリー・ウェディング」(1994)「34丁目の奇跡」(1994)「赤ちゃんのおでかけ」(1994)「密会」(1995)「(TV)犯罪捜査官ネイビー・ファイル」(1995)「インフィニティ/無限の愛」(1996)「ザ・ターゲット」(1996)「パーフェクト・ファミリー」(1996)「奇跡の旅2/サンフランシスコの大冒険」(1996)「ドクター・ジャガバンドー」(1997)「シンプル・ウィッシュ」(1997)「N.Y.殺人捜査線」(1997)「(TV)栄光への道/北極を目指した男たち」(1998)「ロスト・イン・スペース」(1998)等がある。彼は「シルバラード」で1985年度アカデミー賞の作曲賞にノミネートされている。
(2002年3月)

Bruce Broughton

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