フューリー   THE FURY: The Deluxe Edition

作曲・指揮:ジョン・ウィリアムス
Composed and Conducted by John Williams

演奏:ロンドン交響楽団
Performed by the London Symphony Orchestra (Disc 2 Only)

(米Varese Sarabande / VCL 0702 1011) 2002


映画の公開から34年たった2002年にリリースされたデラックス・エディションのサントラ盤。CD2枚組になっており、1枚目は今回初リリースの映画のオリジナル・サウンドトラック音源(1978年1月にフォックスのスタジオで録音されたもの)、2枚目は映画公開時にAristaレーベルより出ていたサントラLP(作曲家のジョン・ウィリアムス自身が編曲し、ロンドン交響楽団によりイギリスで再録音したもの)と同じ内容。ただし以前にVarese Sarabandeレーベルから出ていたCD(VSD-5264)にはボーナストラックが1曲入っていたがこれは今回省略されている。なぜ当時サントラLP用にスコアが再録音されたかというと、1970年代にはアルバム化の際にフォックスの演奏家に支払うRe-use Feeの総額よりも新たにロンドン交響楽団を雇って再録音する費用の方が安かったこと(現在ではこのRe-use Feeは大幅に軽減されており、今回のようにサントラ音源のアルバム化が可能となっている)と、この映画のスコアをフォックスで録音した直後に「スーパーマン」のスコアの録音のためにイギリスに渡ったウィリアムスが、ロンドン交響楽団の予定を再録音のために2日間確保できたことによる。

私は当時映画を見た後にAristaレーベルのサントラLPを買って聴き、映画での印象よりもずっと重厚なスコアだったことに驚いた(その時点では再録音であることを知らなかった)が、今回リリースされたサントラ音源を聴き直してみると、こちらの方がオーケストラの編成が少し小さく感じるのと、全体にやや粗削りな演奏となっていることに気付く。特に、前半のサスペンス・シーンに付けられた「Out of the Water」「The Train Wreck」「Through the Alley」「The Fog Scene」や、クライマックスの「Lifting Susan」「The Fall」「Father Meets Son」といった“再録音盤”では聞けなかった劇伴音楽は、贅肉を削ぎ落としたようなソリッドなスコアで素晴らしい。再録音盤にもフィーチャーされている「Main Title」(=サントラ音源の「End Title」)「For Gillian」「Gillian's Vision」「Gillian's Escape」「Hester's Theme」「Approaching the House」「Descent」等も、全体に(再録音盤より)軽い印象があるが、テンションはより高く感じる。ラストでエイミー・アーヴィングがジョン・カサヴェテスをふっ飛ばすシーンの「Gillian's Power」はテルミンのサウンドが印象的。やはりウィリアムズのベストスコアの一つだとあらためて思う。

再録音盤の方を続けて聴くと、よりアルバムとして聴きやすいようにコンサート音楽風のアレンジがなされていることがよくわかる。特に最後の「Epilogue」はアルバム用にメインテーマをアレンジした曲で、ヴァイオリンのむせび泣くような切ない響きは後の「シンドラーのリスト」にも通ずるものがある。

尚、このCDは3,000枚限定プレスの“Club Release”となっており、Varese Sarabandeのウェブサイトから直接購入できる(一般のCDショップでは購入できない)。
(2002年8月)

旧盤CD(Varese Sarabande / VSD-5264)のレビュー

John Williams

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