スルース SLEUTH

作曲:パトリック・ドイル
Composed by PATRICK DOYLE

指揮:ジェームズ・シャーマン
Conducted by JAMES SHEARMAN

演奏:ロンドン交響楽団
Performed by the London Symphony Orchestra

(米Varese Sarabande / 302 066 854 2)

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2007年製作のアメリカ映画。製作・監督は「ヘンリー五世」(1989)「愛と死の間で」(1991)「フランケンシュタイン」(1994)「ハムレット」(1996)「魔笛」(2006)等のケネス・ブラナー。出演はマイケル・ケイン、ジュード・ロウ。「フレンジー」(1972)「ウィッカーマン」(1973)「ナイル殺人事件」(1978)「地中海殺人事件」(1982)等のアンソニー・シェーファーの戯曲を基に「さらばベルリンの灯」(1966)「ラスト・タイクーン」(1976)「フランス軍中尉の女」(1981)「侍女の物語」(1990)「トライアル/審判」(1992)等のハロルド・ピンターが脚本を執筆。撮影はハリス・ザンバールーコス。シェーファーのヒット舞台劇を基にジョセフ・J・マンキーウィッツ監督がローレンス・オリヴィエ、マイケル・ケイン主演で映画化したミステリ映画の傑作「探偵<スルース>」(1972)のリメイクで、“オリヴィエの再来”と評されるシェイクスピア役者のケネス・ブラナーが監督し、オリジナルでオリヴィエの演じたミステリ作家アンドリュー・ワイクをマイケル・ケインが、オリジナルでマイケル・ケインの演じたマイロ・ティンドルをジュード・ロウが演じるという、ミステリ映画ファンにとっては興味のつきない作品(ケインはアイラ・レヴィン版の「スルース」とも言えるシドニー・ルメット監督の「デストラップ・死の罠」(1982)でも主役のミステリ戯曲作家を演じていた。また、ロウは「アルフィー」のリメイクでもケインのやった主役を演じている)。老ミステリ作家のアンドリュー・ワイク(ケイン)は、彼の妻マギーと不倫関係にある若い俳優のマイロ・ティンドル(ロウ)を自宅のハイテク・マンションに呼び寄せ、ある提案を持ちかける……(ここから先はネタバレになるので何も書けない)。

1972年のオリジナル版「探偵<スルース>」の音楽はジョン・アディスンが作曲した傑作スコアだが、今回のリメイクはケネス・ブラナー監督の盟友パトリック・ドイルが担当。「The Visitor」は、ピアノとストリングスによるメランコリックで抑制されたタッチの主題。続く「The Ladder」「You're Now You」「Black Arrival」「Milo Tindle」「I Was Lying」等、スコア全体が同じ主題のバリエーションで構成されており、小編成のオーケストラによる極めてミニマリスティックな印象の音楽。「I'm Not a Hairdresser」は、ストリングスにリズムセクションを加えたミステリアスなタッチの曲で、ケインとロウのセリフが一部収録されている。ジョン・アディスン作曲の「探偵<スルース>」のサントラLPにもローレンス・オリヴィエとマイケル・ケインのセリフがかなり入っていたので、おそらくそれを意識したものだろう。「Itch Twitch」「Rat in a Trap」は、サスペンスフルなタッチ。ラストの「Too Much Sleuth」は、メインの主題のシンセサイザーによるテクノ調のアレンジメントで、ドイルには珍しいタッチ。全体的にシリアスでメランコリックな印象のスコアで、オリジナル版でのアディスンの“タング・イン・チーク”な英国風ブラック・ユーモアとはかなり異なる。ブラナー=ドイルのコンビだとこうなるのだろうが、個人的にはアディスンのスコアの方が好み。
(2007年11月)

Patrick Doyle

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