カサンドラ・クロス(完全盤) THE CASSANDRA CROSSING(Complete Score)

作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH

演奏:ウニオーネ・ムジチスティ・ディ・ローマ
Performed by Unione Musicisti di Roma

(ベルギーPrometheus / XPCD 165)

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1976製作のイギリス=イタリア=ドイツ合作映画。監督は「オフサイド7」(1979)「ランボー/怒りの脱出」(1985)「コブラ」(1986)「リバイアサン」(1989)「トゥームストーン」(1993)「ザ・ターゲット」(1996)等のジョルジュ・パン・コスマトス(1941〜2005)。出演はリチャード・ハリス、バート・ランカスター、ソフィア・ローレン、エヴァ・ガードナー、マーティン・シーン、イングリッド・チューリン、ジョン・フィリップ・ロー、アン・ターケル、レイモンド・ラヴロック、アリダ・ヴァリ、O・J・シンプソン、ライオネル・スタンダー、リー・ストラスバーグ、ルー・カステル、ファウスタ・アヴェリ、ステファノ・パトリッツィ、トーマス・ハンター、アンジェラ・グッドウィン他。ジョルジュ・パン・コスマトスとロバート・カッツの原案を基にトム・マンキーウィッツ、コスマトスとカッツが脚本を執筆。撮影はエンニオ・グァルニエリ。製作はカルロ・ポンティ、ルー・グレイドとジャンカルロ・ペッティーニ。1970年代に多作されたオールスター・キャストによるディザスター映画の1つ。ジュネーヴの国際保険機構(IHO)本部を襲撃し、逃走の過程で米軍が極秘に開発していた細菌兵器を身体に浴びたテロリストが、ヨーロッパ大陸縦断列車に逃げ込み、乗り合わせた乗客たちに病原菌が伝染しはじめる。機密漏洩を恐れた米軍情報部は列車をポーランドへ迂回させて隔離しようとするが、既に廃止されたその路線には老朽化したカサンドラ大鉄橋が横たわっていた……。

音楽は、この作品でジョルジュ・パン・コスマトス監督とはじめて組み、その後同監督の「ランボー/怒りの脱出」「リバイアサン」のスコアも手がけているジェリー・ゴールドスミスで、これは彼のサスペンス・アクション・スコアの傑作の1つ。このスコアは、過去にサントラLPとCDがリリースされているが、今回ベルギーのPrometheusレーベルがリリースしたCDは2枚組となっており、1枚目にはモノラル音源のコンプリート・スコアが初収録されている。「Main Title」は、冒頭のジュネーヴ上空からのヘリコプターショットにかぶさるメランコリックでドラマティックなメインタイトル。名曲。「Break-In」は、テロリストたちがIHO本部を襲撃するシーンのハイテンションなサスペンス・アクション音楽。「The Train Station / Dying Man / McKenzie Arrives / Sick Man」は、病原菌を浴びたテロリストの1人が列車に乗り込むシーンのサスペンス音楽で、病原菌の伝染を描写したシンセサイザーのフレーズが不気味。このフレーズは劇中に何度も登場する。「Husband & Wife / Little Girl & Sick Man / Train on the Move」は、メインの主題のジェントルなアレンジメントからサスペンス調へ展開。「New Bedside Manner」も、メインの主題のバリエーション。「Are You Alright? / What They Call "The Cassandra Crossing"」「Here We Go!」は、病原菌の描写を含むサスペンス音楽。「Searching the Train」は、米軍情報部のマッケンジー大佐(ランカスター)から連絡を受けたチェンバーレン博士(ハリス)とジェニファー(ローレン)が、病原菌に感染したテロリストを列車内で探すシーンのビジーなサスペンス・アクション音楽。「Helicopter Rescue」は、感染したテロリストと犬を列車からヘリコプターで吊り上げようとするシーンでの、徐々にテンションを盛り上げていくサスペンス音楽で、スコア全体の白眉。「Disease Spreads」は、感染が乗客に広がっていくシーンの不気味な音楽。「Bring It In / The Train / Husband & Wife」は、メインの主題を含むドラマティックな曲。「Safe Living」も、メインの主題のアレンジメントからサスペンス調へ。「The Train Arrives」は、ダークでドラマティックな曲。「I Can't Go」は、大戦中にナチスの収容所にいたキャプラン(ストラスバーグ)が、列車がポーランドへ向うと知って怯えるシーンの抑制されたサスペンス音楽。「The Bridge / God's Will」「Rusting Bridge」は、荒廃した橋を描写した不気味な曲。「The Climber」は、登山家のナヴァッロ(シーン)が走行中の列車の側面につかまって機関車まで移動しようとするシーンのハイテンションなサスペンス・アクション音楽で、この曲も全編のハイライトの1つ。「Kaplan's Death」も、クライマックスのアクション音楽で、ラストはストイックでヒロイックなフレーズへ。「Aftermath / The Passengers Escape」は、不気味な主題からサスペンス調、メインの主題へと展開。「The Cassandra Crossing - End Titles」は、メインタイトルのリプライズで、ラストは壮大に締めくくる。最後に異なるミキシングによるボーナス・トラック6曲を収録。CDの2枚目は過去に出ていたLP、CDと同じ内容(ステレオ音源)で、出演者の1人アン・ターケル(当時リチャード・ハリスの妻だった)のヴォーカルによる挿入歌「I'm Still on My Way」(作曲・作詞:デイヴ・ジョーダン)も含まれている。
(2009年1月)

Jerry Goldsmith

旧盤CD(伊RCAレーベル)のレビュー

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