(未公開)メモリーズ・オブ・ミー MEMORIES OF ME

作曲・指揮:ジョルジュ・ドルリュー
Composed and Conducted by GEORGES DELERUE

(米Intrada / Intrada Special Collection Volume 98)


1988年製作のアメリカ映画(日本では劇場未公開でTV放映済)。監督は「(TV)ハッピーデイズ」(1974〜1975)「幸福の旅路」(1977)「(TV)野獣教室」(1998)等に出演した俳優で、「(TV)冒険野郎マクガイバー」(1985〜1992)等の製作総指揮も手がけているヘンリー・ウィンクラー。出演はビリー・クリスタル、アラン・キング、ジョベス・ウィリアムス、ジャネット・キャロル、デヴィッド・アクロイド、フィル・フォンダカーロ、ロバート・パストレッリ、マーク・L・テイラー、ピーター・エルブリング、ラリー・セダー、シェリル・バーンスタイン、ジョー・シーア、ジョー・“フラッシュ”・ライリー、ビリー・ベック、マーガリート・メンドーザ他。脚本はエリック・ロスとビリー・クリスタル、撮影はアンドリュー・ディンテンファス。手術中に軽い心臓発作を起こした心臓外科医のアビー・ポリン(クリスタル)は、同じく医者でもある恋人リサ(ウィリアムス)の勧めで休暇を取り、疎遠になっていた父エイブ(キング)の元を訪ねる。ハリウッドでエキストラとして働いているエイブは、突然現れた息子とリサに戸惑いつつも楽しいひとときを過ごすが、ある日本番中にエイブの様子がおかしくなる。アビーは父に精密検査を受けさせるのだが……。父と息子の関係を描いた感傷的な人間ドラマで、主演のビリー・クリスタルとアラン・キングが製作にも参加している。ショーン・コネリーがエイブの親友という設定で本人役でカメオ出演している。

音楽はジョルジュ・ドルリューで、これは彼が晩年にカリフォルニアに移住した後に手がけたハリウッド映画のスコアの1つ。「Main Title」は、ジャック・シェルドンのトランペット・ソロをフィーチャーした都会的でジェントルなジャズによるメインタイトル。「Bedtime Dreams #1」は、クラシカルなフルートをフィーチャーした軽快な曲。「Beethoven: Ninth Symphony, Op.125(Excerpt)」は、ドルリューの編曲・指揮によるベートーヴェンの交響曲第9番の抜粋。「Bedtime Dreams #2」は、トランペット・ソロをフィーチャーした軽快でアップビートなジャズ。「Home Movies」「El Pasadero」は、ピアノとストリングスによるジェントルな曲。「Abe's Apartment」は、スタイリッシュなビッグバンド・ジャズ。「Abe & Abbie Do Their Thing」は、サックスをフィーチャーしたジェントルなジャズ。「Confrontation」は、しっとりと美しいドルリュー節。「Mexico」は、曲名通りラテン調の明るい曲。「Reminiscing; X-Ray; Abe's Aneurism」は、メランコリックなタッチの曲。「Pony Ride」も、軽快なジャズ。「End Title」は、「Confrontation」の主題から「Home Movies」の主題へと展開する静かにジェントルなエンドタイトル。最後の「End Cast」も繊細で美しいドルリュー節(「Home Movies」の主題)で締めくくる。この米IntradaレーベルのCDはコンプリート・スコア(31分程度)の初アルバム化で、1000枚限定プレス。Intradaのサイトでは例によって即日完売した。

このCDのライナーノーツには、米Varese Sarabandeレーベルの元副社長で、ロサンゼルスに移住した後のドルリューのエージェントを務めていたリチャード・クラフトによる「Memories of Georges」という長めの文章が掲載されており、ドルリューの豊かな人柄や独特の作曲法についての思い出が詳細に述べられていて、なかなか感動的。私がロスに在住していた頃の1987年1月13日にクラフトがUCLAで開催した映画音楽に関する公開講座にドルリューがゲストとして登場したことがあり(詳細はこちら)、その際にドルリューが見せてくれた「(未公開)ワイルド・ブラック2/黒い馬の故郷へ」の1シーンに関する記述もある。ライナーノーツの最後にあるクラフトとドルリューとリチャード・ストーン(自身も映画音楽作曲家だが、当時ドルリューのミュージック・エディターと英語通訳を担当していた)が映っている写真は、このUCLAでの公開講座の時のものだと思う。個人的に実に懐かしい。
(2009年4月)

Georges Delerue

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