(未公開)大いなる眠り THE BIG SLEEP
作曲・指揮:ジェリー・フィールディング
Composed and Conducted by JERRY FIELDING
(米Intrada / Intrada Special Collection Volume 112)
1978年製作のイギリス映画(日本では劇場未公開でビデオ発売済)。監督・脚本は「シンジケート」(1973)「狼よさらば」(1974)「リベンジャー」(1979)等のマイケル・ウィナー。出演はロバート・ミッチャム、サラ・マイルズ、リチャード・ブーン、キャンディ・クラーク、ジョーン・コリンズ、エドワード・フォックス、ジョン・ミルズ、ジェームズ・ステュワート、オリヴァー・リード、ハリー・アンドリュース、コリン・ブレイクリー、リチャード・トッド、ダイアナ・クイック、ジェームズ・ドナルド、ジョン・ジャスティン、サイモン・フィッシャー=ターナー、ダドリー・サットン、ドン・ヘンダーソン他。撮影はロバート・ペインター。製作はエリオット・カストナー、ジェリー・ビックとマイケル・ウィナー。私立探偵フィリップ・マーロウを主人公としたレイモンド・チャンドラー(1888〜1959)原作のハードボイルド小説『大いなる眠り』の映画化で、1946年にも名作「三つ数えろ」(監督:ハワード・ホークス、脚本:ウィリアム・フォークナー、リー・ブラケット、ジュールス・ファースマン、出演:ハンフリー・ボガート、ローレン・バコール)として映画化されている。探偵フィリップ・マーロウ(ミッチャム)は、富豪の退役将軍スターンウッド(スティワート)の邸宅に呼ばれ、次女カミラ(クラーク)が脅迫されている件の調査を依頼される。マーロウはその調査を進めるうちに、カミラの姉のシャーロット(マイルズ)の夫が失踪している件との関連を突き止める……。日本ではテレビ放映もされており、日本語吹替はミッチャム(納谷悟朗)、リード(内海賢二)、ステュワート(北村弘一)他だった。
チャンドラー原作のフィリップ・マーロウものの映画化としては、他にも「ブロンドの殺人者」(1943/監督:エドワード・ドミトリク、主演:ディック・パウエル)、「かわいい女」(1969/監督:ポール・ボガート、脚本:スターリング・シリファント、主演:ジェームズ・ガーナー)、「ロング・グッドバイ」(1973/監督:ロバート・アルトマン、脚本:リー・ブラケット、主演:エリオット・グールド)、「さらば愛しき女よ」(1975/監督:ディック・リチャーズ、主演:ロバート・ミッチャム)、「(TV)私立探偵フィリップ・マーロウ」(1983・1986/監督:ブライアン・フォーブス他、主演:パワーズ・ブース)、「(TV)マーロウ 最後の依頼」(1999/監督:ボブ・ラフェルソン、脚本:トム・ストッパード、主演:ジェームズ・カーン)等がある。このうち、「ロング・グッドバイ」(1973)と「さらば愛しき女よ」(1975)はエリオット・カストナーがプロデュースしており、この「(未公開)大いなる眠り」はカストナーが「さらば愛しき女よ」でもマーロウを演じたロバート・ミッチャムを再度主演に迎え、イギリス人のマイケル・ウィナーを監督・脚本に起用した作品で、ストーリーの舞台を敢えてカリフォルニアから1970年代のロンドンに移している(原作者のチャンドラーはイギリスで教育を受けている)。キャストは非常に豪華だが、原作がもともとわかりにくいストーリーな上に、ウィナーの脚本・演出も冗長。当時60歳のミッチャム(原作の設定は38歳)は主役を好演している。尚、レイモンド・チャンドラーは脚本家としてビリー・ワイルダー監督の「深夜の告白」(1944)、ジョージ・マーシャル監督の「青い戦慄」(1946)、アルフレッド・ヒッチコック監督の「見知らぬ乗客」(1951)の脚本も執筆している。
音楽は「追跡者」(1970)「妖精たちの森」(1971)「チャトズ・ランド」(1972)「メカニック」(1972)「スコルピオ」(1973)でもマイケル・ウィナー監督と組んでいるジェリー・フィールディングで、これは彼らの最後のコラボレーション作品。「Main Title」は、スターンウッド邸へと車で向うマーロウの主観ショットに重なるメインタイトルの音楽で、抑制されたクールなジャズのイントロから、タイトルカードが出るタイミングでダイナミックでストイックなメインの主題へと展開する。フィールディングのスコア中でもかっこよさではベストの曲だろう。「Meet General Sternwood / Chasing Smut」は、マーロウがスターンウッド将軍と面会するシーンの抑制されたミステリアスなタッチの音楽から、後半はパーカッシヴなサスペンス・アクション音楽へ展開。「Marlowe Tails Geiger / The Head Shot」「Blood Stain / Owen Taylor / Follow That Van」「Shadow on the Wall」「Agnes' Story / Hunts Garage / Just Fix the Flats」等は、ハイテンションなサスペンス音楽。「First Mars, Then Brody / Brody's Story」は、メインタイトルのイントロ部分のリプライズからサスペンス音楽へ。「Brody Takes a Bullet / Where Is It? / Tailing Marlowe」「Cuffs and Gun / The End of Canino」は、フィールディングの個性がよく出たオーケストラによるコンプレックスでダイナミックなサスペンス・アクション音楽で、「ダーティハリー3」のクライマックスでの彼の音楽にも通ずるタッチ。「The Man With the Gray Car / Here's to the Truth, Harry」は、サスペンスフルなジャズ。「The Truth」は、ミステリアスなタッチ。「Blanks / The Last of Rusty Regan」は、サスペンス調から後半ダイナミックに盛り上がる。「End Title」は、メインの主題のリプライズによるエンドタイトル。個人的にフィールディングのサスペンスアクション・スコア中でも好きな作品。このスコアは、米Bay Citiesレーベルが1990年にリリースしたCD2枚組/1500セット限定プレスのプロモーション盤に19分25秒の組曲が収録されていたが、今回米IntradaレーベルよりリリースされたサントラCDは、全15曲/35分20秒収録のコンプリートスコアで、1500枚限定プレス。
収録曲は以下の通り。
1. Main Title (3:39)
2. Meet General Sternwood / Chasing Smut (2:49)
3. Marlowe Tails Geiger / The Head Shot (4:27)
4. Blood Stain / Owen Taylor / Follow That Van (3:04)
5. First Mars, Then Brody / Brody's Story (2:00)
6. Brody Takes a Bullet / Where Is It? / Tailing Marlowe (2:22)
7. Shadow on the Wall (0:51)
8. Late Night (0:45)
9. The Man With the Gray Car / Here's to the Truth, Harry (1:47)
10. Agnes' Story / Hunts Garage / Just Fix the Flats (2:27)
11. Cuffs and Gun / The End of Canino (3:12)
12. The Good Guy Never Gets the Girl / Marlowe to Sternwood (0:53)
13. The Truth (1:28)
14. Blanks / The Last of Rusty Regan (2:24)
15. End Title (2:33)
(2009年11月)
Jerry Fielding
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