探偵<スルース> SLEUTH

作曲・指揮:ジョン・アディスン
Composed and Conducted by JOHN ADDISON

(米Intrada / Intrada Special Collection Volume 165)

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1972年製作のアメリカ=イギリス合作映画。監督は「幽霊と未亡人」(1947)「三人の妻への手紙」(1949)「イヴの総て」(1950)「ジュリアス・シーザー」(1953)「クレオパトラ」(1963)「三人の女性への招待状」(1966)「大脱獄」(1970)等のジョセフ・L・マンキーウィッツ。出演はローレンス・オリヴィエ、マイケル・ケイン、アレック・コーソーン、ジョン・マシューズ、イヴ・チャニング、テディ・マーティン。「フレンジー」(1972)「ウィッカーマン」(1973)「ナイル殺人事件」(1978)「地中海殺人事件」(1982)「死海殺人事件」(1988)等のアンソニー・シェイファーが自作の戯曲を基に脚色。撮影はオズワルド・モリス。老ミステリ作家アンドリュー・ワイク(オリヴィエ)は、彼の妻マーガリートの愛人である若い美容師マイロ・ティンドル(ケイン)をロンドン郊外の邸宅に呼び寄せて、ある提案を持ちかける。マイロにワイクの自宅の宝石を盗ませることで、マイロには浪費家のマーガリートを満足させるだけの金が手に入り、別に愛人のいるワイクには保険金が転がり込む、という寸法なのだが……。二転三転するストーリー展開が見事で、知的なミステリ・ドラマの醍醐味が堪能できる傑作。ゲーム感覚に満ち溢れたケン・アダムによるプロダクション・デザインも秀逸。アイラ・レヴィンの舞台劇をシドニー・ルメット監督が映画化した「デストラップ・死の罠(DEATH TRAP)」(1982)に多大な影響を与えている(ここではマイケル・ケインがミステリ作家を演じている)ほか、2007年にはケネス・ブラナー監督がケイン、ジュード・ロウ主演でリメイクしている。日本でのテレビ放映時の日本語吹替キャストは、オリヴィエ(島 宇志夫)、ケイン(羽佐間道夫)で、これまた見事だった。1972年度アカデミー賞の主演男優賞(オリヴィエとケイン)、監督賞、作曲賞にノミネートされた他、1973年度英国アカデミー賞の主演男優賞(オリヴィエ)、脚本賞、撮影賞にノミネートされ、オリヴィエが1972年度NY批評家協会賞の男優賞を受賞している。ミステリ・ファン必見の作品だが、残念ながら日本では今のところDVD化されていない。

音楽は「三人の女性への招待状」(1966)でもジョセフ・L・マンキーウィッツ監督と組んでいるイギリスの名手ジョン・アディスン。これは「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」(1976)等と並ぶアディスンのミステリ・ジャンルの傑作で、彼のベスト・スコアの1つ。この米IntradaレーベルのCDは、過去に米Columbiaレーベルから出ていたサントラLPと同じ内容で、劇中のオリヴィエとケインの台詞が一部収録されている。「Overture」は、物々しいイントロから軽快でアイロニカルなタッチのメインの主題へと展開する序曲。古典的な舞台劇の伴奏音楽風で、まさに“クラシック・アディスン”。「Sleuth Theme」は、ハープシコードをフィーチャーしたバロック調のワイクの主題ではじまり、映画冒頭のオリヴィエによるミステリ小説『Death by Double Fault』の朗読からケインの訪問までの台詞を収録。「Milo's Theme」は、ジェントルでリリカルなイントロからメランコリックなタッチのマイロの主題へ。「Jewel Box」は、ややダークでサスペンスフルなイントロから、オリヴィエ「で、君は私の妻と結婚したいんだって?」ケイン「あなたの許可が得られれば」という台詞のやりとりへ展開。「Count to Twenty」は、サックスをフィーチャーしたミステリアスなタッチからサスペンスフルな主題、マイロの主題へと展開。「Marguerite's Theme」は、ハープシコードによるワイクの主題からジェントルなマーガリートの主題へ。「Panic」は、とぼけたタッチのイントロからサスペンスフルな主題、マイロの主題へと展開。「The Bad Old Days」は、ダークなタッチからマイロの主題、ジェントルで優雅なワルツへ。「Milo the Clown」は、タンゴ調の主題から快活なマーチ風の主題へ展開。「Break In」は、サックスによるとぼけたタッチの主題。「Inspector Doppler」は、ややメランコリックでミステリアスなドップラー警部の主題。「Garden Grave」は、ダークなサスペンス音楽からドップラー警部の主題へ。「Andrew and Milo」は、ミステリアスなタッチからマイロの主題、ワイクの主題へと展開。「Murder Clues」「End Game」は、クライマックスのサスペンス音楽。ラストの「Epilogue」は、メインの主題のリプライズによるエピローグ。ブリティッシュなブラック・ユーモアに満ちた傑作スコア。必聴盤。1500枚限定プレス。
(2011年5月)

John Addison

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