(未公開)BELLE DU SEIGNEUR
作曲:ガブリエル・ヤレ
Composed by GABRIEL
YARED
指揮:シリル・オーフォール
Conducted by CYRILLE
AUFORT
演奏:ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団、フランダース管弦楽団
Performed by L'Orchestra Philharmonique de Bruxelles & L'Orchestre des
Flanders
(独Caldera Records / C6008)
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2012年製作のフランス=ルクセンブルグ=ドイツ=ベルギー=スイス=イギリス合作映画。監督はブラジル出身で本作が唯一の長編映画監督作であるグレニオ・ボンデル。出演はジョナサン・リス・マイヤーズ、ナタリア・ヴォディアノヴァ、エド・ストッパード、マリアンヌ・フェイスフル、マリア・ボンヴィー、ジャニーン・ホースバーグ、レスリー・ウッドホール、ジミー・ドゥ・ブラバン、ステファン・ワインナート、ギルバート・ジョンストン、クレア・ジョンストン、アンドレ・アレンド=ヴァン・デ・ノールド、カシミロ・フェルナンデス、アレックス・フリーマン、エリサベット・ジョハネスドッティア他。ギリシャ出身でスイスに移住し『ソラル』『釘食い男』等の著作があるアルベール・コーエン(1895〜1981)の小説『選ばれた女』を基にグレニオ・ボンデルと「ライフ・イズ・ビューティフル」(1998)「ピノッキオ」(2002)等のヴィンチェンツォ・チェラミ、「危険な情事」(1987)「死の接吻」(1991)等のジェームズ・ディアデンが脚本を執筆。撮影は「ブラッド・ダイヤモンド」(2006)「ハリー・ポッターと死の秘宝」(2010)等のエドゥアルド・セラ。1930年代のスイス、ジュネーヴ。国際連盟事務次長の要職にあるギリシア・ケファリニア島生まれのユダヤ人ソラル(マイヤーズ)は、抜群の政治センスと類稀なる美貌とでその地位を築き、社交界の貴婦人たちを虜にする現代のドン・ファンだった。ブラジルのレセプションで大貴族ドーブル家の血筋を引く完璧な美女アリアーヌ(ヴォディアノヴァ)を見初めたソラルは、危険な恋を仕掛ける。ホロコーストの暗雲忍び寄るヨーロッパで、死の予感を秘めながら繰り広げられる反時代的な恋愛劇。監督のグレニオ・ボンデルは2011年11月に55歳で病死しており、このCDは彼に捧げられている。
音楽はガブリエル・ヤレ(1949〜)が作曲。「Generique
Debut」は、ややメランコリックなタッチのワルツによるメインタイトル。このメインの主題は「Le Bal」「Cheval
Plage」等でも登場する。「Solal Deguise」「Ariane Sur
L'Ile」は、静かにドラマティックな曲。「Solal &
Isolde」は、ガブリエル・ヤレによるピアノ、ルディ・ヘーマーズによるサックスをフィーチャーしたワルツ調の曲。「Danse」は、ややダークでセンシュアルな主題から明るくジェントルな主題、メインの主題へと展開。「Maison
Stresa」「Retrouvailles Solal &
Ariane」「Ile」は、ジェントルで美しい曲。「Isolde」「Mysteres」は、メランコリックでミステリアスなタッチの曲。「Arrivee
Mariette」「La
Valse」は、ピアノをフィーチャーしたややメランコリックなタッチのワルツ。「Ariane」は、情感豊かで美しい曲。「Generique
Fin」は、メインの主題によるエンドタイトル。
オーケストラの指揮を担当しているシリル・オーフォール(1974〜)は、アレクサンドル・デスプラやガブリエル・ヤレのオーケストレーターを務め、自らヴィンチェンゾ・ナタリ監督の「スプライス」(2009)や「ロイヤル・アフェア
愛と欲望の王宮」(2012)等のスコアを作曲している。
最後にボーナストラックとして、ガブリエル・ヤレへの14分ほどのインタビューが収録されている(インタビュアーはこのCDのプロデューサーであるステファン・アイク)。ここでは本スコアに関してではなく、一般論として彼が映画音楽を作曲する際のアプローチについて語っているが、映画を何度も見て記憶した上でその記憶だけを基にスコアを作曲するようにしており、映像とのシンクロナイズは全く考えていない、とコメントしていることが興味深い。映画のスピリットに合わせて作曲することが重要で、ショット毎にシンクロさせようとするとメカニカルになってしまうと。また、彼は音楽家として映画製作に参加する形でアプローチしようとしており、そのために監督は(映画が完成してからでなく)より早い段階で作曲家を雇うことが重要であると。「ベティ・ブルー」では、撮影の時点で俳優もカメラマンも彼のスコアを聴いて知っていた。また、監督が音楽の力を認識している例として、セルジオ・レオーネ監督の「ウエスタン」(音楽はエンニオ・モリコーネ)や、アルフレッド・ヒッチコック監督の「めまい」「北北西に進路を取れ」(音楽はバーナード・ハーマン)の中で映像と音楽だけで7、8分続くシーンがあることを挙げている。
(2015年7月)
Gabriel Yared
Cyrille Aufort
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