ロシア・ハウス THE RUSSIA HOUSE

作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH

(スペインQuartet Records / QR303)

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1990年製作のアメリカ映画(日本公開は1991年5月)。監督は「愛しのロクサーヌ」(1987)「星に想いを」(1994)「危険な動物たち」(1996)「(TV)追憶の街 エンパイア・フォールズ」(2005)等のオーストラリア人フレッド・スケピシ(1939〜)。出演はショーン・コネリー、ミシェル・ファイファー、ロイ・シャイダー、ジェームズ・フォックス、クラウス・マリア・ブランダウアー、ジョン・マホーニー、マイケル・キッチン、J・T・ウォルシュ、ケン・ラッセル、デヴィッド・スレルフォール、マック・マクドナルド、ニコラス・ウッドソン、マーティン・クルーンズ、イアン・マクニース、コリン・スティントン他。「寒い国から帰ったスパイ」(1965)「鏡の国の戦争」(1968)「リトル・ドラマー・ガール」(1984)「テイラー・オブ・パナマ」(2001)「ナイロビの蜂」(2005)「裏切りのサーカス」(2011)「誰よりも狙われた男」(2013)等のジョン・ル・カレ(1931〜/元MI6の諜報員デヴィッド・コーンウェル)の原作を基に「未来世紀ブラジル」(1985)「太陽の帝国」(1987)「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」(1990)「恋におちたシェイクスピア」(1998)等のトム・ストッパード(1937〜)が脚本を執筆。撮影はイアン・ベイカー。ペレストロイカが進むモスクワで開催されたオーディオフェアの会場で、セールスマンのランドー(ウッドソン)は謎のロシア人女性カーチャ・オルロヴァ(ファイファー)からイギリスで出版社を経営するバーソロミュー・ブレア(コネリー)宛に3冊のノートを託された。そのノートにはソ連の核兵器システムの欠陥が詳述されていた。帰国したランドーはブレアの行方を掴めず、ノートは英国情報部<ロシア・ハウス>のチーフであるネッド(フォックス)の手に渡った。ブレアはネッドらの厳しい尋問を受け、ソビエトの作家村ペレデルキノで出会った物理学者ダンテ(ブランダウアー)のことを思い出す。情報部によりスパイに仕立てあげられたブレアはモスクワへ飛び、カーチャとの接触に成功するが……。ミシェル・ファイファーが1990年度ゴールデン・グローブの女優賞(ドラマ)にノミネートされている。

音楽は、本作品以降フレッド・スケピシ監督と「ミスター・ベースボール」(1992)「私に近い6人の他人」(1993)「星に想いを」(1994)「危険な動物たち」(1996)でも組んでいるジェリー・ゴールドスミス(1930〜2004)。「Katya」は、アメリカのジャズ・サクソフォーン奏者ブランフォード・マルサリス(1960〜)のサックスをフィーチャーした情感豊かで華麗なメインの主題で、ゴールドスミスの作品中でも美しさが際立つ名曲。この主題はゴールドスミスが当初オリヴァー・ストーン監督の「ウォール街」(1987)に作曲したものだったが、監督とのクリエイティブ面での意見の相違からこの映画を離脱したため未使用となり、次にグラハム・ベイカー監督の「エイリアン・ネイション」(1988)のスコアに使用したが、このスコアもスタジオによりリジェクトされ、最終的に「ロシア・ハウス」のメインの主題となった。ここまで何度もこだわったのは余程思い入れがあったのだろう。このメインの主題は「Katya and Barley」「Bon Voyage」「The Gift」「Barley's Love」「My Only Country」「The Deal」「The Family Arrives」「Barley's Love (Film Version)」で繰り返し登場する。「First Meeting」「First Name, Yakov」「The Meeting」「Crossing Over」は、ドラマティックなサスペンス音楽。「The Package / London House / We've Got Him」「Introductions」「Training」「Who Is He?」「The Lie Detector」「Full Marks」は、抑制されたサスペンス調の曲。「The Conversation」は、ピアノとサックスをフィーチャーしたドラマティックで気だるいタッチの曲。「Portrait of Katya」は、サックスとストリングスによる情感豊かな曲。「All Alone」「The Cemetery」は、静かにドラマティックな曲。「I'm With You (What Is This Thing Called Love?)」は、コール・ポーター作曲のノスタルジックなジャズで、マルサリスのサックス、ラルフ・ペンランドのドラムス、ビリー・チャイルズのピアノ、トニー・デュマスのベースをフィーチャー。「Alone in the World (Vocal by Patti Austin)」は、アメリカのジャズ歌手パティ・オースティン(1950〜)によるメインの主題のヴォーカル版で、作詞はアラン&マリリン・バーグマン。オーケストレーションはアーサー・モートン。ピアノはマイケル・ラング、ベースはジョン・パティトゥッチの演奏。1990年代にゴールドスミスが手がけた傑作スコアの1つ。

このスコアは公開当時にMCAレーベルから全17曲/約61分収録のサントラCDが出ていたが、このQuartet Records盤は全25曲/約76分を収録した拡張盤で、1000枚限定プレス。
(2018年3月)

Jerry Goldsmith

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