暗黒街のふたり DEUX HOMMES DANS LA VILLE
(未公開)未知の戦場/ヨーロッパ198X LE TOUBIB
帰らざる夜明け LA VEUVE COUDERC

作曲:フィリップ・サルド
Composed by PHILIPPE SARDE

指揮:ナット・ペック
Conducted by NAT PECK(「DEUX HOMMES DANS LA VILLE」「LE TOUBIB」)

(仏Music Box Records / MBR-146)

 ★TOWER.JPで購入


フランスの作曲家フィリップ・サルド(1945〜)がアラン・ドロン(1935〜)主演映画に作曲したスコア3作品のコンピレーション(全てコンプリート・スコア)。

「暗黒街のふたり(DEUX HOMMES DANS LA VILLE)」は1973年製作のフランス=イタリア合作映画(日本公開は1974年4月)。監督・脚本は「ベラクルスの男」(1967)「ラ・スクムーン」(1972)「ル・ジタン」(1975)「ブーメランのように」(1976)「掘った奪った逃げた」(1979)「父よ」(2001)等のジョゼ・ジョヴァンニ(1923〜2004)。出演はジャン・ギャバン、アラン・ドロン、ミムジー・ファーマー、ミシェル・ブーケ、ヴィクトル・ラヌー、セシール・ヴァソール、イラリア・オッキーニ、グイド・アルベルティ、マルカ・リボウスカ、クリスティーヌ・ファブレガ、ジェラール・ドパルデュー、ロベール・カステル、アルベール・オージエ、ドミニク・ザルディ、ベルナール・ジロードー他。撮影はジャン=ジャック・タルベ。前科者の社会復帰の困難さを描いたドラマで、最後にギロチンで処刑されるドロンの演技が印象的。銀行強盗の首領として逮捕され10年間服役したジーノ・ストラブリッジ(ドロン)は、保護監察司のジェルマン・カズヌーヴ(ギャバン)の力添えによって出所することができた。妻ソフィー(オッキーニ)との新しい生活を始めたジーノに、昔の仲間が再び手を組もうと誘ってきたが、彼はきっぱりと断わった。ジーノとソフィーはモー市に移住し、ジェルマンもモンペリエに移住したが、彼らは家族ぐるみの付き合いを続けていた。ある日、ピクニックの帰路でジーノたちは交通事故を起こし、ソフィーが死んでしまう。悲しみにくれるジーノだったが、ジェルマンの勧めでモンペリエに移り、印刷工場で働きはじめる。そこで新しい恋人ルーシー(ファーマー)を見つけたジーノの前に、過去の銀行強盗事件で彼を逮捕したゴワトロー警部(ブーケ)が突然現れる。モンペリエに赴任してきたゴワトローは、ジーノが更生したとは信じず、執拗に彼を監視しはじめるが……。ギャバン、ドロン、そして爬虫類的な悪役を演じたブーケがいずれも名演。本作は1970年代にフランスで起きた死刑反対運動の一環として製作されており、監督のジョゼ・ジョヴァンニ自身、戦時中から犯罪組織と関係し、終戦直後に少なくとも3件の強盗殺人に関与して死刑を宣告されたが、大統領恩赦により免れている。
本作でルーシーを演じているミムジー・ファーマー(1945〜)は、シカゴ出身のアメリカ人女優だが、イタリアに移住して「4匹の蝿」(1971)「アロンサンファン/気高い兄弟」(1974)「コンコルド」(1979)といったヨーロッパ映画に出演した後、現在では俳優を引退して夫のフランシス・ポワリエと共に「チャーリーとチョコレート工場」(2005)「ライラの冒険 黄金の羅針盤」(2007)「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」(2011)「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(2014)「美女と野獣」(2017)といった大作特撮映画でスカルプターとして活動している。

フィリップ・サルドのスコアは、冒頭の「Thème de Gino」が切なくドラマティックなメインの主題で、犯罪から足を洗い堅気の生活を送ろうとする主人公が運命に弄ばれて再び奈落の底に落ちていく悲哀を見事に表現している。名曲。スコア全体がこの主題のバリエーションにより構成されており、「Montpellier」「Garde à Vue」「Gino et Lucy」「Le Hasard」「Retour à la Vie」等、情感豊かで美しい。「Recours en Grâce」は、ギターとストリングスによるメインの主題。「Gino et Sophie」は、メインの主題から後半ダイナミックなサスペンス音楽に展開。「Voisinage」は、軽快なジャズ。「L'Appartement」は、ロックのソース曲。オーケストレーションはユベール・ロスタン。
本作のスコアは当初フランソワ・ド・ルーベがアサインされていたが、プロデューサーを兼ねるアラン・ドロンがド・ルーベをはずしてフィリップ・サルドを指定してきた。親友のド・ルーベに気兼ねしたサルドは彼に連絡したが、ド・ルーベは「ドロンとは喧嘩別れしたが、彼がボスで、彼に決定権がある。でも君がやならいと、彼らはこの映画のことを理解できない誰か別の人間を選ぶだろう」と言ったという。

「(未公開)未知の戦場/ヨーロッパ198X(LE TOUBIB)」は、1980年製作のフランス映画(日本では劇場未公開でビデオ発売済)。監督は「離愁」(1973)「個人生活」(1974)「限りなく愛に燃えて」(1976)「(TV)新・メグレ警視/ローソク売り」(1995)「(TV)メグレ警視/開いた窓」(2001)等のピエール・グラニエ=ドフェール(1927〜2007)。出演はアラン・ドロン、ヴェロニク・ジャノー、ベルナール・ジロードー、フランシーヌ・ベルジェ、ミシェル・オークレール、カトリーヌ・ラシャン、ベルナール・ル・コック、アンリ・アタル、ジャン=ピエール・バクリ、ピーター・ボンク、ソフィー・デシャン、シルヴィー・エルベール、ドミニク・ラブランシュ、ドミニク・ザルディ他。ジャン・フルスティエの原作小説『Harmonie ou les horreurs de la guerre』を基にピエール・グラニエ=ドフェールとパスカル・ジャルダンが脚本を執筆。撮影はクロード・ルノワール。近未来を舞台に、妻を亡くした外科医のジャン=マリー・デスプレ(ドロン)が、東西陣営による第三次大戦の野戦病院で働くうち、看護師のアルモニー(ジャノー)を愛するようになる……。当時22歳だった女優のヴェロニク・ジャノーは、本作への出演をオファーされたときに癌の治療中で化学療法を受けていたが、そのことを皆に隠して演技し続けていた。

フィリップ・サルドのスコアは、「Le Toubib」が、アコーディオンとストリングスをフィーチャーしたジェントルでドラマティックなメインの主題。「Jean-Marie et François」「Le Camp」「Croix Rouge Internationale」「Le Monde Libre」は、ジェントルでリリカルな曲。「Hélicoptères」は、ダブルベースをフィーチャーしたスリリングでドラマティックなタッチで、サルドの個性がよく出た曲。「Harmony Dort」「Enlèvement du Camp」は、ジェントルでドラマティックな曲。「Retour」「Champ de Bataille」「La Grotte」は、重厚なサスペンス音楽。「L'Espoir」は、メインの主題のリプライズ。アコーディオンはマルセル・アゾーラ、ダブルベースはフランソワ・ラバットの演奏。

「帰らざる夜明け(LA VEUVE COUDERC)」は、1971年製作のフランス=イタリア合作映画(日本公開は1972年9月)。監督はピエール・グラニエ=ドフェール。出演はアラン・ドロン、シモーヌ・シニョレ、オッタヴィア・ピッコロ、ジャン・ティシエ、モニーク・ショーメット、ボビー・ラポワン、ジャン=ピエール・カスタルディ、ピエール・コレ、ロベール・ファヴァール、アンドレ・ルーイエ、フランソワ・ヴァロール他。「メグレ警視」シリーズや「モンパルナスの夜」(1933)「離愁」(1973)「仕立て屋の恋」(1989)等の原作で知られるベルギー人作家ジョルジュ・シムノン(1903〜1989)の原作を基にピエール・グラニエ=ドフェールとパスカル・ジャルダンが脚本を執筆。撮影はワルター・ウォティッツ。1934年の緑に囲まれたフランスの田舎町で、通りすがりの男ジャン・ラヴィーニュ(ドロン)が車の荷台から孵卵器を下ろそうとしている未亡人クーデルク・タチ(シニョレ)の手助けをしたことから、彼女の家で働くことになる。運河の跳ね橋を挟んで住んでいる夫の妹フランソワーズ(ショーメット)とデジレ(ラポワン)夫妻は、クーデルクと一緒に住んでいる父親アンリ(ティシエ)を丸めこんで、クーデルクが支えてきた農地を自分たちのものにしようと企んでいた。クーデルクは、ジャンが殺人犯で脱獄して追われている身と知りつつも、彼を愛するようになる。一方、妹夫婦にはフェリシー(ピッコロ)という16歳の娘がいて、彼女もジャンに惹かれるようになるが……。

フィリップ・サルドのスコアは、「La Veuve Couderc」がドラマティックなメインの主題で、サルドの作品中でも美しさが際立つ名曲。「Canal et Solitude」「Abandon」「Fugitif」「La Séparation」は、メインの主題のバリエーション。「Menace / La Couveuse」は、サスペンスフルなタッチから後半メインの主題へ。「Le Bal」は、アコーディオンによる陽気なワルツ調の曲。「Les Gendarmes」「L'Assaut」は、ダークなサスペンス音楽。「Péniche New Orleans」は、陽気なデキシーランドジャズ。アコーディオンはマルセル・アゾーラの演奏。

いずれのスコアもコンプリート・スコアリング・セッションからリマスターされており、1000枚限定プレス。
(2019年3月)

Philippe Sarde

Soundtrack Reviewに戻る


Copyright (C) 2019  Hitoshi Sakagami.  All Rights Reserved.