遥かなる大地へ FAR AND AWAY

作曲・指揮:ジョン・ウィリアムス
Composed and Conducted by JOHN WILLIAMS

(米La-La Land Records / LLLCD 1533)

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1992年製作のアメリカ映画。製作・監督は「コクーン」(1985)「ウィロー」(1988)「バックドラフト」(1991)「アポロ13」(1995)「身代金」(1996)「ビューティフル・マインド」(2001)「ダ・ヴィンチ・コード」(2006)「天使と悪魔」(2009)「ラッシュ/プライドと友情」(2013)「インフェルノ」(2016)等のロン・ハワード(1954〜)。出演はトム・クルーズ、ニコール・キッドマン、トーマス・ギブソン、ロバート・プロスキー、バーバラ・バブコック、シリル・キューザック、アイリーン・ポロック、コルム・ミーニイ、ダグラス・ギリソン、ミシェル・ジョンソン、ウェイン・グレース、ジャレッド・ハリス、ブレンダン・グリーソン、クリント・ハワード、ランス・ハワード他。ロン・ハワードとボブ・ドルマンの原案を基にボブ・ドルマンが脚本を執筆。撮影はミカエル・サロモン。19世紀末に西アイルランドよりアメリカへと渡った若い男女の波乱に満ちた生き様を描いたドラマ。1892年。西アイルランドの海辺の村でジョセフ・ドネリー(クルーズ)は父と2人の兄と貧しい生活を続けていたが、ある日農民たちが地主への反乱を起こし、巻き込まれた父は重傷を負い死んでしまう。地主のダニエル・クリスティー(プロスキー)に復讐するために銃を持って邸宅に忍び込んだジョセフは、ダニエルの娘シャノン(キッドマン)と出会う。やがて2人は自らの土地を手に入れるためアメリカへと渡るが……。製作費は約6000万ドル、全世界興行収入は約1億3778万ドル。

音楽はジョン・ウィリアムス(1932〜)で、これは彼が「推定無罪」(1990)「JFK」(1991)「シンドラーのリスト」(1993)といったシリアスな作品と「ホーム・アローン」(1990)「フック」(1991)「ホーム・アローン2」(1992)「ジュラシック・パーク」(1993)といったエンタメ作品を交互に手掛けていた時期の傑作スコアで、アイリッシュ・フレーヴァーを加えた堂々たるドラマティック・スコア。このスコアは、公開当時の1992年にMCAレーベルから全19曲/約66分収録のサントラCD(MCAD-10628)が出ていたが、このLa-La LandレーベルのCDは2枚組で、全36曲/約110分を収録したリマスター/エクスパンデッド盤。

CD1枚目の冒頭「County Galway, June 1892」は、ジェリー・オサリヴァン演奏のイリアン・パイプス(アイルランドの民族楽器でバグパイプの一種)による“アイルランド”の主題から、パディ・モロニー演奏のペニー・ホイッスル(アイルランドの縦笛)による静かにリリカルでドラマティックな“先祖”の主題、ジェントルかつ大らかで希望に満ちたメインの主題へと展開。「The Fighting Donnellys」は、アイルランドのバンド、ザ・チーフタンズ (The Chieftains) の演奏による躍動的で快活な舞踏音楽調のドネリーの主題。「Joe Sr.'s Passing」「The Village Burns」は、静かにドラマティックな曲。「Leaving Home」は、先祖の主題からメインの主題へ。「The Barn / Running Away」は、静かにドラマティックな主題から後半抑制されたサスペンス音楽へ。「The Duel Scene」は、アイルランドの主題からザ・チーフタンズの演奏による躍動的なドネリーの主題、後半オーケストラによるメインの主題へ。「This Is My Destiny」は、メインの主題のピアノによる演奏。「Burning the Manor House」「Shannon Is Shot」は、ダイナミックなサスペンス音楽。「Am I Beautiful?」は、静かにジェントルな曲。「Blowing Off Steam」は、ダイナミックで躍動的な曲。「Fighting for Dough」は、ザ・チーフタンズの演奏によるドネリーの主題。「My Own Man」は、先祖の主題。「Into the Bath」は、アメリカ風の主題からメインの主題へ。「The Big Match」は、アメリカ風の主題、メインの主題から先祖の主題を織り込んだダイナミックで重厚なサスペンスアクション音楽へ。「Banished」は、メインの主題を織り込んだ抑制されたサスペンス音楽。「Inside the Mansion」は、静かに幻想的なタッチの主題から後半ピアノによるメインの主題へ。「Day Dreaming」「The Horseshoe」は、メインの主題。「Joseph's Dream」は、先祖の主題、アメリカ風の力強い主題からメインの主題へ。「The Reunion (Film Version)」は、ジェントルな主題から先祖の主題、メインの主題へ。

CD2枚目の冒頭「Oklahoma Territory」は、明るく快活な曲。「The Land Race」は、ダイナミックかつヒロイックで躍動的なレース・シーンの曲で、全体の白眉。「Race to the River」も、ダイナミックな曲。「Settling with Stephen」は、ダイナミックなサスペンス音楽から先祖の主題へ。「Joseph and Shannon」は、メインの主題が大らかに盛り上がる。「End Credits」は、ザ・チーフタンズの演奏によるドネリーの主題、アメリカ風の主題、メインの主題等がメドレーで展開する壮大なエンドクレジット。最後に追加音楽として代替テイク、別バージョン等8曲を収録。

ザ・チーフタンズのメンバーは、パディ・モロニー、ケヴィン・コーネフ、マット・モロイ、マーティン・フェイ、ショーン・キーンとデレク・ベル。パン・フルートの演奏はトニー・ヒニガンとマイケル・テイラー。3500枚限定プレス。

1984年にパサデナでザ・チーフタンズのコンサートを聴いた監督のロン・ハワードは、そこで彼らが演奏した、アメリカに移住したアイルランド人についての歌からこの映画のストーリーのヒントを得たという。その後、当時ボストン・ポップスの常任指揮者だったジョン・ウィリアムスが1991年のコンサートでザ・チーフタンズと共演したことを知って、ハワードはウィリアムスにこの映画のスコアを依頼した。一方、ジョン・ウィリアムスは、音楽を意識し始めた頃に最初に見た映画がアイルランドを舞台にしたジョン・フォード監督の「静かなる男」(音楽はヴィクター・ヤング)で、それ以来アイルランドをテーマにした映画のスコアを作曲したいと考えていたという。
(2020年4月)

John Williams

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