ジョン・ウィリアムス ライヴ・イン・ウィーン JOHN WILLIAMS LIVE IN VIENNA

作曲・指揮:ジョン・ウィリアムス
Composed and Conducted by JOHN WILLIAMS

演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the Vienna Philharmonic Orchestra (Wiener Philharmoniker)

ヴァイオリン:アンネ=ゾフィー・ムター
Violin by Anne-Sophie Mutter

(独Deutsche Grammophon / 483 9045)

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ジョン・ウィリアムス(1932〜)が2020年1月18日と19日にウィーンのムジークフェラインでクラシック音楽の名門オーケストラであるウィーン・フィルを指揮して自作の映画音楽を演奏したコンサートのライヴ録音盤。CD盤、LP盤、Blu-rayとCDをパックにしたデラックス版、UHQ-CD/MQAとBlu-rayをパックにしたデラックス版の4種類が出ているが、ここではBlu-rayとCDをパックにしたデラックス版を紹介。

一部の曲では「アクロス・ザ・スターズ(ACROSS THE STARS)」(こちらは2019年4月にL.A.で録音)でもコラボレーションしたドイツ出身のヴァイオリニスト、アンネ=ゾフィ・ムター(1963〜)がヴァイオリンを演奏している。

Blu-rayとCDの収録曲は以下の通り。

<Blu-ray>

1. フック Flight to Neverland from Hook
2. 未知との遭遇 Excerpts from Close Encounters of The Third Kind
3. ハリーポッターと賢者の石 Hedwig's Theme from Harry Potter and the Sorcerer's Stone (*)
4. サブリナ Theme from Sabrina (*)
5. 遥かなる大地へ Donnybrook Fair from Far and Away (*)
6. イーストウィックの魔女たち Devil's Dance from The Witches of Eastwick (*)
7. E.T. Adventures on Earth from E.T. The Extra-Terrestrial
8. ジュラシック・パーク Theme from Jurassic Park
9. 戦火の馬 Dartmoor, 1912 from War Horse
10. ジョーズ Out to Sea and The Shark Cage Fugue from Jaws
11. レイダース/失われたアーク《聖櫃》:マリオンのテーマ Marion's Theme from Raiders of The Lost Ark
12. スター・ウォーズ/最後のジェダイ The Rebellion is Reborn from The Last Jedi
13. スター・ウォーズ/ジェダイの帰還:ルークとレイア Luke & Leia from Return of the Jedi
14. スター・ウォーズ/新たなる希望 Main Title from Star Wars
15. シンデレラ・リバティ/かぎりなき愛 Nice to be Around from Cinderella Liberty (*)
16. タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密 The Duel from The Adventures of Tintin (*)
17. シンドラーのリスト Remembrances from Schindler's List (*)
18. レイダース/失われたアーク《聖櫃》:レイダース・マーチ The Raiders March from Raiders of The Lost Ark (*)
19. スター・ウォーズ/帝国の逆襲:帝国のマーチ The Imperial March from The Empire Strikes Back
ボーナス:ジョン・ウィリアムスとアンネ=ゾフィー・ムターの対談(約27分) John Williams and Anne-Sophie Mutter in conversation

(*):アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)

<CD>

1. フック Flight to Neverland from Hook
2. 未知との遭遇 Excerpts from Close Encounters of The Third Kind
3. イーストウィックの魔女たち Devil's Dance from The Witches of Eastwick (*)
4. E.T. Adventures on Earth from E.T. The Extra-Terrestrial
5. ジュラシック・パーク Theme from Jurassic Park
6. 戦火の馬 Dartmoor, 1912 from War Horse
7. ジョーズ Out to Sea and The Shark Cage Fugue from Jaws
8. レイダース/失われたアーク《聖櫃》:マリオンのテーマ Marion's Theme from Raiders of The Lost Ark
9. スター・ウォーズ/新たなる希望 Main Title from Star Wars
10. スター・ウォーズ/最後のジェダイ The Rebellion is Reborn from The Last Jedi
11. スター・ウォーズ/ジェダイの帰還:ルークとレイア Luke & Leia from Return of the Jedi
12. スター・ウォーズ/帝国の逆襲:帝国のマーチ The Imperial March from The Empire Strikes Back
13. レイダース/失われたアーク《聖櫃》:レイダース・マーチ The Raiders March from Raiders of The Lost Ark (*)

(*):アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)



Blu-ray盤の冒頭「フック」は、オープニングにふさわしい躍動的で端正な演奏。続く「未知との遭遇」は、細かいニュアンスが見事で熱のこもった名演。いずれもウィリアムスとスティーヴン・スピルバーグ監督とのコラボレーション作品。

この後でムターが登場し、ヴァイオリン・ソロを含む曲目が続く。「ハリーポッターと賢者の石」「サブリナ」「遥かなる大地へ」は、「アクロス・ザ・スターズ」と重複するが、やはり「遥かなる大地へ」の「Donnybrook Fair」が名演。「サブリナ」は、ヘンリー・マンシーニ風のロマンティックな曲で、ヴァイオリン・ソロ向けの曲ではないように感じる。「イーストウィックの魔女たち」は、今回ムターとの共演用に初めて編曲された曲で、冒頭のソロを含め素晴らしい演奏。

ここで一旦ムターが退場し、ウィリアムスが46年間にわたりコラボレーションを続けている盟友スピルバーグの監督作品「E.T.」「ジュラシック・パーク」「戦火の馬」「ジョーズ」「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」の「マリオンのテーマ」と続く。いずれも情感のこもった演奏だが、「ジョーズ」でオーケストラのメンバーがいかにも楽しそうに演奏している様がいい。 

ここからウィリアムスが40年以上かけて全9作品をスコアを手がけた「スター・ウォーズ」シリーズから3曲「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」「スター・ウォーズ/ジェダイの帰還」の「ルークとレイア」「スター・ウォーズ/新たなる希望」が演奏される。演奏前のウィリアムスのコメントで「1977年に最初の作品を担当したときは続編があるとは思ってもみなかった。完成した映画を見てルークとレイアは恋人になって幸せな生涯を送るんだろうと思っていたら、ジョージ・ルーカスから続編の話があり、いやいやこの2人は兄妹なんだよと言われて驚いた」と語っているのが可笑しい。「ルークとレイア」はシリーズ中でも特筆すべき美しさの名曲で、ウィリアムスはこれを「2作目の曲」と紹介していたが、実際には3作目で初登場した曲。「新たなる希望」の「メインタイトル」も迫力のある演奏で、特にブラスのパワーがすごい。オーケストラも楽しそうに演奏している。

ムターが再登場し、「アクロス・ザ・スターズ」でも演奏した「シンデレラ・リバティ/かぎりなき愛」「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」「シンドラーのリスト」と続く。「タンタンの冒険」の決闘シーンの曲ではムターの超絶テクニックが披露される。「アクロス・ザ・スターズ」では「シンドラーのリスト」のメインテーマを情感たっぷりに演奏したが、ここではもう1つの主題「Remembrances」を演奏しており、やはり感動的な名演。

この後続けて「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」の「レイダース・マーチ」となるが、オーケストラのメンバーはおそらくリアルタイムでこのシリーズを見ていた年代と思われ、ノリノリで演奏している。特にヴァイオリン・ソロはない曲だが、ムターもそのまま残って一緒に演奏している。

ここで一旦終わってウィリアムスはムターと一緒に舞台の袖に引っ込むが、すぐにアンコールで出てきて「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」の「帝国のマーチ」を演奏。始まった途端に客席から拍手が起き、迫力ある見事な演奏で締めくくる。この曲はもともとプログラムに入っていなかったが、ウィーン・フィルの金管楽器奏者たちからウィリアムスに「是非演奏したい」と希望があったという。

ボーナス素材として収録されているウィリアムスとムターとの対談で、ムターが「私のヴァイオリン・コンチェルトはいつ完成しますか?」と何度か聞いているので、彼女のためのコンチェルトを作曲することになっているのだろう。今年の2月で88歳になったウィリアムス(この演奏時点では87歳)だが、このコンサート映像ではとても元気な姿が見られたので、是非これからも活躍していただきたい。

(2020年8月)

John Williams

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