(未公開)男と女のアヴァンチュール/紫のタクシー UN TAXI MAUVE
(未公開)J'AI ÉPOUSÉ UNE OMBRE

作曲:フィリップ・サルド
Composed by PHILIPPE SARDE

指揮:カルロ・サヴィーナ
Conducted by CARLO SAVINA

演奏:ロンドン交響楽団、ザ・チーフタンズ
Performed by the London Symphony Orchestra, The Chieftains (UN TAXI MAUVE)

(仏Music Box Records / MBR-182)

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フィリップ・サルド(1948〜)作曲の2作品のスコアをカップリングにしたCD(500枚限定プレス)。

「(未公開)男と女のアヴァンチュール/紫のタクシー(UN TAXI MAUVE)」は、1977年製作のフランス=アイルランド=イタリア合作映画(日本では劇場未公開でビデオ発売済/英語題名は「THE PURPLE TAXI」)。監督は「汚れた刑事」(1970)「(未公開)ミュウ・ミュウの女刑事」(1979)「(未公開)バトルランナー2030」(1983)「(未公開)狼獣たちの熱い日」(1983)「(未公開)ハイジャック・アロー」(1999)等のイヴ・ボワッセ(1939〜)。出演はシャーロット・ランプリング、フィリップ・ノワレ、ピーター・ユスティノフ、フレッド・アステア、エドワード・アルバート、アゴスティーナ・ベッリ、ジャック・ウェストン、メイリン・D・オサリヴァン、デヴィッド・ケリー、ニオール・バギー、メイ・クラスキー、ローン・ド・フー、ブレンダン・ドイル、マイケル・ダフィー、デレク・ロード他。ミシェル・デオン(1919〜2016)の原作を基にアンヌ・デュッテとジョルジュ・デュッテが脚色し、イヴ・ボワッセとミシェル・デオンが脚本を執筆。撮影は「ウエスタン」(1968)「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」(1984)「薔薇の名前」(1986)「ライフ・イズ・ビューティフル」(1998)等のトニーノ・デリ・コリ。アイルランドの小さな村を舞台に、紫色のタクシーを運転する引退した医師シーマス・スカリー(アステア)、息子を亡くしたフランス人のフィリップ・マルシャル(ノワレ)、裕福な家庭に育ったアメリカ人ジェリー・キーン(アルバート)と、その美しい姉シャロン(ランプリング)、聾唖者の娘アン(ベッリ)と住む小説家のトーベルマン(ユスティノフ)といった人々の関係を描くドラマ。1977年度カンヌ国際映画祭のコンペティション出品作品。

フィリップ・サルドのスコアは、冒頭の「Un Taxi Mauve」が海岸の鳥の鳴き声のSEからティン・ホイッスルとストリングスによるメランコリックでドラマティックな主題へと展開する曲。「La Maison Templar」は、ドラマティックでサスペンスフルなタッチから美しく情感豊かな主題へ。「La Plage」は、ドラマティックでスリリングなタッチ。「Un Pub」は、フィドルやギターをフィーチャーした躍動的な舞踏音楽。「Rideau de Pluie」は、メランコリックでリリカルな曲。「Sonate de Franz Schubert, Opus 42 en La Mineur」は、かつてトーベルマンの亡き妻が弾いていたフランツ・シューベルト作曲の「ピアノソナタ第16番 イ短調 作品42 D 845」で、ここではイギリス人のピアニスト、ロジャー・ウッドワードが演奏している。「Le Marais」は、リリカルでドラマティックな曲。「Finale」は、勇壮なマーチからメランコリックでドラマティックな主題へと展開するフィナーレ。

ロンドン交響楽団の弦楽器パートと、アイルランドのバンド、ザ・チーフタンズによる演奏。バグパイプとティン・ホイッスル(ペニー・ホイッスル)はパディ・モロニー、アイリッシュハープはデレク・ベル、フルートとコンサーティナ(蛇腹楽器)はマイケル・タブリディ、ヴァイオリンはショーン・キーンマーティン・フェイ、スプーンとボーンズはピーダー・マーシアの演奏。

このスコアは、1977年にフランスのVogue/Fonit CetraレーベルからサントラLP(LID 20288)が出ており、その後2003年にUniversal Franceレーベルが出したイヴ・ボワッセ監督とフィリップ・サルドのコラボレーション作品を集めたコンピレーションCD(038 565-2)に6曲が収録されていたが、このMusic BoxレーベルのCDにはサントラLPと同じ8曲(リマスター済)を収録。


「(未公開)J'AI ÉPOUSÉ UNE OMBRE」は、1983年製作のフランス映画(英語題名は「I MARRIED A DEAD MAN」)。監督は「(未公開)最後の標的」(1982)「(TV)暗黒の戦士/ハイランダー 超空編」(1992)「(TV)ポンパドール夫人」(2006)等のロバン・ダヴィ(1943〜)。出演はナタリー・バイ、フランシス・ユステール、リシャール・ボーランジェ、マドレーヌ・ロバンソン、ギイ・トレジャン、ヴィクトリア・アブリル、ヴェロニク・ジュネ、モーリス・ジャックモン、ソレン・ジャルニウー、アンドレ・トラン、ユベール・バルサン、アンドレ・ショーモー、ジャン=アンリ・シャンボワ、アルレット・ジルベール、クリスティーヌ・パオリーニ他。「幻の女」(1944)「(未公開)タイムリミット25時」(1946)「夜は千の眼を持つ」(1947)「裏窓」(1954)「黒衣の花嫁」(1968)「暗くなるまでこの恋を」(1969)等の原作で知られるウィリアム・アイリッシュ(aka コーネル・ウールリッチ/1903〜1968)の小説『死者との結婚』を基に、ロバン・ダヴィとパトリック・ローランが脚本を執筆。撮影はベルナール・ジツェルマン。粗暴な夫フランク(ボーランジェ)に捨てられたエレーヌ(バイ)は、お腹の中に赤ん坊を抱えて当てもなくボルドー行きの列車に乗るが、その列車が転覆事故を起こしてしまう。病院で目を覚ましたエレーヌは、車内で知り合った若夫婦の妻パトリシア(ジュネ)と間違えられる。パトリシアは夫のメイラン(トレジャン)と一緒に彼の裕福な家族に初めて会いに行くところだったが、夫婦は事故で死んでしまう。無一文で何の未来もなかったエレーヌはパトリシアに成りすまし、未亡人としてメイラン家に受け入れられるが……。同じ原作が日本でも1960年に「死者との結婚」(監督:高橋 治/出演:小山明子、渡辺文雄、他)として映画化されている。

フィリップ・サルドのスコアは、「Pastorale Girondine (Les Vignobles - Le Marché)」がギターとオーケストラによる躍動的でドラマティックな曲。「Berceuse」「Promenade」は、ジェントルでリリカルな曲。「Scherzo (Générique)」は、躍動的でクラシカルなタッチのメインタイトル。「Idylle (Baignade)」「Nocturne (Errance et Agonie)」「Dirge (Chant Funèbre)」は、繊細で情感豊かな曲。「Romanza (Détresse et Aveux)」「Apothéose (La Traversée)」は、ジェントルかつドラマティックな曲。「Scherzo 2 (Fuite et Soupçons)」は、躍動的なタッチの曲。

ヴァイオリン・ソロはマイケル・デイヴィス。サルドらしい上質なオーケストラル・スコア。
このスコアは、2009年にUniversal Franceレーベルから出ていたロバン・ダヴィ監督とフィリップ・サルドのコラボレーション作品を集めたコンピレーションCD(532 300 0)に5曲が収録されていたが、このMusic BoxレーベルのCDにはサルドのスコア全10曲(サルドにより組曲風に構成されている)を収録。但し、Universal盤には含まれていたジョニー・アリデイのヴォーカルによる主題歌「J'ai épousé une ombre」は収録されていない。

(2020年11月)

Philippe Sarde

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