(未公開)エンドレスナイト ENDLESS NIGHT

作曲:バーナード・ハーマン
Composed by BERNARD HERRMANN

指揮:フェルナンド・ベラスケス
Conducted by FERNANDO VELAZQUEZ

演奏:バスク国立管弦楽団
Performed by Basque National Orchestra

(スペインQuartet Records / QR437)

 ★TOWER.JPで購入

   ★AMAZON.CO.JPで購入 


1972年製作のイギリス映画(日本では劇場未公開でビデオ発売済)。監督は「バルカン超特急」(1938)「(未公開)ミュンヘンへの夜行列車」(1940)等の脚本や「青の恐怖」(1946)「絶壁の彼方に」(1950)「完全なる良人」(1954)等の監督・脚本を手がけたシドニー・ギリアット(1908〜1994)。出演はヘイリー・ミルズ、ハイウェル・ベネット、ブリット・エクランド、ペール・オスカルソン、ジョージ・サンダース、オードリー・リチャーズ、アン・ウェイ、ペイシェンス・コリアー、ピーター・ボウルズ、ロイス・マックスウェル、デヴィッド・バウアー、ヘレン・ホートン、マッジ・ライアン、ウォルター・ゴテル、レオ・ゲン他。「そして誰もいなくなった」(1945/1974)「情婦」(1957)「オリエント急行殺人事件」(1974/2017)「ナイル殺人事件」(1978/2020)「クリスタル殺人事件」(1980)「ドーバー海峡殺人事件」(1984)「死海殺人事件」(1988)「アガサ・クリスティー ねじれた家」(2017)等の映画化作品があるイギリスのミステリ作家アガサ・クリスティー(1890〜1976)の原作『終りなき夜に生れつく』を基にシドニー・ギリアットが脚本を執筆。撮影はハリー・ワックスマン。
イギリスのキングストン・ビショップ村にある「ジプシーが丘」は、海を臨む美しい眺望の景勝地だが、呪われた伝説を持つ地として恐れられていた。しがない元運転手のマイケル・ロジャーズ(ベネット)は、この地でアメリカの大富豪の娘エリー・トムセン(ミルズ)と出会って恋に落ち、誰にも知らせず結婚する。エリーは莫大な遺産の相続人で、エリーの継母コーラ(マックスウェル)、叔父フランク(バウアー)、従兄弟ルーベン(ボウルズ)、弁護士アンドリュー・リピンコット(サンダース)たちがその遺産を狙っており、孤立するエリーの味方は彼女の親友グレタ(エクランド)だけだった。マイケルとエリーが「ジプシーが丘」で暮らし始めて3週間後、乗馬に出かけたエリーが落馬して死んでしまう……。

音楽はバーナード・ハーマン(1911〜1975)で、これは彼がキャリアの後期に手がけたスコアの1つ。このCDはハーマンのオリジナル原稿を基にリコンストラクトしたスコアの新録音盤で、「永遠のこどもたち」(2007)「インポッシブル」(2012)「コロニア」(2015)「怪物はささやく」(2016)等のスコアを作曲したフェルナンド・ベラスケス(1976〜)がオーケストラを指揮している。「Prelude」は、ダイナミックでドラマティックなイントロからモーグ・シンセサイザーによるメランコリックなタッチのメインの主題(エリーの主題)へ展開する前奏曲。作曲家の個性が強く表れた“ヴィンテージ・ハーマン”。「The Opening」は、リリカルな主題からサスペンス調へ。「The Balcony」「Encounter」は、静かにジェントルな曲。「Gypsy's Acre」「Duo I」「Marriage」「Duo II」は、リリカルで美しい曲。「Flashback I」「The Pictures」「Warning」「The Cats」「Broken Glass / Miss T / The Ice」「School Play」「The Garden / The Statue」「Flashback II」は、抑制されたサスペンス音楽。「Ellie」は、静かにドラマティックなタッチから後半リリカルな主題へ。「The Newspaper」は、静かに躍動的なタッチ。「Greta (Original Version)」は、ロマンティックで美しい曲。「The Seasons」は、明るくジェントルな曲。「The Gift / The Ride」は、モーグ・シンセサイザーを織り込んだスリリングなタッチの曲。「Endless Night」は、スペインのソプラノ歌手ヌリア・リアルのヴォーカルによるメランコリックなタッチの主題歌。劇中でのヘイリー・ミルズの歌声は「回転木馬」(1955)「オクラホマ!」(1955)等のシャーリー・ジョーンズが吹き替えている。「Devotion / Binoculars」「The Return」は、静かにドラマティックな曲。「Farewell」は、ドラマティックで美しい曲。「The Yellow Pill」は、モーグ・シンセサイザーを織り込んだ不気味なサスペンス音楽。「Death」は、ハーマンの「サイコ」のスコアを想起させるストリングスによるサスペンス音楽。「The Couch」「Breakdown」は、ダイナミックなサスペンス音楽。「The Fight / The Song (Film Version)」は、ダイナミックなサスペンスアクション音楽から後半女声ヴォーカルによる主題歌へ。「End Title」も、女声ヴォーカルの主題歌によるエンドタイトル。最後にボーナストラックとして代替テイク等7曲を収録。
サスペンス調の曲よりリリカルで美しい曲が印象的なスコア。ハーマンはロマンティックなエリーの主題を“音楽的なおとり(musical decoy)”として使っており、一見ロマンティックな映画と思わせておいて、実は冷酷な殺人者を描いたストーリーであるとの意外性を狙ったらしい。オリジナルスコアの録音で使用されたモーグ・シンセサイザーは、「(未公開)密室の恐怖実験」のスコアでハーマンをアシストした作曲家のハワード・ブレイクが開発者のロバート・モーグ博士から直接購入したもので、この楽器の異世界を想起させるような音色を気に入ったハーマンは、「悪魔のシスター」(1973)「悪魔の赤ちゃん」(1974)でも使用している。この新録音でのモーグ・シンセサイザーの演奏はトニ・サイギ。
(2021年1月)

Bernard Herrmann

Soundtrack Reviewに戻る


Copyright (C) 2021  Hitoshi Sakagami.  All Rights Reserved.