(未公開)LE CHAT
離愁 LE TRAIN

作曲:フィリップ・サルド
Composed by PHILIPPE SARDE

指揮:カルロ・サヴィーナ
Conducted by CARLO SAVINA (LE TRAIN)

演奏:サンタ・チェチリーア管弦楽団
Performed by Orchestra di Santa Cecilia di Roma (LE TRAIN)

(スペインQuartet Records / QR447)

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「個人生活」(1974)「限りなく愛に燃えて」(1976)「(TV)新・メグレ警視/ローソク売り」(1995)「(TV)メグレ警視/開いた窓」(2001)等のピエール・グラニエ=ドフェール監督(1927〜2007)とフィリップ・サルド(1948〜)とのコラボレーション作品2本のスコアのカップリング。いずれも「メグレ警視」シリーズや「モンパルナスの夜」(1933)「仕立て屋の恋」(1989)「倫敦から来た男」(2007)等の原作で知られるベルギー人作家ジョルジュ・シムノン(1903〜1989)の小説の映画化。500枚限定プレス。

「(未公開)LE CHAT」は、1971年製作のフランス=イタリア合作映画。出演はジャン・ギャバン、シモーヌ・シニョレ、アニー・コーディ、ジャック・リスパル、ニコール・ドゥサイー、ハリー=マックス、アンドレ・ルーイエ、カルロ・ネル、イヴ・バルザック、フロランス・アグノエ、レナート・ビルゴ、エルマノ・カサノヴァ、ジョルジュ・マンサール、イザベル・デル・リオ他。ジョルジュ・シムノンの原作を基にピエール・グラニエ=ドフェールとパスカル・ジャルダンが脚本を執筆。撮影はワルター・ウォティッツ。フランス中央部の町クールブヴォアで、もうすぐ取り壊される予定の小さな家に暮らす印刷工だった夫ジュリアン・ブーイン(ギャバン)と、サーカスの団員だった妻クレマンス(シニョレ)、そして夫が妻よりも愛情を注ぐ一匹の猫グルフィエを描いたドラマ。名優ギャバンとシニョレは、この作品で1971年度ベルリン国際映画祭の最優秀男優賞、女優賞を受賞している。

フィリップ・サルドのスコアは「Le chat (Générique debut)」が、サルド自身の演奏によるピアノ・ソロとストリングスによるメランコリックで美しいメインタイトル。「Le Temps des souvenir」は、2人の若き日の幸せな結婚生活を描写した、ジャン・サブロンのヴォーカルによるジェントルでノスタルジックなシャンソン(作曲はエディ・マルネイとフィリップ・サルド)。「Le chat (L'escalier)」「Solitude」「Le chat (Remords et regrets)」は、メインの主題のバリエーション。「Le cirque」は、明るく快活なマーチ。「Le chat (Suspense 1)」「Le chat (Suspense 2)」は、ダイナミックなサスペンス音楽。「Le chat (Les journaux)」は、ダークなタッチの曲。「Le Temps des souvenir 2」「Le Temps des souvenir 3」は、ジェントルでノスタルジックな主題歌のインストゥルメンタル版。「Le chat (Grande surface)」は、明るくリズミックな曲。「Le chat (Les petits papiers)」は、メランコリックなタッチの曲。「Le chat (Générique fin)」は、メインの主題のリプライズによるエンドタイトル。オーケストレーションはジャン=ミシェル・ドゥファイエ

このスコアは1971年にフランスのPemaレーベルから4曲入りのEPレコード(PEM 90504)が出ており、1982年にGeneral Musicレーベルが出したコンピレーションLP「PHILIPPE SARDE / SIMENON / GRANIER-DEFERRE」(General Music 803 032)に1曲、2001年にUniversalレーベルが出した同様のコンピレーションCD(Universal Music 013 542-2)に3曲が収録されていたが、このQuartetレーベルが2021年4月にリリースしたCDには全14曲のコンプリートスコアを収録。


「離愁(LE TRAIN)」は、1973年製作のフランス=イタリア合作映画(日本公開は1975年2月/英語題名は「THE LAST TRAIN」)。出演はジャン=ルイ・トランティニアン、ロミー・シュナイダー、モーリス・ビロー、ポール・アミオ、ニケ・アリギ、ポール・ル・ペルソン、アンヌ・ヴィアゼムスキー、ロジェ・イバネズ、ジャン・レコ、フランコ・マッツィエリ、セルジュ・マルカン、レジーヌ、ジャック・アルリック、アンリ・アタル、ジャン=ピエール・カスタルディ他。ジョルジュ・シムノンの原作を基にピエール・グラニエ=ドフェール、パスカル・ジャルダンとサンドロ・コンティネンツァが脚本を執筆。撮影はワルター・ウォティッツ。第二次大戦中、ナチスドイツ占領下のフランスを舞台に、他国へと逃亡を図るユダヤ人たちが乗った列車内での、ともに家族のある行きずりの男女の束の間の愛情を描くドラマ。フランス北部のフメイでラジオの修理屋を営んでいたジュリアン・マロイユール(トランティニアン)は、幼い娘と妊娠中の妻モニーク(アリギ)を客車に乗せ、自分は家畜車に乗って村から脱出した。ドイツ軍の攻撃が激しさを増す中、名も知れぬ駅に列車が停車したとき、ジュリアンは列車に乗り込もうと駆けて来たドイツ生まれのユダヤ人アンナ(シュナイダー)を見つけ、家畜車に乗せてやった。2人は身動きできない貨車の中で寄り添うようにしながら旅を続け、やがて惹かれ合うようになる……。

フィリップ・サルドのスコアは「L'attaque」が、ニュース映像のモンタージュにかぶさるダイナミックでスリリングな曲。「L'exode」「La traversée」は、重厚でダイナミックなサスペンス音楽。「Anna」は、情感豊かで悲哀に満ちたアンナの主題で、サルドが作曲した数多くの主題の中でもベストの1つと言える名曲。「Le train」は、ドラマティックでサスペンスフルな曲。「La nuit」は、メランコリックなタッチの曲。「La guerre」は、ドラマティックなタッチから後半アンナの主題へ。「Le camp」は、ダークなサスペンス音楽(映画では未使用)。「Julien」は、アンナの主題のバリエーション。オーケストレーションはユベール・ロスタン
サルドは撮影が始まる前に脚本だけを基にこの9楽章からなる交響組曲を作曲し、グラニエ=ドフェール監督はこの音楽をセットでかけて、その雰囲気、リズム、テンポをベースに演出したという。

このスコアは1975年にフランスのPolydorレーベル、日本のOdeonレーベルから全9曲入りのサントラLP(Polydor 2393 072、Odeon EOS 80096)が出ており、(上述の)1982年にGeneral Musicレーベルが出したコンピレーションLP「PHILIPPE SARDE / SIMENON / GRANIER-DEFERRE」(General Music 803 032)に6曲、2001年にUniversalレーベルが出したコンピレーションCD(Universal Music 013 542-2)に9曲(コンプリートスコア)が収録されていたが、このQuartetレーベルが2021年4月にリリースしたCDにはUniversal盤と同じ9曲を収録。
(2021年8月)

Philippe Sarde

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