七月の女 THE STRIPPER
(未公開)ス★パ★イ S*P*Y*S

作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH

(米La-La Land Records / LLLCD 1557)

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ジェリー・ゴールドスミス(1930〜2004)が1960〜70年代に20世紀フォックス製作の作品2本に作曲したスコアのカップリングで、La-La Landレーベルによる「GOLDSMITH AT 20TH」シリーズの第3集。CD2枚組となっており、1枚目に「七月の女」、2枚目に「(未公開)ス★パ★イ」を収録。2000枚限定プレス。

「七月の女(THE STRIPPER)」は、1963年製作のアメリカ映画(元の原題名は「A WOMAN IN JULY」)。監督は「猿の惑星」(1968)「パットン大戦車軍団」(1970)「ニコライとアレクサンドラ」(1971)「パピヨン」(1973)等のフランクリン・J・シャフナー(1920〜1989)で、これは彼の長編初監督作品。出演はジョアン・ウッドワード、リチャード・ベイマー、クレア・トレヴァー、キャロル・リンレー、ロバート・ウェッバー、ルイス・ナイ、ジプシー・ローズ・リー、マイケル・J・ポラード、ソンドラ・ブレイク、スーザン・ブラウン、マーリーン・デ・ラマター、ゲイリー・パジェット、ラルフ・リー、ビング・ラッセル、ダニー・ロッキン他。「ピクニック」(1955)「バス停留所」(1956)「さよならミス・ワイコフ」(1978)等のウィリアム・インジの戯曲『A Loss of Roses』を基にミード・ロバーツが脚本を執筆。撮影はエルスワース・フレデリックス。7月のある日、カンサス州サリンソンの町にマダム・オルガ(リー)率いるステージ・ショーの一座がやって来た。ショーガールのライラ・グリーン(ウッドワード)のマネージャーを務めるリッキー・パワーズ(ウェッバー)は、ガソリンスタンドで働いていたケニー・ベアード(ベイマー)にホテルの場所を尋ね、ショーのチケットを2枚あげた。ケニーと一緒にショーを見た母親のヘレン(トレヴァー)は、ライラがかつて隣の家に住んでいた養女で、赤ん坊の頃のケニーの子守をしてくれたことを思い出す。ケニーはライラにのぼせあがり、ガールフレンドのミリアム(リンレー)への興味を失っていく。ライラがホテルに帰ると、リッキーがショーの金を持ち逃げしたと知らされる……。1963年度アカデミー賞の衣装デザイン賞(白黒)にノミネートされている。主演のライラ役は当初マリリン・モンローが演じると発表されたが、モンローが死去したため、ジョアン・ウッドワード(ポール・ニューマンとのおしどり夫婦ぶりが有名だった)が起用されたという。

ジェリー・ゴールドスミスフランクリン・J・シャフナー監督と「猿の惑星」(1968)「パットン大戦車軍団」(1970)「パピヨン」(1973)「海流のなかの島々」(1977)「(未公開)ブラジルから来た少年」(1978)「(未公開)LIONHEART」(1987)でも組んでおり、この「七月の女」は彼らの長編映画初コラボレーション作品。このスコアは2001年に米Film Score Monthlyレーベルが全32曲(ゴールドスミスのスコア17曲、ソース音楽・代替テイク15曲)を収録したサントラCD(FSMCD Vol.3 No.9)をリリースしている(追加でゴールドスミス作曲の「(未公開/TV)Nick Quarry」(1968)のスコア4曲を収録)が、今回La-La Landレーベルが2021年5月にリリースしたCDにはゴールドスミスのスコア17曲、ソース音楽14曲、代替テイク2曲を収録。

「The Stripper Main Title」は、ジャズベースのイントロからメランコリックなタッチの主題、リズミックな主題へと展開するメインタイトル。「The Execution」は、葬送行進曲風の曲。「Sunday Dinner」は、ジェントルなタッチから後半明るいワルツ調の主題へ。「The Empty Room」は、メランコリックなタッチの口笛をフィーチャーしたジェントルな曲。「Lila and Helen」「Job Hunting」は、気だるいタッチのジャズ。「Party Boy」は、ダークなイントロからおどけたタッチへ展開するジャズ・ベースの曲。「A Mother's Worry」「The Classroom」「Lila's Confession」「Comfort for Lila」は、ジェントルな曲。「The Dancing Lesson」は、ジェントルでドラマティックな曲。「The Birthday Present」は、ドラマティックでサスペンスフルな曲。「The New Job」は、リズミックでダイナミックなジャズ。「A Change of Heart」は、ドラマティックなタッチから後半ジャズベースの主題へ。「Lila's Advice」は、ダークでドラマティックな曲。「The Stripper End Title」は、ジェントルなエンドタイトル。この後、ラジオから流れるソース音楽10曲、ストリップ・シーンのソース音楽4曲、代替テイク2曲「The Empty Room (Alternate)」「Should I? / The Dancing Lesson (Film Combo)」を収録。

このCDの最後に収録されている「Pacer's Farewell (From Flaming Star)」は、「燃える平原児(FLAMING STAR)」(1960/監督:ドン・シーゲル、出演:エルヴィス・プレスリー、ドロレス・デル・リオ、スティーヴ・フォレスト)のフィナーレの音楽で、これは当時フォックスの音楽監督だったライオネル・ニューマンの要請により、ゴールドスミスがフォックス作品のために初めて作曲した曲。


「(未公開)ス★パ★イ(S*P*Y*S)」は、1974製作のアメリカ映画(日本では劇場未公開でビデオ発売済)。監督は「サウス・ダコタの戦い」(1976)「特攻サンダーボルト作戦」(1976)「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」(1980)「ネバーセイ・ネバーアゲイン」(1983)「ロボコップ2」(1990)等のアーヴィン・カーシュナー(1923〜2010)。出演はエリオット・グールド、ドナルド・サザーランド、ズー・ズー、ジョス・アックランド、グザヴィエ・ゲラン、ヴラデク・シェイバル、マイケル・ペトロヴィッチ、シェーン・リマー、ケネス・グリフィス、ピエール・ウードリー、ケネス・J・ウォーレン、ジャック・マラン、ジェフリー・ウィッカム、ナイジェル・ホーソーン、メラニー・アックランド他。脚本はローレンス・J・コーエン、フレッド・フリーマンとマルコム・マーモースタイン。撮影はジェリー・フィッシャー。ロシアの体操選手セヴィツキー(ペトロヴィッチ)の亡命作戦に失敗したCIAエージェントのグリフ(グールド)とブルーランド(サザーランド)は、KGBのみならず味方のCIA、中国共産党、CIAを破壊しようとするテロリスト・グループにまで追われるはめになる。当初は「Wet Stuff」(血=“殺し”の意味)というタイトルがつけられていたが、エリオット・グールドとドナルド・サザーランドの共演でヒットしたロバート・アルトマン監督の「M★A★S★H マッシュ(M*A*S*H)」(1970)の成功にあやかろうとしたプロデューサーがタイトルを「S*P*Y*S」に変更したという。製作費は約1200万ドル。欧州公開版のスコアは「アントニーとクレオパトラ」(1972)「ファイナル・カウントダウン」(1980)「グレイストーク -類人猿の王者- ターザンの伝説」(1984)「(未公開)燃える男」(1987)等のイギリスの作曲家ジョン・スコット(1930〜)が担当している。

ジェリー・ゴールドスミスのスコアは、2004年に米Varese SarabandeレーベルがリリースしたCD6枚組のボックスセット「Jerry Goldsmith at 20th Century Fox」の5枚目に9曲/約19分が収録されていたが、このLa-La LandレーベルのCDには全18曲/約33分を収録。

「S*P*Y*S Main Title」は、サックス、コーラス(“スパーイズ”)、シンセサイザーをフィーチャーしたリズミックでコミカルなタッチのメインタイトルで、ちょっと「グレムリン」のスコアを想起させる。「Russian Warm-Up」は、ピアノによるロシア風の主題。「Anybody Got a Key?」は、バラライカとコーラスをフィーチャーしたロシア舞踏音楽風の曲で、チャイコフスキー作曲のバレエ「白鳥の湖」の引用入り。「The Mannequin」「The Siberian Blues」は、ロシア風のコミカルなタッチの曲。「New Friends」「A Welcome Guest」は、アコーディオンをフィーチャーしたジェントルでおどけたタッチの曲。「Table Talk」は、ベートーヴェンの「運命」イントロの中国風スティンガーからコミカルなタッチへ。「A Little Investigation」は、ダークなイントロからおどけたタッチへ。「One for the Road」「Woops」「Dog-Gone Paris」「Tools of the Trade」「The Buy」は、メインの主題の様々なバリエーション。「Triple Cross」は、オルガンによる静かな主題からバラライカをフィーチャーしたロシア風の主題へ。ラストの「A New Start」は、アコーディオンをフィーチャーしたメインの主題のマーチ調の演奏。映画のタッチに呼応した軽妙でコミカルなスコア。
(2021年8月)

Jerry Goldsmith

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