夕映え THE TAMARIND SEED

作曲・指揮:ジョン・バリー
Composed and Conducted by JOHN BARRY

(英Silva Screen Records / SILCD1647)

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1974年製作のアメリカ=イギリス合作映画(日本公開は1976年10月)。監督は「ティファニーで朝食を」(1961)「酒とバラの日々」(1962)「ピンクの豹」(1963)「グレートレース」(1965)「暁の出撃」(1970)等のブレイク・エドワーズ(1922〜2010)。出演はジュリー・アンドリュース(ブレイク・エドワーズ監督の妻)、オマー・シャリフ、アンソニー・クエイル、ダニエル・オハーリヒー、シルヴィア・シムズ、オスカー・ホモルカ、ブライアン・マーシャル、デヴィッド・バロン、シーリア・バナーマン、ロジャー・ダン、シャロン・デュース、ジョージ・ミケル、ケイト・オマラ、コンスタンティン・グレゴリー、ジョン・サリヴァン他。イヴリン・アンソニーの原作『The Tamarind Seed』を基にブレイク・エドワーズが脚本を執筆。撮影は「炎の人ゴッホ」(1956)「アラビアのロレンス」(1962)「ドクトル・ジバゴ」(1965)「007は二度死ぬ」(1967)「空軍大戦略」(1969)等のフレディ・ヤング(1902〜1998)。

イギリス外務省に勤めるジュディス・ファロー(アンドリュース)は、夫を自動車事故で失い、同僚のリチャード・パターソン(バロン)との恋愛にも破れ、休暇を取ってカリブ海のバルバドス島に静養に来ていた。そこでフィオドル・スヴェルドゥロフ(シャリフ)というロシア人と出会うが、彼はソヴィエト秘密警察KGBのパリ支局長ゴリッツィン将軍(ホモルカ)の次官で、妻との仲がうまくいかず、共産主義にも疑問を持つようになっていた。フィオドルは積極的にジュディスに近づき、彼女も次第にフィオドルにひかれていく。これにイギリス外務省とパリのソ連大使館が気づき、両国の情報部は密かに2人を尾行する。ロンドンに戻ったジュディスをイギリス情報部のジャック・ローダー部長(クエイル)が訪ね、フィオドルは彼女をソ連のスパイとしてリクルートしようとしているのではないかと言うが……。「(TV)サンダーバード」等で知られるイギリスの製作会社ITCの創業者リュー・グレード卿が、ジュリー・アンドリュースをアメリカ市場向けのテレビ番組に出演させるディールの条件として、彼女が主演し夫のエドワーズが監督する映画を製作することになったもの。シルヴィア・シムズが1974年度英国アカデミー賞の助演女優賞にノミネートされている。製作費は約240万ドル。

音楽はジョン・バリー(1933〜2011)。ブレイク・エドワーズ監督はヘンリー・マンシーニとのコラボレーションで知られるが、この作品では当時ITC製作の「(TV)ダンディ2 華麗な冒険(The Persuaders!)」(1971〜1972)等のスコアを手がけていたバリーが起用された。この作品は公開当時に主題歌「Play It Again」のシングル盤がイギリスのPYEレーベル(PYE Records 45380)と日本のポリドール(Polydor DPQ-6019)から出ていただけで、スコアについては大半の音源が紛失したと考えられており、正規なサントラ盤がこれまでリリースされていなかった。

「The Tamarind Seed Main Title」は、情感豊かで美しくドラマティックな“バリー節”によるメインタイトル。「Judith Remembers」は、メインの主題を織り込んだややダークなタッチの曲。「A Drive on the Island」も、メインの主題のバリエーション。「Play It Again (Film version) (Vocal - Wilma Reading)」は、オーストラリア出身の歌手ウィルマ・リーディングのダイナミックなヴォーカルによる主題歌(作詞はドン・ブラック)。「File 23」「Napalm Boat」は、ダークでメランコリックなタッチの曲。「Defection」「Airport」「Plane Swap」「Interception Attempt」「The KGB Prepares」は、ジェームズ・ボンド風の重厚でサスペンスフルなタッチの曲(ジョン・バリーはこの映画と同じ1974年に「007/黄金銃を持つ男」のスコアも手がけている)。「Burning Bungalow」「He's Alive」は、抑制されたサスペンス音楽。「She'll Recover」は、ジェントルなタッチの曲。「The Tamarind Seed End Title」は、メインの主題のリプライズによるエンドタイトル。

これ以降は、ダニー・ストリートのヴォーカルによる主題歌のデモ版(ボンド映画の主題歌等でバリーと組んでいるドン・ブラックが最初に書いた歌詞で、かつてのハリウッドスターたちの名前が登場する内容だが、不採用となった)「The End (Version 1) (Vocal - Danny Street)」「The End (Version 2)」や、ライトなダンス・ミュージック風のソース曲「Holiday Source Cue 1」「Holiday Source Cue 2」「Holiday Source Cue 3」「Unused Source Music」「Radio Source Music」「Embassy Party Source Music」、メインテーマの代替テイク「The Tamarind Seed Main Theme (Alternate version 1)」「The Tamarind Seed Main Theme (Alternate version 2)」、主題歌のシングル・バージョン「Play It Again (Single version) (Vocal - Wilma Reading)」を収録。ソース曲の一部はヘンリー・マンシーニ風なのが面白い。
(2022年1月)

John Barry

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