(未公開)スティーブ・マーティンの 四つ数えろ DEAD MEN DON'T WEAR PLAID
作曲:ミクロス・ローザ
Composed by MIKLOS ROZSA
指揮:リー・ホールドリッジ
Conducted by LEE HOLDRIDGE
演奏:ハリウッド・スタジオ交響楽団
Performed by the Hollywood Studio Symphony
(米Intrada / Intrada Special
Collection Volume 475)
1982年製作のアメリカ映画(日本では劇場未公開でビデオ発売済)。監督は「オー!ゴッド」(1977)「天国から落ちた男」(1979)「(未公開)2つの頭脳を持つ男」(1983)「マージョリーの告白」(1990)「(未公開)もう一度アイ・ラブ・ユー」(1997)等のカール・ライナー(1922〜2020)。出演はスティーヴ・マーティン、レイチェル・ウォード、カール・ライナー、レニ・サントーニ、ジョージ・ゲインズ、フランク・マッカーシー、エイドリアン・リカード、チャールズ・ピサーニ、ジーン・ラベル、ジョージ・サワヤ、ブリット・ニルソン、ジーン・ボーダイン他。極秘のレシピ開発に従事していた“チーズ科学者”の父(ゲインズ)が山道の自動車事故で死んだのは殺人であると確信したジュリエット・フォレスト(ウォード)は、私立探偵のリグビー・リアドン(マーティン)に調査を依頼する。「カーロッタの友と敵」の名前がリストアップされたメモを入手したリグビーは、調査を進める過程で怪しい男女たちに遭遇するが……。
全編がモノクロで撮影されており、「深夜の告白」(1944)「失われた週末」(1945)「殺人者」(1946)「三つ数えろ」(1946)「汚名」(1946)「白熱」(1949)といった過去の犯罪映画(フィルム・ノワール)の名作に登場するアラン・ラッド、バーバラ・スタンウィック、レイ・ミランド、エヴァ・ガードナー、バート・ランカスター、ハンフリー・ボガート、ケイリー・グラント、イングリッド・バーグマン、ヴェロニカ・レイク、ベティ・デイヴィス、ラナ・ターナー、エドワード・アーノルド、カーク・ダグラス、フレッド・マクマレイ、ジェームズ・キャグニー、ジョーン・クロフォード、チャールズ・ロートン、ヴィンセント・プライス、ウィリアム・コンラッド、エドモンド・オブライエン等のフッテージを利用し、主人公たちと会話しているような形に編集されている。脚本はジョージ・ガイプ、スティーヴ・マーティンとカール・ライナー。撮影はマイケル・チャップマン。「ローマの休日」(1953)「麗しのサブリナ」(1954)「大空港」(1970)「スティング」(1973)「王になろうとした男」(1975)等で知られる著名な衣装デザイナー、イーディス・ヘッド(1897〜1981)が最後に手がけた作品(制作終了直後に死去)であり、過去の作品で彼女が手がけた衣裳のフッテージが巧みに挿入されている。製作費は約900万ドル、全世界興行収入は約1820万ドル。
音楽は「バグダッドの盗賊」(1940)「深夜の告白」(1944)「失われた週末」(1945)「白い恐怖」(1945)「殺人者」(1946)「クォ・ヴァディス」(1951)「黒騎士」(1952)「ジュリアス・シーザー」(1953)「ベン・ハー」(1959)「エル・シド」(1961)「プロビデンス」(1977)等のハリウッド黄金期の伝説的作曲家ミクロス・ローザ(1907〜1995)が手がけており、これは彼にとっても最後の作品。このスコアは1993年にベルギーのPrometheusレーベルが全22曲/約47分収録のCD(Prometheus
PCD
126)を出していたが、Intradaレーベルがローザの生誕115周年を記念して2022年4月にリリースしたこのCDは2枚組となっており、1枚目にコンプリートスコア、2枚目に代替テイク等の追加音楽を収録(全53曲/約87分)。
CD1枚目の冒頭「New Universal Signature (Jimmy McHugh)」は、ジミー・マクヒュー作曲のユニヴァーサル・スタジオのロゴ・ミュージック。続く「Prelude
from Dead Men Don't Wear Plaid / Stormy Meeting」は、ダークでダイナミックなイントロからドラマティックで優雅なラヴ・テーマへと展開する前奏曲。「The
Front Page」は、ダイナミックなスティンガー。「The Exterminator」は、ダークでドラマティックなメインの主題から後半ダイナミックなサスペンス音楽へ。「The
First Bullet」「First Clue」「Peace Offering」「False Pretenses」「The Drink」は、抑制されたサスペンス音楽。「Cleaning
Woman No. 1」「Cleaning Woman No. 2」は、ポール・ショアの演奏によるテルミンをフィーチャーした不気味なサスペンス音楽。「Memories」「Alias
Sam Novak」は、静かにドラマティックな曲。「Wild Jazz Piece No. 2」「One-Sided
Passion (Alternate)」は、ジェントルなジャズ。「Looking for Hastings」「A Meal
Ticket」「The Railroad Car」は、ダークでドラマティックな曲。「Love Theme from Dead
Men Don't Wear Plaid」は、ドラマティックで優雅なラヴ・テーマで、まさに“ヴィンテージ・ローザ”の名曲。この主題は「Marlowe
Appears」「Embracing Hands (Original)」「Love at Last」「Trust」「Delusions / Carlotta」等でも登場する。「The
Swede」は、重厚なサスペンス調からダイナミックなアクション音楽へ。「The Hoods」は、ダイナミックなサスペンスアクション音楽からラヴ・テーマへ。「Transformation」は、コミカルで快活なタッチ。「Mistaken
Identity」「Prison Break」「Final Instructions」「Final Cleaning Woman」は、ダイナミックなサスペンス音楽。「Carlotta
/ Carlotta Cafe」「The Big Fish」は、サスペンス調から後半ライトなラテン・ミュージックへ。「The
Visit」は、エレノア・スラトキンのチェロ・ソロをフィーチャーした静かにドラマティックな曲。「Finale From
Dead Men Don't Wear Plaid」は、ラヴ・テーマによるフィナーレ。「End Credits From
Dead Men Don't Wear Plaid」は、メインの主題のリプライズによるエンド・クレジットで壮大に締めくくる。
過去にローザ自身が作曲したフィルム・ノワールの傑作スコアのタッチを再現しており、特にロマンティックで美しいラヴ・テーマが素晴らしい。オーケストラの指揮はリー・ホールドリッジ(当時74歳だったローザは背中の傷みにより録音に参加できず、2日前に急遽依頼されたホールドリッジが指揮を担当した)。オーケストレーションはクリストファー・パルマー。追加オーケストレーションと編曲はスコット・スモーリーとアンジェラ・モーレイ。
(2022年8月)
Miklós Rózsa
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