(未公開)SECTION SPÉCIALE

作曲・指揮:エリック・ドゥマルサン
Composed and Conducted by ÉRIC DEMARSAN

(未公開)CLAIR DE FEMME

作曲・指揮:ジャン・ミュジー
Composed and Conducted by JEAN MUSY

(仏Music Box Records / MBR-202)

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「Z」(1969)「戒厳令」(1973)「ミッシング」(1982)「背信の日々」(1988)「ミュージックボックス」(1989)「マッド・シティ」(1997)等のギリシャ出身の監督コンスタンタン・コスタ=ガヴラス(1933〜)が1970年代に手がけた2作品のスコアをカップリングにしたCD。300枚限定プレス。

「(未公開)SECTION SPÉCIALE」は、1975年製作のフランス=イタリア=西ドイツ合作映画(英語題名は「SPECIAL SECTION」)。出演はマイケル・ロンズデール、ルイ・セニエ、ピエール・デュ、クロード・ピエプリュ、ジャック・ペラン、ハインツ・ベネット、ハンス・リヒター、ジャン・ブイーズ、ジャン・シャンピオン、ジュリアン・ベルトー、イヴ・ロベール、ブリューノ・クレメール、フランソワ・メストル、ジャック・フランソワ、イヴ・モンタン他。エルヴェ・ヴィルレの原作を基にコスタ=ガヴラスとホルヘ・センプランが脚本を執筆。撮影はアンドレア・ウィンディング。第二次大戦中、ドイツ軍占領下のフランスで、ドイツ人将校がマルクス主義者のグループによって殺害された。ヴィシー政府は、ドイツ軍からの追求を逃れるため、6人の無関係な犯罪者に殺人の罪を負わせることにし、彼らを早急に死刑に処すべく特別班(スペシャル・セクション)の判事が起用されるが……。1975年度カンヌ国際映画祭の正式コンペティション作品として出品され、コスタ=ガヴラスが監督賞を受賞している。

音楽は「影の軍隊」(1969)「仁義」(1970)「続・個人教授」(1976)「ストーン・カウンシル」(2006)「(TV)画家モリゾ、マネの描いた美女 名画に隠された秘密」(2012)等のエリック・ドゥマルサン(1938〜)。このスコアは公開当時の1975年にフランスのRCA Victorレーベルから全16曲/約33分収録のサントラLP(RCA Victor FPL1 0072)が出ていたが、Music Boxレーベルが2022年5月にリリースしたこのCDは、LPと同内容でオリジナルのマスターテープからリマスターされている。

「Thème Section spéciale」は、明るく快活なサーカス音楽風のワルツによるメインタイトル。「Extrait de l'opéra Boris Godounov: Prologue - L'air de l'innocent」は、ロシアの作曲家モデスト・ムソルグスキー(1839〜1881)作曲の歌劇『ボリス・ゴドゥノフ』からの引用で、イヴォン・リーナール指揮ヴィシー・カジノ管弦楽団の演奏。「La grande source」は、ピアノとストリングスによる優雅でクラシカルな曲。「Fin de la manifestation」「Avant l'exécution」は、パーカッシヴなサスペンス音楽。「Réunion au bord du lac」は、ダークなサスペンス音楽。「Thème Section spéciale (Manège)」は、メインの主題のリプライズ。「Attentat du métro Barbès」は、ギリシャ人の彫刻・立体造形作家タキス(パナイオティス・ヴァシラキス/1925〜2019)による、不気味でアブストラクトな電磁気音楽(Musique magnetique)。「Impromptus hongrois」は、オーストリアの作曲家フランツ・シューベルト(1797〜1828)作曲の「ハンガリー即興曲」「Chez l'exécuteur」「Bal villageois」は、アコーディオンをフィーチャーした軽快なダンス・ミュージック。「Installation de la section spéciale」は、オルガンによる荘厳なタッチの曲。「Marche militaire」は、勇壮なミリタリー・マーチ。「Beunon et sa femme」は、フルートとピアノをフィーチャーしたジェントルでリリカルな曲。「La jeunesse de Bastard」は、ギターと口笛を加えた明るく快活な曲。「Thème Section spéciale」は、メインの主題のリプライズにより締めくくる。比較的地味目のスコアが多いドゥマルサンとしては、カラフルでドラマティックなタッチのスコア。編曲はエリック・ドゥマルサンとドミニク・ペリエ。ドラムスはダニエル・ユメール、ベースはギイ・ペデルセン、ピアノはジョルジュ・アルヴァニタスの演奏。

「(未公開)CLAIR DE FEMME」は、1979年製作のフランス=イタリア=西ドイツ合作映画(英語題名は「WOMANLIGHT」)。出演はイヴ・モンタン、ロミー・シュナイダー、ロモロ・ヴァリ、リラ・ケドロヴァ、ハインツ・ベネット、ロベルト・ベニーニ、ディーター・シドアー、カトリーヌ・アレグレ、フランソワ・ペロー、ダニエル・メグイシュ、ガブリエル・ジャブール、ハンス・ヴェルナー、ジャン=クロード・ブーイヨー、エリアンヌ・ボラ、ジャン・レノ他。「これからの人生」(1977)「ホワイト・ドッグ」(1981)「母との約束、250通の手紙」(2017)等のロマン・ガリー(1914〜1980)の原作を基にコスタ=ガヴラスが脚本を執筆。撮影はリカルド・アロノヴィッチ。お互い家族に不幸な境遇を抱えた中年の男女が、偶然めぐり逢い、癒しを求めあう様を描いたドラマ。ミシェル・フォラン(モンタン)の妻は、癌で死の淵にいた。彼女は自ら命を絶つ決意をし、ミシェルは彼女を残してしばらく国外に行くことに同意するが、彼は逡巡して空港と自宅の間を何度も行き来してしまう。ミシェルがタクシーのドアを開けた際に、偶然通りかかったリディア・トヴァルスキ(シュナイダー)の買い物かごを壊してしまい、その弁償をするために2人でカフェに行き、彼は代金の小切手を書く。一方、リディアは半年前に夫の運転していた車が交通事故に遭い、同乗していた娘は死んで、夫は脳に障害が残ってしまった。ミシェルの妻は死に、2人は互いに癒しを求めて逢瀬を続けるようになる……。

音楽は「ココ・シャネル」(1981)「ベイビー・ブルース」(1988)「白い婚礼」(1989)「ホドロフスキーの虹泥棒」(1990)「ランジュ・ノワール/甘い媚薬」(1994)「はじらい」(2006)等のジャン・ミュジー(1947〜)。このスコアは公開当時の1979年にフランスのRivieraレーベルから全11曲/約32分半収録のサントラLP(Riviera BA-215)が出ていたが、このMusic BoxレーベルのCDは、LPと同内容でオリジナルのマスターテープからリマスターされている。

「Thème principal」は、ギターとパンパイプをフィーチャーしたメランコリックかつリリカルなメインの主題。この主題は「Thème principal joué au torégatto」ではオルガンとピアノ、「Thème principal joué à la flûte de pan」「Thème principal (Place de la Concorde)」ではパンパイプにより演奏される。「España Cañi」は、スペインの作曲家パスクアル・マルキナ・ナロ(1873〜1948)作曲によるメランコリックでドラマティックな曲(編曲はジャン・ミュジー)。「Danse dans le cabaret」は、ピアノをフィーチャーしたディスコ調のソース曲。「Solitude dans la rue」は、ギターをフィーチャーした静かにドラマティックでサスペンスフルな曲。「L'adagio d'Albinoni」は、クラシック音楽の名曲「アルビノーニのアダージョ」のジャン・ミュジーによるロック・アレンジ。この曲はトマゾ・アルビノーニではなく、イタリアの音楽学者レモ・ジャゾット(1910〜1998)が作曲したもの。「Thème de la rencontre」は、リリカルでメランコリックな曲。「Musique du numéro de Galva」は、明るく快活なタッチ。ラストの「Thème de la séparation (Générique de fin)」は、フルートとピアノをフィーチャーしたジェントルな主題によるエンドタイトル。ベースの演奏はソーヴール・マリア。
映画の題材にふさわしい非哀歓を帯びたドラマティックなスコア。

(2022年9月)

Éric Demarsan

Jean Musy

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