スペースバンパイア LIFEFORCE

作曲・指揮:ヘンリー・マンシーニ
Composed and Conducted by HENRY MANCINI

演奏:ロンドン交響楽団
Performed by the London Symphony Orchestra

(米Intrada / Intrada Special Collection Volume 481)

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作曲・指揮:マイケル・ケイメン
Composed and Conducted by MICHAEL KAMEN

演奏:ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the National Philharmonic Orchestra

(米Intrada / Intrada Special Collection Volume 480)

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1985年製作のイギリス=アメリカ合作映画。監督は「悪魔のいけにえ」(1974)「悪魔の沼」(1976)「ファンハウス/惨劇の館」(1981)「ポルターガイスト」(1982)「スペースインベーダー」(1986)等のトビー・フーパー(1943〜2017)。出演はスティーヴ・レイルズバック、ピーター・ファース、フランク・フィンレイ、マチルダ・メイ、パトリック・ステュワート、マイケル・ゴサード、ニコラス・ボール、オーブリー・モリス、ナンシー・ポール、ジョン・ハラム、ジョン・キーガン、クリストファー・ジャガー、ビル・マリン、ジェローム・ウィリス、ジョン・フォーブス=ロバートソン他。評論『アウトサイダー』(1956)等で知られるイギリスの小説家・評論家コリン・ウィルソン(1931〜2013)の小説『宇宙ヴァンパイアー(The Space Vampires)』(1976)を基に、「エイリアン」(1979)「ゾンゲリア」(1981)「バタリアン」(1985)「トータル・リコール」(1990)「スクリーマーズ」(1996)等のダン・オバノン(1946〜2009)と「ブルーサンダー」(1983)「スペースインベーダー」(1986)「アラクノフォビア」(1990)「ヴァンパイア/最期の聖戦」(1998)等のドン・ジャコビーが脚本を執筆。撮影は「テラー博士の恐怖」(1964)「ヘルハウス」(1973)「地底王国」(1976)「007/ユア・アイズ・オンリー」(1981)「スター・ウォーズ/ジェダイの復讐」(1983)等のアラン・ヒューム(1924〜2010)。VFXは「スター・ウォーズ」(1977)「宇宙空母ギャラクティカ」(1978)「スター・トレック」(1979)「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(2011)等のジョン・ダイクストラ(1947〜)。製作はメナハム・ゴーランとヨーラン・グローバスで、これは彼らのキャノン・グループが製作した最も大きな予算の映画の1つ。

1986年、ハレー彗星の調査に向かった宇宙船チャーチル号は、彗星の近くで漂う宇宙船を発見。船長のトム・カールセン大佐(レイノルズバック)は中を調査して女1人と男2人が透明なカプセルに収容されているのを発見し、チャーチル号に回収した。1カ月後、米コロンビア号は船内火事を起こしているチャーチル号に接近し、クルーの焼死体と無傷のカプセルを発見した。カプセルは欧州宇宙研究センターに安置されたが、その中から宇宙生物の女(メイ)が突然起きあがり、ガードマンに抱きついてその肉体から精気を吸い取ってしまった。ハンス・ファラーダ博士(フィンレイ)がかけつけた時には、女はロンドンの町に消えていた。コリン・ケイン大佐(ファース)が捜査指揮をとる中、ついにロンドンの町で被害者が出始め、彼らも次々とバンパイアになってしまう……。宇宙生物を演じた当時18歳のフランス人女優マチルダ・メイは、英語が全く話せず、英語のセリフを音で覚えて演じたという。彼女は全編で7分ほどしかない出演シーンの大半を全裸で演じた。製作費は約2500万ドル、全世界興行収入は約1160万ドル。

音楽は「ティファニーで朝食を」(1961)「ハタリ!」(1962)「酒とバラの日々」(1962)「シャレード」(1963)「ピンクの豹」(1963)「ひまわり」(1970)「料理長殿、ご用心」(1978)等のスコアで知られるヘンリー・マンシーニ(1924〜1994)。上質なユーモアのセンスに満ちた軽妙で洒落た音楽を得意とする作曲家で、本作のようなSFホラー映画のスコアには意外な人選のようにも思えるが、彼はキャリア初期に「大アマゾンの半魚人」(1954)「世紀の怪物/タランチュラの襲撃」(1955)といったユニヴァーサルのSFホラー映画のスコアをノン・クレジットで手がけている。この「スペースバンパイア」は、ポスト・プロダクションの際に何度も再編集されたが、マンシーニが次の仕事に入ってしまったため、「デッドゾーン」(1983)「リーサル・ウェポン」(1987)「ダイ・ハード」(1988)「ロビン・フッド」(1991)「三銃士」(1993)「陽のあたる教室」(1995)等のマイケル・ケイメン(1948〜2003)が、変更されたシーンの追加スコアの作曲に起用された。ケイメンは、結果としてオープニングシーンや電子音楽を含む75分超のスコアを作曲している。

マンシーニのスコアは、公開当時の1985年に米Varese Sarabandeレーベルが全11曲/約37分収録のサントラLP(Varese Sarabande STV-81249)を出しており、1989年に仏Milanレーベル(Milan Records CD FMC 256)、1991年にVareseレーベル(Varese Sarabande VSD 5320)が同内容のCDを出しているが、その後2006年に米Buysoundtraxレーベルがマンシーニ作曲の26曲とケイメン作曲の8曲にエクストラを追加した全46曲/約142分収録の2枚組CD(BSX Records BSXCD 8822)を出している(3000枚限定プレス)。今回、米Intradaレーベルは、2022年8月にケイメン作曲のフル・スコアを収録したCD(全18曲/約77分)、9月にマンシーニ作曲のフル・スコアを収録した2枚組CD(全53曲/約148分)をリリースした。

ヘンリー・マンシーニ作曲のスコアを収録した2枚組CDには、1枚目と2枚目の前半に映画で使用されたコンプリートスコアを収録し、2枚目の後半には1985年のサントラアルバムの内容と代替テイク等のエクストラを収録。1枚目の冒頭「The Lifeforce Theme (Main Title)」は、低音のストリングスによる躍動的なマーチ調のリズムにフレンチホルンとトランペットによるヒロイックな主題を加えた重厚かつダイナミックなメインタイトルで、マンシーニが手がけた数多いスコア中でも最もパワフルな曲。武骨なマーチ調の曲だがストリングスによる微妙なニュアンスがいかにも彼らしく、全体の印象は実に流麗。1990年にマンシーニが来日してロイヤル・フィルを指揮した映画音楽コンサートでも、このメインタイトルを演奏していたので、本人もお気に入りの曲だったのだろう。「The Discovery」は、静かにドラマティックなタッチからミステリアスなタッチ、抑制されたサスペンス音楽へと展開する曲で、これ以降マンシーニとしては珍しく明確な主題のないサスペンス調のアンダースコアが展開。「The Discovery (Cont.)」は、コーラスをフィーチャーしたドラマティックなサスペンス音楽。「Rescue Mission」「The Vampire Lives」「Nervous Time」「Carlsen Sleeps」「It's Immense」「Are You in There?」「Let Me Go!」「Chain Reaction」も、抑制されたタッチのサスペンス音楽。「No Longer Dangerous」「Feeding Time (With Strum)」「Evil Visitation」は、ドラマティックなタッチのサスペンス音楽。「Prelude」「Energy Crisis」は、静かにミステリアスなタッチの曲。「Carlsen's Story」は、静かにドラマティックなタッチから後半重厚なサスペンス音楽へ。「Anyone for Tums」「Horny Alien」「House of Blue Lights」「Son of Web of Destiny」は、コーラスを加えた重厚でドラマティックなサスペンス音楽。「Martial Law」「The Web of Destiny」も、ドラマティックでダイナミックなサスペンス音楽。「Call of the Wild」は、サスペンス調から中盤躍動的でヒロイックな主題へ。

CD2枚目の冒頭「Grandson of Web of Destiny」は、コーラスを加えたドラマティックな主題から、後半ロンドン・シンフォニーがフル・パワーで盛り上がって締めくくるクライマックスの音楽。続く「The Lifeforce Theme (End Title)」は、メインの主題のリプライズによるエンドタイトル。これ以降は、全11曲のサントラアルバムの内容に続いて、「Feeding Time (Without Strum)」「Son of Web of Destiny (Alternate Mix)」「Grandson of Web of Destiny (Alternate Mix)」の代替テイクと、様々な楽器を使った不気味でアブストラクトなタッチの短いスティンガー13曲をエクストラとして収録。


マイケル・ケイメン作曲のスコアを収録したCDには、前半にオーケストラの演奏による5曲、後半に電子音楽11曲とエクストラ2曲を収録。オーケストラ曲の1曲目「Main Title / Approaching the Comet」は、パワフルなブラスをフィーチャーした重厚でダイナミックなメインタイトルからサスペンス音楽へ展開。「We Have to Look Now」「Nightmare / Carlsen Wakes Up」は、ドラマティックでダイナミックなサスペンス音楽。「Entering the Alien Spacecraft / The Gate Opens」は、不気味なタッチの曲。「The Discovery」は、抑制されたサスペンス音楽。明確な主題のないサスペンス調のアンダースコアだが、ケイメンの個性は明確に感じられる。続く電子音楽は、「Entering the Alien Spacecraft」「Caine's Entry / Waking Male Vampires」「Girl in Park」「Helicopter Interior and Blood Clot Scene」「Arrival at the Cathedral / Carlsen Enters the Crypt」等、不気味なタッチのサスペンス音楽が連続。「Passage of Time / Rescue Mission / Girl Awakens」は、ややアブストラクトなタッチの曲。「Autopsy on Guard / End of Autopsy Scene」は、スリリングなタッチの曲。「Leaving the Nurse / To Sykes' Cell / Injecting Dr. Armstrong / Interrogating Armstrong」は、ミステリアスな主題から不吉なタッチへ。「London Street Chaos」「Prime Minister / Helicopter Escape / Army Base / Lifeforce to Aliens」は、ダイナミックなサスペンス音楽。「Carlsen's Flashback」は、抑制されたサスペンス音楽。最後にエクストラとして、環境音のSE風から不気味なタッチへと展開する「Alien Spacecraft Atmospheres – Reel 1」「Alien Spacecraft Atmospheres – Reel 2 [Chimes]」を収録。

(2022年11月)

Henry Mancini

Michael Kamen

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