レア・サウンドトラックス Volume 7(1) LES B.O. INTROUVABLES - VOLUME 7 / CD1

(未公開)LES FOURBERIES DE SCAPIN

作曲・指揮:ジャン・ブーシェティ
Composed and Conducted by JEAN BOUCHÉTY

(未公開)LE FOU DU ROI

作曲:ドミニク・ペリエ、サム・ベルネット
Composed by DOMINIQUE PERRIER, SAM BERNETT

(仏Music Box Records / MBR-B7)

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フランスのMusic Boxレーベルが、あまり知られていないマイナーなフランス映画音楽をシリーズで紹介しているサウンドトラック集の第7弾(350枚限定プレス)で、今回はフレンチポップスの指揮者・編曲者にスポットを当てたコンピレーション。CD3枚組となっており、ここではその1枚目に収録された2作品のスコアを紹介。

「(未公開)LES FOURBERIES DE SCAPIN」は、1981年製作のフランス映画。監督はロジェ・コッジオ(1934〜2001)。出演はロジェ・コッジオ、ミシェル・ガラブリュ、ジャン=ピエール・ダラ、モーリス・リシュ、ヴァンサン・コルテ、セシル・パオリ、ファニー・コタンソン、ピエール=フランソワ・ピストリオ、ステファーヌ・ベベール、クリス・デュラン、リシャール・セルファティ、ミシェル・ベン・アブ、オリヴィエ・ガリアーノ、グレゴール・ヴァスケス、シルヴァン・フォーシェ他。「タルテュッフ」(1925)「ドン・ジュアン」(1998)等の映画化作品があるフランスの劇作家モリエール(ジャン=バティスト・ポクラン/1622〜1673)の戯曲『スカパンの悪だくみ』(1671)を基にロジェ・コッジオとベルナール・G・ランドリーが脚本を執筆。撮影はクロード・ルコント。

オクターヴ(ピストリオ)の父アルガント(ダラ)は、仕事仲間のジェロント(ガラブリュ)と共に2か月前から仕事の都合で船に乗って出かけており、オクターヴはその隙にイアサント(コタンソン)という娘と秘密裡に結婚していた。父からジェロントの娘との結婚を押し付けられているオクターヴは、父にどう弁解するかにつき、機知縦横を誇る従僕スカパン(コッジオ)に助けを求める。一方、ジェロントの息子レアンドル(コルテ)も、ジプシーの娘らしいゼルビネット(パオリ)に密かに恋していた……。

音楽はフランスの作曲家・指揮者ジャン・ブーシェティ(1920〜2006)。このスコアは、公開当時にフランスのPolydorレーベルから全16曲/約33分半収録のサントラLP(Polydor 2393.282)が出ていたが、このCDは同内容をリマスターしたもの。「Fourberies et tarentelle de Scapin」は、ドラマティックなイントロからややメランコリックな主題、躍動的なタランテラ(イタリア・ナポリの舞踏音楽)の主題へと展開する曲。「Thème Argante」も、躍動的なタッチのアルガントの主題。「Litanies sans parole」は、コーラスとオルガンをフィーチャーした荘厳でジェントルな曲。「Les Fourberies de Scapin」「La gagliarde des tréteaux」も、躍動的なタランテラによる曲。「Oraison pour un fourbe」は、ストイックなタッチの曲。「O Pescator di Napoli」は、男声ヴォーカルによるメランコリックなタッチの挿入歌(作曲:ジャン・ブーシェティ、作詞:フランク・ジェラール)。「Les Fourberies de Scapin (Intermède)」「Les Fourberies de Scapin (Bastonnades)」は、メランコリックでドラマティックなタッチの曲。「Thème Géronte」は、ドラマティックで躍動的なジェロントの主題。「Les orgues d'Argante」は、オルガンをフィーチャーしたメランコリックな曲。「Marche comédie」は、ミリタリスティックなマーチ。「Les Fourberies de Scapin (Mélodie)」は、チェロ、ピアノをフィーチャーしたメランコリックな曲。「Thème Léandre」は、ダイナミックで躍動的なレアンドルの主題。「Les Fourberies de Scapin (Final)」は、メランコリックな主題から後半ドラマティックに盛り上がるフィナーレ。エモーショナルでカラフルなオーケストラルスコア。

ジャン・ブーシェティは、1949年にジオ・ダリーのジャズ・カルテットでダブルベースを演奏していたが、エディ・ミッチェル、ミシェル・フュガン、ミシェル・ポルナレフといった歌手のアレンジャーを務めた後に、1957年にオーケストラの指揮者になった。1966年にロジェ・ヴァディム監督、ジェーン・フォンダ主演の「獲物の分け前」のスコアを「(TV)怪盗紳士アルセーヌ・ルパン」(1971〜1974)等のジャン=ピエール・ブルタイル(1942〜2024)と共同で作曲した他、いくつかの映画音楽を手がけている。

ジャン・ブーシェティが手がけた作品には
「(未公開)À pleines mains」(1960)
「(未公開/TV)Otari 17」(1965)
「獲物の分け前(La curée)」(1966)
「(未公開)Baksmälla」(1973)
「(未公開)Trop c'est trop!」(1975)
「(未公開)インモラル・ドクター/セックス治療大混乱(Under the Doctor)」(1976)
「(未公開)C'est encore loin l'Amérique?」(1980)
「(未公開)Cherchez l'erreur」(1980)
「(未公開)Les fourberies de Scapin」(1981)
「(未公開)Belles, blondes et bronzées」(1981)
「(未公開)ギャル・ハント(Comment draguer toutes les filles...)」(1981)
「(未公開)Le bourgeois gentilhomme」(1982)
「(未公開)On n'est pas sorti de l'auberge」(1982)

等がある。


「(未公開)LE FOU DU ROI」は、1984年製作のフランス映画。監督・脚本は「シシリアン」(1969)「ボルサリーノ」(1970)「仁義」(1970)「ボルサリーノ2」(1974)「アラン・ドロンのゾロ」(1974)「フリック・ストーリー」(1975)といったアラン・ドロン出演作品に端役で出演しているスタントマンで「(未公開)BONS BAISERS DE HONG-KONG」(1975)「(未公開)PRESIDENT'S TARGET」(1989)といった監督作があるイヴ・シッフル(1936〜2016)。出演はミシェル・リーブ、ジャン・ドザイー、ディアーヌ・ベレゴ、イヴ・シッフル、ブリジット・バリー、エリザベート・カザ、ハワード・ヴァーノン、ガエタン・ブルーム、マック・ロネイ、ジャン=クロード・ドレフュス、ギイ・ドゥロルム、ジェシカ・グレイエ、ジェラール・ザルクベール、エチエンヌ・ドラベール、サム・ベルネット他。撮影はジャン=フランソワ・ゴンドル。国王ルイ14世(ドザイー)の護衛かつ腹心となった好事家のデュードネ(リーブ)は、四銃士の1人である剣豪ダルタニャンの息子だったが、父とは正反対に仕事も決闘も苦手だった……。

音楽はドミニク・ペリエ(1948〜2023)とサム・ベルネット。このスコアは、公開当時にフランスのBernett RecordsレーベルからサントラLP(Bernett Records SB 18009)が出ていたが、このCDは同内容をリマスターしたもの。「Générique」は、スワッシュバックリング活劇のパロディ的なコメディ映画にふさわしいダイナミックでヒロイックなマーチ調のメインタイトル。「Le piège」は、ダイナミックでヒロイックな主題からサスペンス調へ展開。「Le voyage du Roi」「Promenade」は、パンフルートをフィーチャーしたジェントルなタッチの曲。「La chevauchée du fou du Roi」「Poursuite」は、ダイナミックなサスペンスアクション音楽。「Histoires belges」「Illustrations」は、躍動的なタッチの曲。「Chant de bataille」は、軽快でミリタリスティックなマーチ。「Duels de Taillevent et Dieudonné」は、チェロをフィーチャーした躍動的でサスペンスフルな曲。「Marchegai」「La ballade des amoureux」は、ジェントルでリリカルなタッチの曲。「La cour des Miracles」は、不吉なタッチのサスペンス音楽。「La messe noire」は、不気味な人声を織り込んだ幻想的な曲。「Thème à Auréline (Générique fin)」は、ニコレッタのヴォーカルによるメランコリックでドラマティックなエンドタイトル(作曲:サム・ベルネット、作詞:ジュリー・ソニ・アロイ)。ダイナミックなオーケストラルスコア。

フランスの作曲家・電子音楽ミュージシャンのドミニク・ペリエは、音楽家・シンセサイザー奏者のジャン=ミシェル・ジャール(1948〜/モーリス・ジャールの息子)との共演で多数のアルバムを録音している他、フランスの電子音楽バンドSPACE ARTやフランスのロックバンドSTONE AGEとも共演している。映画音楽では「暗殺の報酬」(1984/監督:ボブ・デコー、出演:フィリップ・レオタール、アニー・ジラルド、ジュリエット・ビノシュ)を含む3作品を手がけている。

ドミニク・ペリエ
が手がけた作品には
「(未公開)Le fou du roi」(1984)
「暗殺の報酬(Adieu blaireau)」(1985)
「(未公開)Les gens honnêtes vivent en France」(2005)

がある。

作曲家・作詞家・ラジオ番組のホストでナイトクラブオーナーのサム・ベルネットは、俳優・作曲家として「(未公開)LE FOU DU ROI」に参加している以外に映画作品のクレジットはない。


尚、この3枚組CDの収録作品は以下の通り:

DISC 1
・(未公開)LES FOURBERIES DE SCAPIN(作曲:ジャン・ブーシェティ)
・(未公開)LE FOU DU ROI(作曲:ドミニク・ペリエ、サム・ベルネット)

DISC 2
(未公開)EXTÉRIEUR, NUIT(作曲:カール=ハインツ・シェーファー)
(未公開)POLAR(作曲:カール=ハインツ・シェーファー)

DISC 3
・(未公開)LES FAUSSES CONFIDENCES(作曲:ジャン・ミュジー)
・(未公開)LE CŒUR À L'ENVERS(作曲:ジャン・ミュジー)
・(未公開)LE BAHUT VA CRAQUER(作曲:ジャン・ミュジー)

(2024年4月)

Jean Bouchéty

Dominique Perrier

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