レア・サウンドトラックス Volume 7(2) LES B.O. INTROUVABLES - VOLUME 7 / CD2
(未公開)EXTÉRIEUR, NUIT
(未公開)POLAR
作曲:カール=ハインツ・シェーファー
Composed by KARL-HEINZ SCHÄFER
(仏Music Box Records /
MBR-B7)
フランスのMusic
Boxレーベルが、あまり知られていないマイナーなフランス映画音楽をシリーズで紹介しているサウンドトラック集の第7弾(350枚限定プレス)で、今回はフレンチポップスの指揮者・編曲者にスポットを当てたコンピレーション。CD3枚組となっており、ここではその2枚目に収録されたカール=ハインツ・シェーファー(1932〜1996)作曲による、イラン出身のジャック・ブラル監督(1948〜2021)の2作品のスコアを紹介。
「(未公開)EXTÉRIEUR, NUIT」は、1980年製作のフランス映画。出演はクリスティーヌ・ボワッソン、アンドレ・デュソリエ、ジェラール・ランヴァン、ジャン=ピエール・サンティエ、マリー・ケイム、エリザベート・マルゴニ、リディ・プリュヴォ、アンリ=ジャック・ユー、クリスチャン・ドゥローノー、ローラン・デュフォー、ジャン=フランソワ・ゴンドル、クリスチャン・ルート、ディディエ・ルヴァレ、シルヴィー・ピネル他。ノエル・ブルシュの原案を基にジャック・ブラル、ジャン=ポール・ルカとジュリアン・レヴィが脚本を執筆。撮影はピエール=ウィリアム・グレン。
生活に困窮したパリのジャズ・ミュージシャン、レオ(ランヴァン)は、彼の友人で同じく金欠に苦しむ作家のボニー(デュソリエ)のアパルトマンに転がり込んで、同居しはじめる。ある夜、酒に酔って食堂を出たレオは、道に停車していたタクシーに乗り込んで、支払う金がないにもかかわらず行先を告げる。驚いたことにそのタクシーの運転手はコーラという名の美しい女性(ボワッソン)だった。レオを目的地まで送り届けたコーラに、レオは文無しであることを告白するが、コーラは自分とセックスすることで支払うようにレオに迫るのだった……。
カール=ハインツ・シェーファーのスコアは、公開当時の1980年ににフランスのHexagoneレーベルから全19曲/約36分収録のサントラLP(Hexagone
883040)が出ていたが、このMusic BoxのCDは同内容をリマスターしたもの。「Extérieur, nuit (Générique
début)」は、サックス、バンドネオン、ストリングスをフィーチャーしたリズミックでスリリングなタッチのメインタイトル。「Sax
en ballade」「Nuit」は、サックスによるクールなジャズ。「Bony t'es beau」「Onze ans
déjà」「Deuxième rencontre」「Comment peut-on juger les gens ?」は、サックス、フルート、ストリングス等によるメインの主題のバリエーション。「Première
rencontre」は、バンドネオンによる静かにドラマティックな曲。「Tu ne me croiras pas」は、サックスとバンドネオンによるメランコリックなタッチ。「Sur
les quais」「L'agresseur agressé」「Cora」「Taxi jour」「Elle s'est barrée」も、バンドネオンをフィーチャーしたメランコリックな曲。「Un
taxi dans la nuit」は、メインの主題を含むリズミックでスリリングなタッチ。「La virée」は、メインの主題を含むメランコリックでドラマティックな曲。「P'tit
rigolo」は、バンドネオンとストリングスによるメインの主題の舞踏音楽風アレンジメント。「La chasse」は、バンドネオンによる躍動的なタッチの曲。「Extérieur
(Générique fin)」は、ストリングス、サックスをフィーチャーしたメインの主題のリプライズ。バンドネオンの演奏はフアン・ホセ・モサリーニ。
「(未公開)POLAR」は、1984年製作のフランス映画。出演はジャン=フランソワ・バルメ、サンドラ・モンテーギュ、ピエール・サンティーニ、ローラン・デュビヤール、クロード・シャブロル、ジャン=ポール・ボネール、マルク・デュディクール、ジェラール・エロルド、ジェラール・ルーシーヌ、マックス・ヴィル、カトリーヌ・アルコヴェール、ジャン・バルネ、アンシエット・バンジャミン、ドミニク・ブリアン、ジャン・シェルリアン他。ジャン=パトリック・マンシュットの原作『Morgue
pleine』を基にジャック・ブラル、ジャン=ポール・ルカとジュリアン・レヴィが脚本を執筆。撮影はジャック・ルノワールとジャン=ポール・ロサ・ダ・コスタ。
パリの警官だったユージーヌ・タルポン(バルメ)は、農夫が催涙ガス入り爆弾で殺された事件を捜査していたが、収拾がつかなくなり解雇されてしまった。その3年度、私立探偵になったユージーヌは、美しい女性シャルロット・ル・ダンテックス(モンテーギュ)に事件の調査を依頼される。彼女のルームメイトだったルイーズが彼女たちの部屋で殺された事件で、警察はシャルロットを犯行の容疑者と見ているらしかった。事件の調査を始めたユージーヌにも死の危険が迫るが……。
カール=ハインツ・シェーファーのスコアは、公開当時の1984年ににフランスのDisques
DreyfusレーベルからサントラLPが出ており、その後2003年に同じDisques Dreyfusレーベルが「(未公開)EXTÉRIEUR,
NUIT」とカップリングにした全21曲/約78分半収録のCD(Disques Dreyfus FDM
36258-2)を出してたが、このMusic BoxのCDは同内容をリマスターしたもの。「Polar #1」〜「Polar
#18」の全18曲から成る「Variations sur 4x3 notes」という変奏曲で、全編が途切れのない長い1曲になっている。オーケストラにハーモニカ、幻想的な女声、ギター、ピアノ、サックス等を加えた編成による演奏で、アブストラクトなタッチから、重厚でサスペンスフルなタッチ、ドラマティックでスリリングなタッチと展開していく。特に「Polar
#9」は、オーケストラによるダイナミックなサスペンス音楽、「Polar #14」「Polar #17」は、ピアノとオーケストラによる重厚でダイナミックなサスペンス音楽となっている。ハーモニカはトミー・ライリー、サックスはパトリック・ブールゴワン、ヴォーカルはダニエル・リカリ。
カール=ハインツ・シェーファーは、1932年にドイツのフランクフルト・アム・マインでユダヤ人の両親のもとに生まれたが、第二次大戦中に母とともにアメリカに渡り、そこでピアノとフルートを学んだ。その後ハイデルベルグ大学で哲学と言語学を学んだ彼は、1950年代初頭にパリに落ち着いた。パリ国立高等音楽・舞踊学校ではオリヴィエ・メシアンに師事し、夜はナイトクラブでピアノを演奏したが、スタン・ゲッツと共演したこともあった。アメリカ陸軍の基地を演奏ツアーで回り、アラビア音楽とインド音楽の知識を深めた。1960年代以降、アダモやシャルル・アズナヴールといった歌手のアレンジャーを務め、ミシェル・マーニュのもとで映画音楽を仕事を始めた。1980年代以降は、パトリック・シュールマン監督や、音楽家のジャン=ルイ・ブッシとの仕事を多く担当した。
カール=ハインツ・シェーファーが手がけた作品には
「(未公開)Les gants blancs du diable」(1973)
「(未公開)Tendre Dracula」(1974)
「恋のモンマルトル(Zig Zig)」(1975)
「(未公開/TV)L'île aux trente cercueils」(1979)
「(未公開)La ville des silences」(1979)
「(未公開)L'empreinte des géants」(1980)
「(未公開)Extérieur, nuit」(1980)
「(未公開)Polar」(1984)
「(未公開)831, voyage incertain」(1986)
「ストリート・オブ・ノー・リターン(Street of No Return)」(1989)
「(未公開)Comédie d'amour」(1989)
「(未公開)Vent d'est」(1993)
等がある。
尚、この3枚組CDの収録作品は以下の通り:
DISC 1
・(未公開)LES
FOURBERIES DE SCAPIN(作曲:ジャン・ブーシェティ)
・(未公開)LE FOU DU
ROI(作曲:ドミニク・ペリエ、サム・ベルネット)
DISC 2
・(未公開)EXTÉRIEUR,
NUIT(作曲:カール=ハインツ・シェーファー)
・(未公開)POLAR(作曲:カール=ハインツ・シェーファー)
DISC 3
・(未公開)LES FAUSSES CONFIDENCES(作曲:ジャン・ミュジー)
・(未公開)LE CŒUR À
L'ENVERS(作曲:ジャン・ミュジー)
・(未公開)LE BAHUT VA CRAQUER(作曲:ジャン・ミュジー)
(2024年5月)
Karl-Heinz Schäfer
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