007/オクトパシー OCTOPUSSY
作曲・指揮:ジョン・バリー
Composed and Conducted by JOHN BARRY
(米La-La Land Records / LLLCD1637)
1983年製作のイギリス映画。監督は「007/ユア・アイズ・オンリー」(1981)「007/美しき獲物たち」(1985)「007/リビング・デイライツ」(1987)「007/消されたライセンス」(1989)「エイセス/大空の誓い」(1991)「ネバー・セイ・ダイ」(2001)等のジョン・グレン(1932〜)。出演はロジャー・ムーア、モード・アダムス、ルイ・ジュールダン、クリスティナ・ウェイボーン、カビール・ベディ、スティーヴン・バーコフ、デヴィッド・メイヤー、トニー・メイヤー、デスモンド・リュウェリン、ロバート・ブラウン、ロイス・マクスウェル、ウォルター・ゴテル、ヴィジェイ・アムリトラジ、ジェフリー・キーン、ダグラス・ウィルマー、イングリッド・ピット他。イアン・フレミング(1908〜1964)の原作『Octopussy』『Property
of a Lady』を基に「三銃士」(1973)「四銃士」(1974)「王子と乞食」(1977)等のジョージ・マクドナルド・フレイザー(1925〜2008)、リチャード・メイボームとマイケル・G・ウィルソンが脚本を執筆。撮影はアラン・ヒューム。フレミング原作の“007/ジェームズ・ボンド”シリーズの第13作目で、3代目ボンド俳優のサー・ロジャー・ムーア(1927〜2017)にとって6本目の作品。
中南米の某国で軍事基地に潜入したイギリス情報部員ジェームズ・ボンド(ムーア)は、小型ジェット機アクロスターを操縦して敵のミサイルをかわし、格納庫を爆破する。一方、ベルリンでは情報部員009がイギリス大使館で倒れて絶命し、その手には偽のファベルジュ・エッグがあった。上司“M”(ブラウン)から009の任務を引き継ぐよう命じられたボンドは、競売場で本物のファベルジュ・エッグをアフガニスタンの王族カマル・カーン(ジュールダン)と競り合い、こっそり偽物にすり換えたエッグをカマルに競り落とさせた。その頃クレムリンでは、ゴーゴル将軍(ゴテル)の宥和政策をオルロフ将軍(バーコフ)が非難し、攻撃を主張していた。ボンドはカマルの後を追って、インドのウダイプルに行き、現地情報部員ヴィジェイ(アムリトラジ)に出迎えられる。カマルは殺し屋ゴビンダ(ベディ)を送り込んでボンドを始末しようとするが、ボンドは雑踏の中で殺し屋を撃退する。ボンドは、カマルのパートナーでサーカスのオーナーであるオクトパシー(アダムス)という女性の存在を知る。カマルとオクトパシーはオルロフと組んでクレムリンの宝石を偽物とすり換え、サーカスを隠れみのにして国境を越えようとしていた……。製作費は約2750万ドル。初代ボンド俳優のサー・ショーン・コネリー(1930〜2020)がボンド役に復帰した「ネバーセイ・ネバーアゲイン」(1983/監督:アーヴィン・カーシュナー)と同じ年に公開され、この映画が全世界興行収入約1億6000万ドルだったのに対し、「007/オクトパシー」は約1億8700万ドルを稼ぎだした。
音楽は「007/ドクター・ノオ」(1962)「007/ロシアより愛をこめて」「007/ゴールドフィンガー」(1964)「007/サンダーボール作戦」(1965)等シリーズ前半の常連作曲家で、本作がシリーズ9本目の登板となるジョン・バリー(1933〜2011)。このスコアは公開当時の1983年に米A&Mレーベルから全11曲/約35分半収録のサントラLP(A&M
Records SP-4967)が出ており、同じ内容のCDも出ていたが、1997年には米Rykodiscレーベルから全14曲収録のCD(Rykodisc RCD
10705)が出ていた。La-La
Landレーベルが2024年2月にリリースした全48曲/約111分半収録の“40周年記念盤”CDは2枚組となっており、1枚目には初収録となるオリジナル・スコアと追加音楽、2枚目には過去のサントラLPの内容のリマスター版と主題歌のインストゥルメンタル版(初CD化)を収録。5000枚限定プレス。
CD1枚目の冒頭「Gun Barrel and Airbase」は、銃口の中に現れたボンドがこちらに向けて銃を発射するいつものオープニングに流れる“ジェームズ・ボンドのテーマ”(作曲:モンティ・ノーマン)から、重厚なサスペンス音楽へと展開。「Bond
Look-Alike」は、ボンドの主題から抑制されたサスペンス音楽へ。「Fill Her Up」は、ヒロイックなファンファーレ調からジェントルな主題へ。「All
Time High (Performed by Rita Coolidge)」は、アメリカの歌手リタ・クーリッジ(1945〜)のヴォーカルによる主題歌。バリーらしい大らかで、かつセンシュアルなタッチの曲。「009
Gets the Knife and the Property of a Lady」「India」「Magda and Spend the Money
Quickly, Mr. Bond」は、重厚なサスペンス音楽。「Kremlin Art Repository and
Sotheby's」は、ボンドの主題を織り込んだ抑制されたサスペンス音楽。「Gobinda Attacks」も、ボンドの主題を含むダイナミックなサスペンスアクション音楽。「Easy
Come, Easy Go」「Fight with Mischka」「Gorilla Suit and Death of Grischka」も、ダイナミックなサスペンスアクション音楽。「All
Time High (Instrumental)」「That's My Little Octopussy」は、主題歌のインストゥルメンタル版。「Arrival
at the Island of Octopussy」「Bond at the Monsoon Palace」「The End of General
Orlov」は、重厚でドラマティックな曲。「Palace Intrigue」「Yo-Yo Fight and Death of
Vijay (Extended Version)」「Checkpoint Charlie and the Romanov Star」「The Chase
Bomb Theme (Film Version)」「The Bomb Arrives and Clowning Around」は、ダークなサスペンス音楽。「The
Mysterious Octopussy」「Bond Meets Octopussy」は、静かにドラマティックでミステリアスなタッチ。「Follow
That Car」は、ボンドの主題。「The Palace Fight (Extended Version)」は、ダークなサスペンス調から後半ボンドの主題を織り込んだダイナミックなサスペンスアクション音楽へ。「Kamal
Khan's Death and Finale」は、ジェントルなタッチのフィナーレ。「All Time High – End
Title (Performed by Rita Coolidge)」は、リタ・クーリッジのヴォーカルによる主題歌のリプライズ。この後に追加音楽としてソース曲等8曲「British
Ambassador」「Vijay's Pungi」「Gangaur Ghat」「Bazaar」「Let the Sport Commence」「The
Hunt Continues」「The Floating Palace」「Distraction」を収録。
ジョン・バリーは「ネバーセイ・ネバーアゲイン」のスコアを依頼されたが、オリジナル・シリーズを優先して断った(「ネバーセイ・ネバーアゲイン」のスコアはミシェル・ルグランが担当)。この「007/オクトパシー」では、オリジナル・シリーズであることを強調するためにボンドの主題を頻繁に使用したという。
(2024年6月)
John Barry
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