Date of Birth: 1906/1/31
Place of Birth: London, England, UK
Date of Death: 1973/2/12
Mini Biography:
Frankel's apprenticeship to a watchmaker at the age of 14 lasted for only about a year when his pianistic talents attracted the attention of the American pianist Victor Benham who persuaded his parents to allow him to study music full-time. Still in his teens, he began to earn his living as a jazz pianist, violinist and arranger. By the early 1930's he was in great demand as an arranger and musical director in London's West End. Eventually he became one of England's best known film music composers, writing ultimately over 100 scores. His first major work was the Violin Concerto dedicated "In memory of the six million", a reference to the Jews slaughtered in the Holocaust. It was commisioned for the 1951 Festival of Britain and first performed by Max Rostal. During the last fifteen years of his life, he wrote a cycle of eight Symphonies, other orchestral and chamber works and a three act opera based on John Whiting's Marching Song.
バルジ大作戦
BATTLE OF THE BULGE 作曲:ベンジャミン・フランケル 指揮:ウェルナー・アンドレア・アルベルト 演奏:クィーンズランド交響楽団 (独CPO / 999 696ー2) |
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1965年製作の第二次大戦もの。監督は「史上最大の作戦」「素晴らしきヒコーキ野郎」「長い長い決闘」「モンテカルロ・ラリー」「太陽にかける橋/ペーパー・タイガー」等で知られるイギリス人のケン・アナキン。出演はヘンリー・フォンダ、ロバート・ショー、ロバート・ライアン、チャールズ・ブロンソン、テリー・サヴァラス、ダナ・アンドリュース、ピア・アンジェリ、ジョージ・モントゴメリー、タイ・ハーディン、ハンス・クリスチャン・ブレヒ、ウェルナー・ペータース、ジェームズ・マッカーサー他。脚本はフィリップ・ヨーダン、ミルトン・スパーリングとジョン・ミルトン、撮影はジャック・ヒルデヤードが担当。
1944年、第二次大戦末期のヨーロッパ戦線を舞台に、敗色濃いドイツ軍がアルデンヌの森で連合軍に仕掛けた反撃作戦を描く、史実に基づくスペクタクル。イギリス人のロバート・ショーが冷徹なドイツ軍人、へスラー大佐をストイックに演じているが、ドイツ軍自体は同じケン・アナキンが監督した「史上最大の作戦」のように公平には描かれていない(もっともこの映画はドイツ軍の部分をドイツ人のベルンハルト・ヴィッキが監督したが)。ドイツ軍のタイガー戦車もアメリカ製の戦車を改造したものだったりして、あまりリアリティはないが、娯楽アクション映画としては手堅くまとまっていた。
この映画のサントラ盤は、作曲者自身が指揮したロンドンのニュー・フィルハーモニア管弦楽団の演奏によるLPアルバムが当時ワーナーからリリースされており、その後、同じ音源で日本のSLCレーベルがCDを復刻していた。今回CPOレーベルによりリリースされたアルバムは、クラシック音楽の指揮者であるアルベルトが1998〜1999年にコンプリート・スコアを演奏し、新たに録音し直したもので、未発表の音楽をかなり含んでいる。このスコアを書いたベンジャミン・フランケル(1906〜1973)は、当時のイギリス映画音楽界を代表する実力派作曲家の一人で、「第七のヴェール」(1945)「夜霧の都」(1949)「吸血狼男」(1960)「暗黒の銃弾」(1962)「イグアナの夜」(1964)等のスコアを担当しているが、一般的に最もよく知られているのはこの「バルジ大作戦」の音楽で、これは彼が劇場映画用に書いた最後のスコアでもある。
サントラ盤を最初に聴いた時には、勇壮なドイツ軍戦車隊のテーマ(アドルフ・ホフマン作曲)を組み込んだプレリュードや戦闘シーンの音楽等、非常に武骨なスコアという印象があったが、今回の新録音による完全盤を聴き直してみると、ウィリアム・ウォルトンやリチャード・アディンセルに通ずる、イギリスの古典的な映画音楽の優雅さや高貴さを兼ね備えたダイナミックでエモーショナルなフィルムスコアであることが再認識させられる(フランケルは、ウォルトンやアディンセルと同様クラシック音楽の作曲家としても知られている)。激しい戦闘シーンの音楽にもエレガントさを感じさせるところが、いかにもイギリスの作曲家らしい。アルベルトの指揮による演奏も力強く、録音も非常に鮮明。全編で79分近く収録されており、聴き応えがある。
この60年代のスコアが今になって再録音された理由は不明だが、同じイギリスの作曲家マルコム・アーノルドによる傑作戦争映画スコア「テレマークの要塞」等も是非新録音でリリースしてもらいたい。
(2000年7月)
ベンジャミン・フランケル映画音楽集
BENJAMIN FRANKEL: MUSIC FOR THE MOVIES 作曲:ベンジャミン・フランケル 指揮:ウェルナー・アンドレア・アルベルト 演奏:クィーンズランド交響楽団 (独CPO / 999 809-2) |
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<収録曲>
1. (未公開)The Importance of Being
Earnest
2. 吸血狼男 The Curse of the Werewolf
3. イグアナの夜 The Night of the Iguana
4. (未公開)Trottie True
5. (未公開)The Years Between
6. デッドロック Footsteps in the Fog
イギリスのクラシック音楽作曲家ベンジャミン・フランケルによる代表的な映画音楽を集めた新録音によるコンピレーション。フランケルは8つの交響曲とオペラをはじめとした多数のクラシック音楽作品を残しているが、一方で、1934年に「(未公開)Radio Parade of 1935」というコメディ映画の音楽を手がけて以来、100本以上の映画にスコアを作曲している(特に1950年代は精力的に映画の仕事をしており、1954年だけでなんと8本の映画を手がけている)。これだけの多作にもかかわらず、フランケルの映画音楽のサントラアルバムや新録音は過去にほとんどリリースされていなかったが、彼の管弦楽曲等をレコーディングしている指揮者のウェルナー・アンドレア・アルベルトが2000年に「バルジ大作戦」のコンプリートスコアを新録音してCD化したことで、フランケルのフィルムスコアが再認識されるようになった。今回、同じレーベルから、同じ指揮者/オーケストラの演奏によりリリースされたこの作品集は、フランケルの映画音楽の一端を垣間見ることができる貴重なアルバムと言える。全体としては、ジャズ・ピアニスト/アレンジャーでもあったフランケルのライト・ミュージック的なタッチと、独特のユーモアのセンスを感じさせる作風が印象的で、他のクラシック畑のイギリスの映画音楽作曲家よりも親しみやすい音楽を作曲していると思う。
1. (未公開)The Importance of Being Earnest
1952年製作のイギリス映画。監督はアンソニー・アスキス。出演はマイケル・レッドグレーヴ、リチャード・ワッティス、マイケル・デニソン、ウォルター・ハッド、イディス・エヴァンス、ジョーン・グリーンウッド、マーガレット・ラザフォード他。オスカー・ワイルドの戯曲をベースにしたコメディで、脚本は監督のアスキスが執筆。フランケルのスコアもコメディ映画にふさわしく非常に陽気で快活なタッチが楽しい。
2. 吸血狼男 The Curse of the Werewolf
ホラー映画で知られるイギリスのハマー・フィルムが1960年に製作した作品。監督はハマーの常連テレンス・フィッシャー。出演はオリヴァー・リード、クリフォード・エヴァンス、イヴォンヌ・ロメイン、キャサリン・フェラー、アンソニー・ドーソン、ジョセフィーヌ・リューウェリン、リチャード・ワーズワース、マイケル・リッパー他。製作はアンソニー・ハインズとマイケル・カレラス。ガイ・エンドアの原作を基にジョン・エルダー(ハインズの別名)が脚本を執筆。撮影はアーサー・グラント。18世紀のスペインで、一人の女性が浮浪者にレイプされ子供を身ごもるが、やがて男の子を生んで死亡する。成長した子供は幸せな結婚をするが、彼は実は狼男だった……。ホラー映画ではあるが、ここでは牧歌的な「Pastoral」という曲が演奏され、マーラーの交響曲を思わせる美しいパッセージが印象的。因みにフランケルはハマー・フィルムで「七つの海の難破野郎(I Only Arsked)」(1959) という映画のスコアも担当している。
3. イグアナの夜 The Night of the Iguana
テネシー・ウィリアムズの舞台劇を基にした1964年製作のアメリカ映画。監督はジョン・ヒューストン。出演はリチャード・バートン、デボラ・カー、エヴァ・ガードナー、スー・リオン、グレイソン・ホール、シリル・デレバンティ他。製作はレイ・スターク、脚本はアンソニー・ヴェイラーとヒューストン、撮影はガブリエル・フィゲロアが担当。落ちぶれた元牧師と彼を巡る2人の女性の恋愛劇を描いたドラマで、1964年度アカデミー賞の助演女優賞(グレイソン・ホール)、撮影賞(白黒)、美術監督・装置賞(白黒)にノミネートされ、衣装デザイン賞(白黒)を受賞した。公開当時に6曲から成るサントラアルバムがリリースされていたが、ここでは全10曲のコンプリートスコアが演奏される。静かで荘厳な「Prelude」、サスペンス調の「Shannon Shanghaies the Coach」、美しく繊細なラブテーマ「Hanna & Shannon Theme」等が印象的。
4. (未公開)Trottie True
1949年製作のイギリス映画。監督はブライアン・デズモンド・ハースト。出演はジーン・ケント、ジェームズ・ドナルド、ヒュー・シンクレア、ラナ・モリス、アンドリュー・クロフォード他。舞台女優トロッティー・トゥルーのキャリアとロマンスを描いたミュージカル。無名の頃のクリストファー・リーとロジャー・ムーアが端役で出ている。明るくパワフルな「Gaiety Galop」「Trottie True Trot」やユーモラスな「The Life and Times of a Gaiety Girl」が楽しい。
5. (未公開)The Years Between
1946年製作のイギリス映画。監督はコンプトン・ベネット。出演はマイケル・レッドグレーヴ、ヴァレリー・ホブソン、フローラ・ロブソン、フェリックス・アイルマー、ジョン・ギルピン他。ヒッチコックの「レベッカ」や「鳥」の原作者として知られるダフネ・デュ・モーリエの戯曲を基にしたメロドラマで、ミュリエル・ボックスとシドニー・ボックスが脚本を執筆。もとはピアノ曲として作曲されたものだが、このアルバム用にE・D・ケナウェイが弦楽曲としてアレンジしている。上品で優雅な曲。
6. デッドロック Footsteps in the Fog
1955年製作のイギリス映画。監督はアーサー・ルービン。出演はスチュワート・グレンジャー、ジーン・シモンズ、フィンレイ・カリー、ビル・トラヴァース、ロナルド・スクワイア、ベリンダ・リー他。W・W・ジェイコブスの原作「The Interruption」をベースにした殺人ミステリで、アーサー・ピアソン、ドロシー・リードとレノア・コフィが脚本を執筆。撮影はクリストファー・チャリス。この作品にはオリジナルスコアが全く存在していないため、E・D・ケナウェイが映画のサウンドトラックを聴いてリコンストラクトしたスコアをもとに演奏されている。「Prelude - The Lily Watkins Theme」はスケールの大きいイントロからエレガントな主題へと続く。「Lowry's Secret」はサスペンス調。「Lowry's Gamble - Finale」はメインテーマのリプライズから壮大なフィナーレで締めくくる。
ベンジャミン・フランケルが手がけたその他の映画音楽には、「第七のヴェール」(1945)「舞姫夫人」(1948)「夜霧の都」(1949)「コンクリートの中の男」(1949)「極楽ホテル」(1951)「ジェット機M7号」(1953)「汽車を見送る男」(1953)「若い恋人たち」(1954)「マラガ」(1954)「情事の終り」(1954)「彩られし幻想曲」(1954)「文なし横丁の人々」(1955)「ナイルを襲う嵐」(1955)「ロマンス・ライン」(1956)「私に殺された男」(1958)「七つの海の難破野郎」(1959)「17年目の恋の季節」(1961)「暗黒の銃弾」(1962)「戦慄の殺人屋敷」(1963)「バルジ大作戦」(1965)等がある。
(2002年3月)
吸血狼男 THE CURSE OF THE WEREWOLF
作曲:ベンジャミン・フランケル 指揮:カール・デイヴィス 演奏:ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団 (カナダNaxos / 8.557850) |
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1960年製作の英ハマー・フィルム・プロダクションによるホラー映画。監督は「フランケンシュタインの逆襲」(1957)「吸血鬼ドラキュラ」(1957)「フランケンシュタインの復讐」(1958)「ミイラの幽霊」(1959)「吸血鬼ドラキュラの花嫁」(1960)「妖女ゴーゴン」(1964)「凶人ドラキュラ」(1965)「フランケンシュタイン死美人の復讐」(1967)「悪魔の花嫁」(1968)「フランケンシュタイン恐怖の生体実験」(1969)等のハマー作品を手がけた名手テレンス・フィッシャー。出演はオリヴァー・リード、クリフォード・エヴァンス、イヴォンヌ・ロメイン、キャサリン・フェラー、アンソニー・ドーソン、ジョセフィーヌ・リューウェリン、リチャード・ワーズワース、ハイラ・タルフレイ、ジャスティン・ウォーターズ、ジョン・ガブリエル、マイケル・リッパー、ユアン・ソロン、ジョン・ベネット、デズモンド・リューウェリン他。ガイ・エンドアの原作「The Werewolf of Paris」を基にジョン・エルダー(アンソニー・ハインズ)が脚本を執筆。撮影はアーサー・グラント。18世紀のスペインで、召使の女性が浮浪者にレイプされ子供を身ごもるが、やがてクリスマスの日に男の子レオンを生んで死亡する。ドン・アルフレード(エヴァンス)に引き取られて成長したレオン(リード)は、勤め先のワイン・セラーで店主の娘クリスティナ(フェラー)に恋をするが、ある満月の夜に彼は狼男へと変貌してしまう……。
音楽はハマー・フィルムの「七つの海の難破野郎(I Only Arsked)」(1959)等も手がけているベンジャミン・フランケル。「Curse of the Werewolf / Prelude」は、ゴシックホラー的な重厚さを持った流麗なシンフォニーによるプレリュード。「The Beggar」は、軽快で牧歌的なタッチ。「Servant Girl and Beggar」は、中盤から激しいサスペンス調に。「Revenge and Escape」「A Deadly Transformation」「Leon Confronts the Horror」「Final Transformation」等は、ビジーなサスペンス・ホラー音楽。「Baptism」「Leon Imprisoned」もサスペンス調。「Pastoral」はジェントルでリリカルな曲。「Finale」は、ダイナミックなアクション・スコアから壮大なフィナーレへ展開。ハマー・フィルムというとジェームズ・バーナードの音楽が有名だが、ここでのベンジャミン・フランケルのスコアも、クラシック音楽の作曲家らしく格調高いドラマティック・アンダースコアとなっている。
尚、これは「Curse of the Werewolf and Other Film Music by
Benjamin Frankel」としてリリースされたカール・デイヴィス指揮による新録音のコンピレーションCDで、「吸血狼男」の他にベンジャミン・フランケル作曲の「(未公開)So
Long at the Fair」「ジェット機M7号(The Net)」「(未公開)The Prisoner」のスコアを収録。
(2006年7月)
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