ジェリー・ゴールドスミスのエピック・スコア

ジェリー・ゴールドスミスは1999年2月10日で70歳になった。なのに年間4〜5本の新作映画のスコアを書き、欧米や日本でのコンサート活動を精力的にこなした上に、過去の自作の新録音まで指揮するという超多忙ぶりである。しかも最近リリースされた「13ウォーリアーズ」や「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」「ムーラン」といったEPIC SCOREを聴くと、その驚異的なパワーとエネルギーに圧倒されてしまう。彼の子供の世代の若手作曲家が書くワンパターンで無機質なアクション・スコアなど到底及ばない緊迫感とダイナミズムに満ちており、いよいよもってベテランの孤高の実力を思い知らされる(その若手の中で一番頼りないスコアを書くのがゴールドスミスの息子だったりする……。しっかりせい!)。
ここでは過去の傑作を含め、ゴールドスミスのEPIC SCOREの幾つかを紹介してみようと思う。


13ウォーリアーズ THE 13th WARRIOR (1999)

作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH

(米Varese Sarabande / VSD-6038)

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マイケル・クライトンの小説「北人伝説」を映画化したスペクタクル(クライトンはプロデュースも担当)。監督はジョン・マクティアナンで、出演がアントニオ・バンデラス、ダイアン・ヴェノーラ、オマー・シャリフ他。バンデラス扮するアラブの英雄が北欧のヴァイキングと共に「Eater of the Dead(死者を喰らう者)」と呼ばれる謎の敵と戦うという荒唐無稽なストーリー。黒澤監督の「七人の侍」を想起させる豪雨の中での戦闘シーンがあるらしい。ゴールドスミスの音楽はアラブと北欧のヴァイキングのクロス・カルチャーをベースにした重厚なスコア(といってもヴァイキングの民族音楽というのは聞いたことがないので、その部分はゴールドスミスの創作であろう)。フレンチホルンと男声コーラスによる勇壮なテーマが印象的。複雑なリズムによる戦闘シーンの激しいアクションスコアはゴールドスミスの真骨頂。

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ハムナプトラ/失われた砂漠の都 THE MUMMY (1999)

作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH

(米Decca / 289466458ー2)

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ボリス・カーロフ主演のユニバーサルの古典ホラー「ミイラ再生」(1932)をリメイクしたアドヴェンチャー(但し内容は全く異なる。この題材には1959年製作のイギリスのハマー・フィルムによる「ミイラの幽霊」というリメイクもあり)。監督はスティーブン・ソマーズ、出演がブレンダン・フレイザー、レイチェル・ワイズ、ジョン・ハンナ他。地上に現われた邪悪なパワーが解き放つ「10の災い」を、ILMの最新のデジタル技術によるSFXで再現。ゴールドスミスのスコアは、過去の「風とライオン」にも通ずるアラビックなタッチによる一大スペクタクル交響楽で、とにかく全編ものすごいパワーとテンションに息つく暇も無い。フレンチホルンが鳴りまくる勇壮なマーチ風のメインテーマや、モーリス・ジャールの「砂漠音楽」を想わせる雄大で美しいサブテーマ等、バイタリティに溢れた内容が圧巻。ソマーズ監督とは前作「ザ・グリード」でも組んでいるが、B級エンターテインメントにも真正面から全力投球する姿勢がゴールドスミスのプロ意識を感じさせる。

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ムーラン MULAN (1998)

作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH

(米Disney / 60631-7)

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バリー・クック、トニー・バンクロフト共同監督によるディズニー・アニメ。中国で約2000年前から語り継がれる詩歌「木蘭辞」に登場するヒロイン「花木蘭(ムーラン)」の伝説を基にしたストーリー。このサントラCDにはマシュー・ワイルダー作曲=デヴィッド・ジッペル作詞による挿入歌が6曲、ゴールドスミスによるスコアが6曲収録されている。ディズニー・アニメの音楽というと、アラン・メンケン等のポップで明るいスコアを思い出すが、ここでのゴールドスミスのスコアは極めて硬質なスペクタクル音楽で、戦闘シーンの重厚なタッチはとてもアニメ音楽とは思えない。挿入歌を含めてまとめた「ムーラン組曲」は、実際に映画では使用されなかったが、このアルバム中で最も感動的な曲であり、日本で行われたゴールドスミスによるコンサートでも演奏された。尚、このスコアにはゴールドスミスがアカデミー賞に対するプロモーション用に作成したComplete Score(但し組曲を除く)のCDというのが存在していて、ここでは彼の素晴らしいスコアの全貌を聴くことができる。

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トゥルーナイト FIRST KNIGHT (1995)

作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH

(米Epic / EK67270)

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「アーサー王伝説」をベースにしたジェリー・ザッカー監督によるラブ・ストーリー&アドヴェンチャー。アーサー王をショーン・コネリー、剣士ランスロットをリチャード・ギア、グィネヴィアをジュリア・オーモンドが演じ、脇をベン・クロスや、英国演劇界の長老サー・ジョン・ギールガッドが固める。ゴールドスミスのフル・オーケストラル・スコアはアーサー王伝説にふさわしく壮麗で格調が高い。冒頭の 「Arthur's Fanfare」や、それに続く「Promise Me」等での優雅でヒロイックな響きは、傑作「ライオンハート」のスコアに通ずるものがある。

=2011年5月追記=

米La-La LandレーベルがCD2枚組/全41曲収録のExpanded盤をリリース(米La-La Land / LLLCD 1168)。5000枚限定プレス。収録曲は以下の通り。

 ★TOWER.JPで購入

Disc 1 - The Film Score

1 The Legend Of Camelot :58
2 Raid On Leonesse 5:12
3 True Love / The Ambush / First Sight 6:24
4 Does It Please You / Look At Me 3:25
5 Promise Me 2:20
6 Camelot 2:37
7 Gauntlet Drums 1:50
8 Meet the Queen :45
9 The Gauntlet / No Kiss 2:02
10 No Joy / Try Her / Wedding Plans / I Will Fight 2:58
11 Boat Trip 2:03
12 The Cave 2:14
13 Walls Of Air 1:33
14 Escape From The Cave 3:25
15 Prove It 2:55
16 A New Life 5:38
17 To Leonesse 3:24
18 Night Battle 5:53
19 Village Ruins 3:19
20 The Kiss 1:59
21 Open The Door /No One Move 1:58
22 Arthur's Farewell 5:25
23 Never Surrender 5:40
24 Camelot Lives 4:04

Disc Two - The 1995 Soundtrack Album

1 Arthur's Fanfare 0:45
2 Promise Me 4:04
3 Camelot 2:19
4 Raid On Leonesse 4:26
5 A New Life 4:54
6 To Leonesse 3:25
7 Night Battle 5:39
8 Village Ruins 3:20
9 Arthur's Farewell 5:25
10 Camelot Lives 5:40

1995 Soundtrack Time: 40:17

Additional Music

11 The Ambush / First Sight (alternate) 5:46
12 Boat Trip (alternate segment) 1:05
13 A New Life (alternate 1) 5:37
14 A New Life (alternate 2) 3:14
15 To Leonesse (alternate) 2:40
16 Village Ruins (alternate) 3:29
17 Never Surrender (alternate) 5:20

Total Time = 146:43

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(未公開)ライオンハート LIONHEART (1986)

作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH

(米Varese Sarabande / VCD47282、VCD47288)

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ゴールドスミスとのコラボレーションが有名な故フランクリン・J・シャフナー監督による史劇スペクタクル。出演はエリック・ストルツ、ガブリエル・バーン、ニコラ・カウパー他。私はUCLAでこの映画を監督と作曲家の解説付きで観たので、特に想い入れが深い。映画は日本で劇場公開されず、米国でもほぼストレートにビデオ市場に行ってしまったのでほとんど無名に近いが、シャフナー監督らしい気品のあるアドヴェンチャー作品だった。音楽は個人的にはゴールドスミスのベストスコアの1つだと思う。主人公ロバート(ストルツ)とブランチ(カウパー)のラブ・テーマや、女剣士マチルダのテーマ、悪役ブラックプリンス(バーン)のテーマ等、各キャラクターに印象的なテーマが付けられているが、何といってもエンドクレジットに流れるメインテーマ( 「King Richard」)が素晴らしい。ウィリアム・ウォルトンのマーチ風に優雅なタッチで始まり、これにブラスによる高らかなファンファーレがかぶさり、フル・オーケストラによる栄光に満ちたコーダで締めくくる文句無しの名曲。ゴールドスミスがシンセサイザーをオーケストラの一部として効果的に使い出したのもこの辺りからである。このスコアにはVolume 1とVolume 2の2枚のCDが別々にリリースされており(元のLPと同様)、更にこの2枚を1枚にまとめたダイジェスト版もある。

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(TV)炎の砦マサダ MASADA... THE HEROIC FORTRESS (1981)

作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH

(米Varese Sarabande / VSD-5249)

TV畑のベテラン、ボリス・セイガル監督によるTVムービー。出演はピーター・オトゥール、ピーター・ストラウス、バーバラ・カレラ、デヴィッド・ワーナー、アンソニー・クエイル他。死海でのローマ軍とユダヤ反乱軍との戦いを描く史劇。このスコアはゴールドスミスの作品中でも、「風とライオン」と並んで最も男性的な力強いヒロイズムを感じさせる音楽で、全編にみなぎるストイックなタッチと緊迫感が凄まじい。勇壮なメインタイトルも素晴らしいが、全体の白眉は中盤にある「The Road to Masada」という長めの曲で、重厚なマーチをベースとした極めて独創的な音楽。ラストの「The Slaves」という曲も厳しいストイシズムとハードボイルドなタッチがいかにもゴールドスミスらしい。

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風とライオン THE WIND AND THE LION (1975)

作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH

(米Intrada / MAF7005D)

20世紀初頭のモロッコを舞台に、米人未亡人(キャンディス・バーゲン)とその子供たちを誘拐したリフ族の首長(ショーン・コネリー)と、人質救出のために艦隊を派遣する米ルーズベルト大統領(ブライアン・キース)の駆け引きを描くエピック・フィルム。監督はタカ派で有名なジョン・ミリアス。アラブの民族色を取り入れたパワフルでスペクタキュラーな音楽が圧倒的迫力。野蛮なタッチの鋭いパーカッションで始まりフル・オーケストラが勇壮に奏でるメインタイトルや、極めてドラマティックでエモーショナルなラブ・テーマ「I Remember」、重厚なアクション・スコアのダイナミズムが堪能できる「Raisuli Attacks」等、どの曲にもゴールドスミスの個性がベストの形で現われた傑作。'70年代映画音楽中のベストスコアの1つ。ゴールドスミスはこのスコアでアカデミー賞の作曲賞にノミネートされた。
(1999年9月)

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