(未公開/TV)ゴーメンガースト GORMENGHAST

作曲:リチャード・ロドニー・ベネット
Composed by RICHARD RODNEY BENNETT

指揮:ジョン・ハール
Conducted by JOHN HARLE

演奏:BBCフィルハーモニー管弦楽団
Performed by the BBC Philharmonic Orchestra

(英Sony Classical / SK 89135)


マーヴィン・ピークが第二次大戦中に書いたファンタジー小説「タイタス・グローン」「ゴーメンガースト」を基に、イギリスのBBC放送が5年の歳月をかけて映像化したTVミニ・シリーズ(2000年放映)。監督はアンディ・ウィルソン。出演はネーヴ・マッキントッシュ、ジョナサン・リス=メイヤーズ、クリストファー・リー、イアン・リチャードソン、ジューン・ブラウン、アンドリュー・ロバートソン、リチャード・グリフィス、ジョン・セッションズ、リンゼイ・バクスター、ゾー・ワナメーカー、セリア・イムリー、オルガ・ソスノフスカ、ショーン・ヒューズ、ジョージ・イアスーミ、スティーブン・フライ、ウォーレン・ミッチェル、フィオナ・ショー他。

ゴーメンガーストと呼ばれる城の第77代王位継承者でありながら、継承権を捨て未知の世界へと旅立つ少年タイタス・グローン(ロバートソン)の成長の過程を描くファンタジー。脚本はマルコム・マッケイ、撮影はギャヴィン・フィニーが担当。脇で登場するフレイ役のクリストファー・リーと、グローン卿役のイアン・リチャードソンは、これまでに多数のファンタジー/ホラー映画に出演しているイギリスのベテランであり、いずれも過去にシャーロック・ホームズを演じたことがある名優。リーは、個人的にも原作者のマーヴィン・ピークと旧知の仲だったという。

イギリスのベテラン作曲家リチャード・ロドニー・ベネットは、ピークの創造したファンタジー世界を、英国の伝統を受け継ぐ荘厳な王室音楽と、ダークなタッチの情感豊かなドラマティックスコアで効果的に表現している。冒頭の「Song of Titus」は、アンドリュー・ジョンソンのソプラノからフル・オーケストラによるリッチでファンタスティックな主題へと展開する。続く「Celebration」は、ダイナミックなオーケストラサウンドが心地よい。「Fuchsia & Steerpike」では、ロマンティックなヒロインのテーマにスティアーパイク(リス=メイヤーズ)の邪悪なテーマが重なる。フレイ(リー)とスウェルター(グリフィス)の死闘を描いた「The Death of Swelter」や、「The Death of Barquentine」では、激しいアクション音楽を聴かせる。「Irma's Romance」は、ベネットらしい優雅なワルツで、ジャズピアニストとしても知られるこの作曲家の個性がよく出ている。
尚、スコア中の合唱曲(Choral Music)4曲;「The Christening」「The Earling」「The Carver's Ceremony」「Fuchsia's Funeral」のみ、ジョン・タヴナーが作曲し、ポール・グッドウィン指揮のThe Academy of Ancient Musicと、スティーブン・レイトン指揮のThe Choir of Temple Churchが演奏。これらは宗教的な神秘さをもった音楽で、ベネットによるスコア全体の雰囲気に違和感なく溶け込んでいる。

リチャード・ロドニー・ベネット(1936〜)は、現在も活躍中の映画音楽作曲家の中では、ジョン・スコットジョージ・フェントンと並び最も「イギリス的」な作風を感じさせる名手である。これまでに「遥か群衆を離れて」(1967)「ニコライとアレクサンドラ」(1971)「オリエント急行殺人事件」(1974)で3度アカデミー賞の作曲賞にノミネートされているが、その他にも、「10億ドルの頭脳」(1967)「レディ・カロライン」(1972)「エクウス」(1977)「魅せられて四月」(1992)「フォー・ウェディング」(1994)等、多数のスコアを担当している。この「ゴーメンガースト」はベネット久々のサントラ・アルバムだが、その情感豊かなイングリッシュ・サウンドが健在であることはファンとしても喜ばしい。
(2000年4月)

Richard Rodney Bennett

Soundtrack Reviewに戻る


Copyright (C) 2000  Hitoshi Sakagami.  All Rights Reserved.