ロン・グッドウィン映画音楽集  THE FILM MUSIC OF RON GOODWIN

作曲:ロン・グッドウィン
Composed by RON GOODWIN

指揮:ラモン・ガンバ
Conducted by RUMON GAMBA

演奏:BBCフィルハーモニー管弦楽団
Performed by the BBC Philharmonic

(英Chandos / CHAN 10262)

cover
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<収録曲>

1. 633爆撃隊 633 Squadron: Main Theme, Love Theme
2. フレンジー Frenzy: Main Theme
3. 剣豪ランスロット Lancelot and Guinevere: Main Theme
4. (未公開)Deadly Strangers: Main Theme
5. 空軍大戦略 The Battle of Britain Suite
  - Luftwaffe March (Aces High)
  - Prelude to Battle
  - Work and Play
  - Battle of Britain Theme
  - Early Encounter
  - Epilogue
6. (未公開)Whirlpool: Main Theme
7. 野獣の抱擁 The Trap: Main Theme "The London Marathon Theme"
8. 人間の絆 Of Human Bondage: Main Theme
9. モンテカルロ・ラリー Monte Carlo or Bust: Suite
10. 潜水艦X-1号 Submarine X-1: Main Theme
11. (未公開)Murder She Said: Miss Marple Theme
12. クロスボー作戦 Operation Crossbow: Main Theme
13. (未公開)Clash of Loyalties: Suite
14. 美女と野獣 Beauty and the Beast: Belle's Love Theme
15. ナバロンの嵐 Force Ten from Navarone: Main Theme
16. 荒鷲の要塞 Where Eagles Dare: Main Theme
17. 素晴らしきヒコーキ野郎 Those Magnificent Men in Their Flying Machines Selection

 

イギリスの映画音楽作曲家の代表作を新録音により紹介するChandosレーベルのシリーズの1枚で、ロン・グッドウィン(1925〜2003)のスコアを集めたコンピレーション。彼の主要な作品は過去にサントラ盤がリリースされており、自作自演のCDもいくつか出ているが、今回のガンバ=BBCフィル版は最新の録音による迫力ある音質で彼の傑作スコアが聴ける上に、「(未公開)Deadly Strangers」「(未公開)Whirlpool」「潜水艦X-1号」「(未公開)Clash of Loyalties」といった珍しいタイトルも含まれている。端整でありつつ力強い演奏も素晴らしい。

1. 633爆撃隊 633 Squadron

1964年製作のイギリス映画。監督はウォルター・E・グローマン。出演はクリフ・ロバートソン、ジョージ・チャキリス、マリア・パーシー、ハリー・アンドリュース他。脚本はハワード・コッチとジェームズ・クラヴェル。撮影はエドワード・スケイフ。第二次大戦中、ノルウェーにあるドイツ軍重水工場の爆撃を命じられた連合軍爆撃隊の活躍を描く戦争アクション。グッドウィンの作品中でおそらく最も有名な、ダイナミックで勇壮極まりないメイン・テーマと、リリカルで美しいラブ・テーマを収録。このスコアはサントラLP、CDが過去に出ており、メイン・テーマについては作曲家自身の指揮による新録音が何種類か存在する上、戦争映画スコアのコンピレーションにも大抵は入っている傑作。

2. フレンジー Frenzy

1972年製作のイギリス映画。アルフレッド・ヒッチコック監督がハリウッドで「サイコ」「めまい」「北北西に進路を取れ」といった傑作を撮った後に、母国イギリスで原点に戻って監督したダークでシニカルなサスペンス映画。出演はジョン・フィンチ、バリー・フォスター、ビリー・ホワイトロー、バーナード・クリッベンス、ジーン・マーシュ、アンナ・マッセイ他。アーサー・ラバーンの原作を基に「探偵・スルース」等の名手アンソニー・シェイファーが脚本を執筆。撮影はギルバート・テイラー。ロンドンを舞台にネクタイによる女性の絞殺事件の顛末を描く。当初アメリカ人のヘンリー・マンシーニがサスペンス調のスコアを作曲したが、ヒッチが気に入らず、イギリス人のグッドウィンに“観光映画風の”ロンドンの主題を作曲するように依頼したことは有名。ロンドン上空からテムズ河に架かるタワー・ブリッジを捉えたヘリコプター・ショットにかぶさる、格調高く荘厳なメイン・テーマが素晴らしい(カメラはこのまま下がっていって河に浮かぶ女性の絞殺死体で止まるが、ヒッチはこのラストショットを予期させないような優雅なメインタイトル音楽を希望したという)。

3. 剣豪ランスロット Lancelot and Guinevere

1963年製作のイギリス映画(アメリカ公開題名は「Sword of Lancelot」)。製作・監督・主演はコーネル・ワイルド。共演はジーン・ウォーレス、ブライアン・エイハーン、ジョージ・ベイカー、エイドリアン・コリ、ウォルター・ゴテル他。脚本はリチャード・シェイヤーとジェファーソン・パスカル。撮影はハリー・ワックスマン。アーサー王と円卓の騎士の伝説に登場する騎士ランスロットと王妃グイネヴィアの悲恋を描くアドベンチャー。勇壮なファンファーレからドラマティックな主題へと展開するメイン・テーマを収録。ロマンティックでエモーショナルな力作。

4. (未公開)Deadly Strangers

1974年製作のイギリス映画。監督はシドニー・ヘイヤーズ。出演はヘイリー・ミルズ、サイモン・ウォード、スターリング・ヘイドン、ケン・ハッチソン、ピーター・ジェフリー他。脚本はフィリップ・レヴィーン。イギリスの田舎町を舞台に、車の故障で立ち往生した女性(ミルズ)が、近くの精神病院から逃走した危険人物かもしれない男(ウォード)の車に乗せてもらうが・・、というスリラー。グッドウィン作曲のメイン・テーマは、ややセンシュアルな気だるいタッチで、ジョン・バリー的ですらある。彼のファンとしては興味深い曲。

5. 空軍大戦略 The Battle of Britain

第二次大戦中のイギリス空軍とドイツ空軍の一騎打ちを描いた1969年製作のイギリス映画。監督はガイ・ハミルトン。出演はローレンス・オリヴィエ、マイケル・ケイン、ロバート・ショー、トレヴァー・ハワード、クリストファー・プラマー、スザンナ・ヨーク、クルト・ユルゲンス、ラルフ・リチャードソン、マイケル・レッドグレーヴ、ハリー・アンドリュース、バリー・フォスター、エドワード・フォックス、イアン・マクシェーン、ナイジェル・パトリック、ケネス・モア、パトリック・ワイマーク、マイケル・ベイツ他。脚本はジェームズ・ケナウェイとウィルフレッド・グレートレックス。撮影はフレディ・ヤング(詳細はサントラCDのレビューをご参照)。これも戦争映画スコアのコンピレーションには必ず入っている有名な音楽。ここでは、以下の6曲から成る組曲の初録音が収録されている。尚、冒頭の「ドイツ空軍マーチ」は、イギリス空軍の楽団によって演奏される機会があった際に外交的な理由から「Aces High」という曲名に変更されたという。

 - Luftwaffe March (Aces High)
 - Prelude to Battle
 - Work and Play
 - Battle of Britain Theme
 - Early Encounter
 - Epilogue

6. (未公開)Whirlpool

1959年製作のイギリス映画。監督はルイス・アレン。出演はジュリエット・グレコ、O・W・フィッシャー、ミュリエル・パヴロウ、ウィリアム・シルヴェスター、ジェフリー・ベイルドン他。ローレンス・P・バックマンが自作の小説「The Lorelei」を基に脚本を執筆。撮影はジェフリー・アンスワース。警察と共犯者から追われるヒロイン(グレコ)を描いたサスペンス映画で、グッドウィンが最初に手がけた長編映画のスコア。優雅でジェントルなメイン・テーマを収録。この映画の原作・脚本のローレンス・P・バックマンが後にMGMの欧州スタジオの責任者となったことで、グッドウィンはMGMの作品を多く手がけることになる。

7. 野獣の抱擁 The Trap

1966年製作のイギリス映画(日本公開は1968年)。監督はシドニー・ヘイヤーズ。出演はオリヴァー・リード、リタ・トゥシンガム、バーバラ・チルコット、リンダ・ゴランソン他。脚本はデヴィッド・オズボーン、撮影はロバート・クラスカー。カナダの山奥に暮らす野獣のような男と、彼が毛皮を売りに町へ出たときに出会った聾唖の娘との恋を描くドラマ。後に英国BBC TVのロンドン・マラソン中継番組のテーマ音楽としても使われたダイナミックなメイン・テーマを収録。このスコアもサントラLP、CDが過去にリリースされていた。

8. 人間の絆 Of Human Bondage

1961年製作のイギリス映画(日本公開は1964年)。監督はケン・ヒューズ。出演はキム・ノヴァク、ローレンス・ハーヴェイ、シオバン・マッケンナ、ロバート・モーレイ、ナネット・ニューマン他。W・サマーセット・モームの原作を基にケン・ヒューズとブライアン・フォーブスが脚本を執筆(フォーブスは1週間だけこの映画の監督を担当したらしい)。撮影はオズワルド・モリス。浮気性のウエイトレス(ノヴァック)を愛してしまい、彼女に翻弄される青年(ハーヴェイ)を描くドラマ。優雅でリリカルなメイン・テーマを収録。このスコアもサントラLPが過去にリリースされていた。

9. モンテカルロ・ラリー Monte Carlo or Bust

1969年製作のイギリス映画(アメリカ公開題名は「Those Daring Young Men in Their Jaunty Jalopies」)。監督はケン・アナキン。出演はトニー・カーティス、テリー=トーマス、ゲルト・フレーベ、ダドリー・ムーア、スーザン・ハンプシャー、ピーター・クック、ミレーユ・ダルク、マリー・デュボワ、ニコレッタ・マキャヴェリ、ブールヴィル、ウォルター・キアリ他。脚本はジャック・デイヴィスとケン・アナキン。撮影はガボール・ポガニー。貴族、将軍、脱獄囚、警官など、多彩なレーサーが参加するモンテカルロでのカー・レースを描くアクション・コメディ。グッドウィン自身も何度か録音している、陽気でカラフルな組曲を収録。このスコアもサントラLPが過去にリリースされていた。

10. 潜水艦X-1号 Submarine X-1

1967年製作のイギリス映画。監督はウィリアム・A・グレアム。出演はジェームズ・カーン、デヴィッド・サムナー、ルパート・デイヴィス、ウィリアム・ダイサート、ノーマン・ボウラー他。ジョン・C・チャンピオンとエドマンド・H・ノースの原案を基にドナルド・S・サンフォードとガイ・エルムズが脚本を執筆。撮影はポール・ビーソン。海戦で自らの潜水艦と50人のクルーを失った艦長(カーン)が、新型潜水艦の艦長となってドイツ軍に反撃する。ダイナミックなイントロからグッドウィンらしい勇壮な主題へと展開するメイン・テーマ。

11. (未公開)Murder She Said

1961年製作のイギリス映画。監督はジョージ・ポロック。出演はマーガレット・ラザフォード、アーサー・ケネディ、ミュリエル・パヴロウ、ジェームズ・ロバートソン・ジャスティス、ソーリー・ウォルターズ、ジョーン・ヒックソン他。脚本はデヴィッド・パーソールとジャック・セッドン。撮影はジェフリー・フェイスフル。アガサ・クリスティ原作の名探偵ミス・ジェーン・マープル(ラザフォード)の活躍を描くミステリ・ドラマ。同じジョージ・ポロック監督/マーガレット・ラザフォード主演で「Murder at the Gallop」(1963)「Murder Most Foul」(1964)「Murder Ahoy」(1964)とシリーズ化されている(全て日本未公開)。ここではシリーズの主題曲である「Miss Marple Theme」を収録。極めてキャッチーな主題で、グッドウィンの自作自演アルバムにもよく登場する(ここでの演奏は自作自演版と少しアレンジが異なる)。

12. クロスボー作戦 Operation Crossbow

1965年製作のアメリカ映画。監督はマイケル・アンダーソン。出演はジョージ・ペパード、ソフィア・ローレン、トレヴァー・ハワード、ジョン・ミルズ、リチャード・ジョンソン、トム・コートネイ、ジェレミー・ケンプ、アンソニー・クエイル、リリー・パルマー、ポール・ヘンリード、リチャード・トッド、シルヴィア・シムズ、モーリス・デンハム、パトリック・ワイマーク、ファーディ・メイン、ヘルムート・ダンティーン、バーバラ・レティング、ジョン・フレイザー、ロバート・ブラウン他。ドゥイリオ・コレッティとヴィットリアーノ・ペトリッリの原案を基にリチャード・イムリー(=エメリック・プレスバーガー)、レイ・リグビーとデリー・クインが脚本を執筆。撮影はアーウィン・ヒリアー。これも第二次大戦ものの戦争アクション(詳細はサントラCDのレビューをご参照)。勇壮なメイン・テーマのパワフルな演奏が素晴らしい。

13. (未公開)Clash of Loyalties

1983年製作のイラク=イギリス合作映画(原題名は「Al-Mas' Ala Al-Kubra」)。監督はモハメッド・シュクリ・ジャミール。出演はオリヴァー・リード、ジェームズ・ボーラム、ヘレン・ライアン、マーク・シンデン、ユセフ・アル・アニ、ガーリ・アル・タクリティ、サミ・アブダル・ハミード他。脚本はラマダン・ガテア・モザン、ラテイフ・ジョレファニ、モハメッド・シュクリ・ジャミールとロジャー・スミス。撮影はジャック・ヒルドヤードとマジッド・カメル。1920年代の、イギリス占領下からのイラクの独立を描く作品。サスペンスフルでダイナミックな「The Battle Theme」から、アラビア調のエキゾチックな「Dharis' Theme」へと展開し、ラストはパワフルな「The Riot Theme」で締めくくる組曲を収録。この曲はこのアルバム中の白眉だろう。

14. 美女と野獣 Beauty and the Beast

1975年製作のアメリカ映画(日本公開は1978年)。監督はフィルダー・クック。出演はジョージ・C・スコット、トリッシュ・ヴァン・ディーヴァー、ヴァージニア・マッケンナ、バーナード・リー、ミッシェル・ハーバー、ウィリアム・レルトン、パトリシア・クイン他。ルプランス・ド・ボーモンの原作を基にシャーマン・イエレンが脚本を執筆。撮影はジャック・ヒルドヤード。トラジックで美しい「Belle's Love Theme」を収録。グッドウィン自身お気に入りのスコアらしい。

15. ナバロンの嵐 Force Ten from Navarone

1978年製作のイギリス映画。監督はガイ・ハミルトン。出演はロバート・ショー、ハリソン・フォード、エドワード・フォックス、フランコ・ネロ、リチャード・キール、バーバラ・バック、カール・ウェザース、アラン・バデル、マイケル・バーン、フィリップ・レイサム、アンガス・マッキネス他。アリステア・マクリーンの原作を基にロビン・チャップマンが脚本を執筆。撮影はクリストファー・チャリス。「ナバロンの要塞」でグレゴリー・ペックとデヴィッド・ニーヴンが演じたマロリー少佐とミラー軍曹を、ショーとフォックスが演じる後日譚。グッドウィンの作品中でも人気のある豪快なマーチで、彼自身の指揮による録音もあるが、サントラ盤はリリースされていない。ここでの演奏も非常にパワフル。

16. 荒鷲の要塞 Where Eagles Dare

1968年製作のアメリカ=イギリス合作映画。監督はブライアン・G・ハットン。出演はリチャード・バートン、クリント・イーストウッド、メアリー・ユーア、パトリック・ワイマーク、マイケル・ホーダーン、ドナルド・ヒューストン、ピーター・バークワース、ウィリアム・スクワイア、ロバート・ビーティ、ブルック・ウィリアムス、ニール・マッカーシー、ヴィンセント・ボール、アントン・ディフリング、ファーディ・メイン、デレン・ネスビット、ヴィクター・ボーモント、イングリッド・ピット他。撮影はアーサー・イベットソン。アリステア・マクリーン書き下ろしの傑作脚本による戦争アクション(詳細はサントラCDのレビューをご参照)。これも人気のあるストイックなメイン・テーマ。

17. 素晴らしきヒコーキ野郎 Those Magnificent Men in Their Flying Machines

1965年製作のアメリカ映画(正式題名は「Those Magnificent Men in Their Flying Machines, or How I Flew from London to Paris in 25 hours 11 minutes 」) 。監督はケン・アナキン。出演はステュアート・ホイットマン、サラ・マイルズ、ジェームズ・フォックス、アルベルト・ソルディ、ロバート・モーレイ、ゲルト・フレーベ、ジャン=ピエール・カッセル、イリナ・デミック、エリック・サイクス、レッド・スケルトン、テリー=トーマス、石原裕次郎、フローラ・ロブソン、ゴードン・ジャクソン、サム・ワナメイカー、モーリス・デンハム他。脚本はジャック・デイヴィスとケン・アナキン。撮影はクリストファー・チャリス。1910年、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、日本の各国から結集した誇り高きヒコーキ野郎たちによるロンドン=パリ間飛行レースを描くアクション・コメディ。これも「モンテカルロ・ラリー」と同様グッドウィン自身が好んで録音するカラフルな組曲で、実に楽しい。このスコアもサントラLPが過去にリリースされていた。

 

ロン・グッドウィン自らの指揮による自作自演アルバムとしては、以下のようなCDがリリースされている。

「MY KIND OF MUSIC」
  Conducted by RON GOODWIN
  Performed by Bournemouth Symphony Orchestra
  (英Chandos / CHAN 8797) 1989
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「BRITISH LIGHT MUSIC: RON GOODWIN」
  Composed and Conducted by RON GOODWIN
  Performed by New Zealand Symphony Orchestra
  (独Marco Polo / 8.223518) 1996
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(2005年1月)

Ron Goodwin

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