ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション  MISSION: IMPOSSIBLE - ROGUE NATION

作曲・指揮:ジョー・クレイマー
Composed and Conducted by JOE KRAEMER

(米La-La-Land Records / LLLCD 1361)

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2015年製作のアメリカ=香港=中国合作映画。監督・脚本は「ユージュアル・サスペクツ」(1995)「ワルキューレ」(2008)「ツーリスト」(2010)「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(2014)等の脚本や「誘拐犯」(2000)「アウトロー」(2012)等の監督・脚本を手がけているクリストファー・マッカリー(1968〜)。出演はトム・クルーズ、ジェレミー・レナー、サイモン・ペッグ、レベッカ・ファーガソン、ヴィング・レイムス、ショーン・ハリス、アレック・ボールドウィン、サイモン・マクバーニー、チャン・チンチュー、トム・ホランダー、イェンス・フルテン、マテオ・ルフィーノ、フェルナンド・アバディー、アレック・ウトゴフ、ハーマイオニー・コーフィールド他。撮影はロバート・エルスウィット。ブルース・ゲラー製作のテレビ・シリーズ「(TV)スパイ大作戦」(1966〜1973)をトム・クルーズ主演で劇場映画化した「ミッション:インポッシブル」シリーズの第5作。イーサン・ハント(クルーズ)の所属するIMF(Impossible Mission Force)が解体の危機に直面する中、ハントは各国の元エリート諜報部員により結成された謎の組織“シンジケート”の実体解明を単身で進めていた。その過程でシンジケートに拉致されてしまったハントを救ったのは、敵側のメンバーの1人と思われた謎の美女イルサ(ファーガソン)だった。ベンジー(ペッグ)らIMFのチームを再集結したハントは、シンジケートを壊滅すべく不可能ミッションに挑む……。ウィーンのオペラ会場でシンジケートが首相を暗殺しようとするシーンは、ヒッチコック監督の「知りすぎていた男」(1956)のクライマックスの焼き直し。「レッド・オクトーバーを追え!」(1990)でCIA局員ジャック・ライアン役だったアレック・ボールドウィンが、IMFを解体しようとするCIA長官を演じている。最近のハリウッド・メジャースタジオ作品の資金調達の傾向を反映し、香港のAlibaba Pictures Group、中国のChina Movie Channelが共同出資している。

シリーズ第1作「ミッション:インポッシブル」(1996)のスコアはダニー・エルフマン、続く「M:I-2」(2000)ハンス・ジマー「M:i:III」(2006)「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」(2011)マイケル・ジアッキーノだったが、この第5作の音楽は「アウトロー」でクリストファー・マッカリー監督と組んでいるジョー・クレイマー「The A400」は、イーサン・ハントが離陸するエアバスA400Mの機体にしがみ付く冒頭のスタント・シーンの音楽で、スリリングなタッチのイントロからラロ・シフリン作曲の「(TV)スパイ大作戦」の主題のバリエーションを織り込んだサスペンス音楽、シフリンの主題によるメインタイトルへと展開(このタイトルバックでは、昔のテレビシリーズと同様、劇中のハイライト・シーンが短い編集でコラージュされる)。「Solomon Lane」は、シンジケートの首領ソロモン・レイン(ハリス)のストイックなタッチの主題。「Good Evening, Mr. Hunt」「It's Impossible」「Grave Consequences」「The Blenheim Sequence」は、抑制されたタッチのサスペンス音楽。「Escape to Danger」「The Plan」「Audience with the Prime Minister」は、シフリンの主題を織り込んだサスペンスアクション音楽。「Havana to Vienna」は、トロピカルなタッチのフレーズから重厚なサスペンス音楽へ展開する曲だが、ここでは過去のテレビシリーズで頻繁に流れたシフリン作曲の「The Plot」の主題が引用されており、個人的にとても懐かしい。この主題は「The Syndicate」「The Torus」でも引用される。「A Flight at the Opera」「Morocco Pursuit」「This is the End, Mr. Hunt」「A Foggy Night in London」は、ダイナミックなサスペンスアクション音楽。「A Matter of Going」は、(劇中のオペラのシーンでも流れる)ジャコモ・プッチーニ作曲の歌劇『トゥーランドット』の有名なアリア『誰も寝てはならぬ(Nessun dorma)』の引用含む抑制されたサスペンス音楽。「Meet the IMF」は、シフリンの主題を織り込んだドラマティックな曲。「Finale and Curtain Call」は、『誰も寝てはならぬ』の引用からシフリンの主題を織り込んだフィナーレへ展開。オーケストラによるオーソドックスなタッチのサスペンスアクション・スコアだが、シフリンの主題の織り込み方が上手く、あたかもスコア全体をシフリンが作曲したかのような印象を受ける。
(2015年9月)

Joe Kraemer

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