遠すぎた橋 A BRIDGE TOO FAR

作曲・指揮:ジョン・アディスン
Composed and Conducted by JOHN ADDISON

(スペインQuartet Records / QR435)

 ★TOWER.JPで購入

   ★AMAZON.CO.JPで購入 


1977年製作のアメリカ=イギリス合作映画。1944年の連合軍によるマーケット・ガーデン作戦の顛末を描いたオールスター・キャストの戦争映画。監督は「大脱走」(1963)「雨の午後の降霊祭」(1964)「飛べ!フェニックス」(1965)「ジュラシック・パーク」(1993)等に出演したイギリスの俳優で、「素晴らしき戦争」(1969)「マジック」(1978)「ガンジー」(1982)「遠い夜明け」(1987)「チャーリー」(1992)等の監督作があるリチャード・アッテンボロー(1923〜2014)。出演はイギリスからダーク・ボガード、ショーン・コネリー、マイケル・ケイン、アンソニー・ホプキンス、エドワード・フォックス、ローレンス・オリヴィエ(オランダ人のスパンダー医師役)、ジェレミー・ケンプ、マイケル・バーン、デンホルム・エリオット、ベン・クロス、クリストファー・グッド、ドナルド・ダグラス他、アメリカからジーン・ハックマン(ポーランド軍のソサボフスキー准将役)、エリオット・グールド、ジェームズ・カーン、ライアン・オニール、ロバート・レッドフォード、アーサー・ヒル、ポール・マックスウェル、ニコラス・キャンベル他、ドイツからマクシミリアン・シェル、ハーディ・クリューガー、ヴォルフガング・プライス、ヴァルター・コーフット他、その他リヴ・ウルマン(ノルウェー人)、サイエム・ヴルーム、マーリーズ・フォン・アルクメイヤー、エリック・ファン・トバウト他。「史上最大の作戦」(1962)等のコーネリアス・ライアンの原作を基に、「明日に向って撃て!」(1969)「ホット・ロック」(1971)「大統領の陰謀」(1976)「マラソン マン」(1976)「ミザリー」(1990)「目撃」(1997)等のウィリアム・ゴールドマン(1931〜2018)が脚本を執筆。撮影はジェフリー・アンスワース。製作はジョセフ・E・レヴィンとリチャード・P・レヴィン。

ノルマンディー上陸作戦から3ヶ月後の1944年9月、連合軍はドイツ軍がオランダへ撤退したの機に、そこへ空と陸の両方から攻めるマーケット・ガーデン作戦を展開し始める。オランダからドイツにかけての5つの橋を占拠し、ベルリンへ侵攻するのが狙いだったが……。アッテンボローが監督しているせいか、ボガード、コネリー、ホプキンス、ケインといったイギリス人俳優の見せ場が多い。ただ、一番印象に残るエピソードは、頭を撃たれた若い上官を救うために軍医(ヒル)に銃を突きつけるドーハン軍曹(カーン)のシーン(実話)。レッドフォードは最後の方でヒロイックなクック少佐役で登場(2週間の撮影で約200万ドルのギャラを得た)。ドイツ軍人役のシェル、クリューガー、プライスはいずれも立派だが、高官を演じているため戦闘シーンでの見せ場はほぼない。ハックマンはほとんど出番なしで、もったいない使い方。製作費は約2700万ドル、全世界興行収入は約5075万ドル。

音楽は「トム・ジョーンズの華麗な冒険」(1963)「引き裂かれたカーテン」(1966)「探偵<スルース>」(1972)「カリブの嵐」(1976)「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」(1976)「(TV)ジェシカおばさんの事件簿」(1984〜1996)等のイギリスの作曲家ジョン・アディスン(1920〜1998)。このスコアは公開当時の1977年に米国と日本のUnited Artistsレーベルから全16曲/約37分収録のサントラLP(United Artists UA-LA762-H/United Artists FML 79)が出ており、1999年に英RykoレーベルからLPと同内容のCD(Ryko RCD 10746)が、2010年に米Kritzerlandレーベルよりも同内容のCD(Kritzerland KR 20017-1)がリリースされているが、このQuartetレーベルのCDは2枚組(全51曲/約90分)となっており、1枚目にコンプリートスコアと代替テイク等、2枚目にLPと同内容(リマスター済)を収録。1000枚限定プレス。

CD1枚目の冒頭「Overture (Main Title)」は、メインのマーチからパラシュート部隊のマーチ、“オランダの悲劇”の主題へと展開する序曲。この明るくヒロイックでキャッチーなメインの主題は、数ある戦争映画のマーチの中でもベストの1つと言える傑作で、アディソンの代表作。劇中で「Before the Holocaust (I)」「Before the Holocaust (III)」「Arnhem (I)」「The Waal Bridge」等、何度も登場する。「Underground Resistance (I)」は、トラジックなトーンのダイナミックな曲。「Model's HQ / RAF Briefing」「Underground Resistance (II)」「Human Roadblock」「Arnhem Destroyed」等で繰り返される“オランダの悲劇”の主題は、戦場で犠牲となったオランダ国民の悲哀を描写したトラジックで印象的な曲。「March of the Paratroopers (I)」は、ヒロイックなパラシュート部隊のマーチで、メインのマーチに準ずる名曲。「Before the Holocaust (II)」「Air Lift」「Intermission」「Retreat」等で繰り返される。「March of the Paratroopers (II)」は、米軍落下傘連隊長スタウト大佐(グールド)が登場するシーンでの、パラシュート部隊のマーチの第二主題。「Arnhem (II)」「Futile Mission (I)」は、パラシュート部隊の主題を織り込んだサスペンス音楽。「Hospital Tent」は、静かにトラジックなタッチの曲。「Bailey Bridge」は、スタウト大佐率いる部隊が仮設用のベイリー橋を組み立てるシーンのマーチで、後半メインのマーチへ展開。「Futile Mission (II)」は、躍動的なサスペンス音楽。「The Waal River」も、サスペンス調の曲。「Nijmegen Bridge」は、メインの主題を織り込んだ躍動的なサスペンス音楽からメインのマーチへ。「A Bridge Too Far (End Title)」は、メインのマーチによるエンドタイトル。これ以降代替テイク等11曲のボーナストラックが収録されているが、最後の2曲「The Dutch Rhapsody (Single Version)」「A Bridge Too Far March (Single Version)」は、公開当時に日本でリリースされたシングル盤(United Artists FMS 35)に入っていた曲(LPには未収録)で、前者はピアノ・ソロをフィーチャーした“オランダの悲劇”の主題、後者は上記エンドタイトルより長いメインのマーチの演奏。

ジョン・アディスンは、第二次大戦中にイギリス機甲師団の将校として1944年のノルマンディー上陸作戦やカーンでの戦闘で戦って負傷もしているが、この“マーケット・ガーデン作戦”には直接参加せず、側面支援を行った。アディスンはこのスコアで1978年度英国アカデミー賞の作曲賞(アンソニー・アスキス映画音楽賞)を受賞している。この映画は公開時に劇場で見て最も初期に日本盤のサントラLPを買った作品の1つで、個人的に思い出深い。Quartetレーベルは本CDに先立ち、いずれもアディスンの傑作スコアである「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」「カリブの嵐」のCDをリリースしている。

Quartet盤の収録曲は以下の通り。

DISC 1. The Film Score

1. Overture (Main Title) (3:41)
2. Underground Resistance (I) (1:20)
3. Model's HQ / RAF Briefing (1:02)
4. Underground Resistance (II) (0:51)
5. Before the Holocaust (I) (0:33)
6. Before the Holocaust (II) (1:23)
7. Air Lift (2:29)
8. Before the Holocaust (III) (0:56)
9. March of the Paratroopers (I) (1:27)
10. March of the Paratroopers (II) (0:47)
11. Arnhem (I) (0:44)
12. Arnhem (II) (1:09)
13. Futile Mission (I) (1:32)
14. Hospital Tent (0:59)
15. Intermission (1:18)
16. Bailey Bridge (3:08)
17. The Waal Bridge (0:56)
18. Futile Mission (II) (1:09)
19. Human Roadblock (1:20)
20. The Waal River (1:14)
21. Nijmegen Bridge (1:39)
22. Arnhem Destroyed (1:11)
23. Retreat (1:14)
24. A Bridge Too Far (End Title) (2:01)

Bonus tracks

25. RAF Briefing (Alternate) (0:51)
26. 7M1 / 7M2 / 7M2A (1:54)
27. March of the Paratroopers (Short Version) (1:04)
28. Arnhem (I) (Alternate) (0:35)
29. Futile Mission (I) (Alternate) (0:39)
30. Hospital Tent (Alternate) (0:23)
31. Futile Mission (II) (Alternate Ending) (1:20)
32. Retreat (Original Version) (1:36)
33. Futile Mission (Original Album Take) (3:03)
34. The Dutch Rhapsody (Single Version) (2:34)
35. A Bridge Too Far March (Single Version) (2:36)

DISC 2. Original Soundtrack Album

1. Overture (3:41)
2. A Dutch Rhapsody (2:15)
3. Before the Holocaust (2:29)
4. Underground Resistance (2:58)
5. Air Lift (2:42)
6. Hospital Tent (1:58)
7. Arnhem (1:58)
8. Nijmegen Bridge (1:42)
9. March of the Paratroopers (2:32)
10. Bailey Bridge (2:54)
11. Human Roadblock (1:39)
12. Futile Mission (3:04)
13. The Waal River (1:59)
14. Arnhem Destroyed (2:31)
15. Retreat (2:07)
16. A Bridge Too Far March (1:53)

Disc 1 50:55
Disc 2 38:28
Total 2 CD Time 1:29:33

(2021年1月)

John Addison

Soundtrack Reviewに戻る


Copyright (C) 2021  Hitoshi Sakagami.  All Rights Reserved.