インディ・ジョーンズと運命のダイヤル INDIANA JONES AND THE DIAL OF DESTINY
作曲・指揮:ジョン・ウィリアムス
Composed and Conducted by JOHN WILLIAMS
(米Disney)
2023年製作のアメリカ映画。監督は「コップランド」(1997)「“アイデンティティー”」(2003)「3時10分、決断のとき」(2007)「ナイト&デイ」(2010)「ウルヴァリン:SAMURAI」(2013)「LOGAN/ローガン」(2017)「フォードvsフェラーリ」(2019)等のジェームズ・マンゴールド(1963〜)。出演はハリソン・フォード、フィービー・ウォーラー=ブリッジ、アントニオ・バンデラス、カレン・アレン、ジョン・リス=デイヴィス、ショーネット・レネー・ウィルソン、トーマス・クレッチマン、トビー・ジョーンズ、ボイド・ホルブルック、オリヴィエ・リヒタース、イーサン・イシドール、マッツ・ミケルセン、マーティン・マクドゥーガル、アラー・サフィ、フランシス・チャップマン他。脚本はジェズ・バターワース、ジョン=ヘンリー・バターワース、デヴィッド・コープとジェームズ・マンゴールド。撮影はフェドン・パパマイケル。製作総指揮は、これまでのシリーズ4作品で監督を務めたスティーヴン・スピルバーグ(1946〜)と、ジョージ・ルーカス(1944〜)。
考古学者インディアナ・ジョーンズ(フォード)の冒険を描く「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」(1981)「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」(1984)「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」(1989)「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」(2008)に続くシリーズ第5作で、前作から15年ぶりの映画化。1944年、インディは友人の考古学者バシル・ショー(ジョーンズ)と、ナチスが略奪した秘宝「ロンギヌスの槍」を奪還しようとしていたが、その最中にナチスのロケット科学者ユルゲン・フォラー(ミケルセン)が偶然見つけた、人類の歴史を変える力を持つといわれる究極の秘宝「アンティキティラのダイヤル」を手に入れる。時が経ち、1969年。アメリカのアポロ計画による月面着陸が成功する中、インディは旧友ショーの娘ヘレナ(ウォーラー=ブリッジ)から、かつて手にした「アンティキティラのダイヤル」の調査を依頼される。一方、ユルゲン・シュミットと名乗ってアポロ計画のロケット開発に携わていたフォラーも、かつてインディに奪われたダイヤルを取り戻すべく、ナチスの残党と共に動きはじめていた……。製作費は約2億9470万ドル。全世界興行収入は約3億7072万ドル(2023年8月時点)。シリーズの過去作品でマリオンを演じたカレン・アレン、サラーを演じたジョン・リス=デイヴィスが同じ役で再登場する。日本での劇場公開時の日本語吹替キャストは、ハリソン・フォード(村井國夫)、フィービー・ウォーラー=ブリッジ(坂本真綾)、マッツ・ミケルセン(井上和彦)、アントニオ・バンデラス(大塚明夫)、カレン・アレン(戸田恵子)、ジョン・リス=デイヴィス(宝亀克寿)、ボイド・ホルブルック(中村悠一)、オリヴィエ・リヒタース(安元洋貴)他。村井國夫氏はシリーズ3作目までのテレビ放映版ではフォードを吹き替えていたが、4作目「クリスタル・スカルの王国」は担当していなかった。今回の5作目の劇場公開に合わせ、4作目のフォードを村井氏が新たに吹き替えた日本語版がテレビ放映された。
音楽はシリーズ全作を手がけているジョン・ウィリアムス(1932〜)。「Prologue
to Indiana Jones and the Dial of Destiny」は、ストリングスによるヘレナの主題からダークでダイナミックなサスペンス音楽へと展開するプロローグ。「Helena's
Theme」は、ピアノ、ストリングス、フルートによるロマンティックかつ大らかで情感豊かななヘレナの主題。ロマンティシズムに溢れたクラシックフィルムスコア調の名曲で、これを今書けるのはウィリアムスしかいないだろうが、劇中のヘレナ(ウォーラー=ブリッジ)は狡猾でずる賢いお転婆娘として描かれており、この薄っぺらいキャラにこの曲はやや立派すぎる気がする。「Germany,
1944」は、ダークなイントロからインディの主題を含むダイナミックなサスペンスアクション音楽へ。「To Morocco」は、インディの主題のバリエーションから後半ドラマティックに盛り上がる。「Voller
Returns」は、不吉なタッチのサスペンス音楽。「Auction at Hotel L'Atlantique」は、ダークなタッチから躍動的なサスペンス音楽へ。「Tuk
Tuk in Tangiers」は、中盤のタンジールでの追跡シーンでの、ヘレナの主題を含むダイナミックなアクション音楽。「To
Athens」は、ミステリアスなイントロからヘレナの主題、インディの主題へ。「Perils of the Deep」は、不吉なサスペンス音楽から「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」でのマリオン(アレン)の主題へ。「Water
Ballet」は、ダークで不気味なサスペンス音楽から中盤アブストラクトなタッチへ展開。「Polybius Cipher」は、不吉なサスペンス音楽から後半インディの主題を含むダイナミックなアクション音楽へ。「The
Grafikos」は、ダークで重厚なタッチからダイナミックなサスペンスアクション音楽へ。「Archimedes' Tomb」は、不吉なサスペンス音楽から後半ダイナミックに盛り上がる。「The
Airport」は、ヘレナの主題を含むミリタリスティックでダイナミックなサスペンスアクション音楽。「Battle of
Syracuse」は、ダイナミックでパーカッシヴなアクション音楽。「Centuries Join Hands」は、インディの主題を含む静かにドラマティックな曲。「New
York, 1969」は、マリオンの主題、ヘレナの主題に続き、エンドクレジットで流れるレイダース・マーチへ。ラストの「Helena's
Theme (For Violin and Orchestra)」は、フルートとストリングスにアンネ=ゾフィ・ムターによる情感のこもった美しいヴァイオリン・ソロを加えたヘレナの主題(劇中では流れないバージョン)。ジョン・ウィリアムスが91歳で作曲したダイナミックでエナジェティックなアドヴェンチャー・スコアで、そのこと自体に感銘を受ける。
ドイツ出身のヴァイオリニスト、アンネ=ゾフィ・ムター(1963〜)は、ジョン・ウィリアムス自身が自作をムターのために編曲し指揮した「アクロス・ザ・スターズ」を2019年4月にL.A.で録音している他、2020年1月にウィリアムスがウィーン・フィルを指揮して自作の映画音楽を演奏したコンサートでも共演、更にムターがウィリアムスに作曲を委嘱したヴァイオリン協奏曲第2番を2021年7月にウィリアムス指揮ボストン交響楽団との共演により初演している。
(2023年8月)
John Williams
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